理想と現実を選択した台湾
総統選投票率71,8%は史上2番目の低さ
世界が注目した台湾の総統選挙(立法院選挙も)が終了した。
今後4年間の台湾の進路は「現状維持」の継続だった。
(当選後、国際記者会見に臨む頼総統と蕭副総統)
頼清徳氏は投票数の40%、558万票を獲得し、
国民党の侯友宜氏に91万票差をつけて勝利した。
この差をどう見るか。
2020年蔡英文氏の2期目の選挙では、蔡氏が800万票を獲得、
国民党の韓氏に300万票の大差を付けて圧勝した。
但し、この時は、
*香港デモが中国に潰された
*高雄市長をクビになった韓氏が候補だった
*民衆党は存在せず、民進党対国民党の対決だった という背景があった。
それに対して今回は、3党の対決となり500万票獲得が当選の目安となった。
選挙結果は世論調査通り、頼氏が侯氏を終始リード、柯氏が両氏の票を
何処まで奪うかという展開だった。
総統選挙の結果は、台湾の「理想」を選択した。
それは国民の7割近くが中国との関係について
「永遠の現状維持」を求めていて、宥和的姿勢や統一的志向を拒否し、
中国に対して毅然としたリーダーを選んだということだ。
ワシントンポスト紙は「台湾と中国の距離はこれまで通りとなった」と報じた。
中国の選挙介入は今回も失敗したが、
台湾統一を諦めない習近平は今後も台湾への恫喝を続けるだろう。
一方、立法院選挙で有権者は台湾の「現実」を選択した。
(8議席獲得で議会第3党に躍り出た民衆党)
立法院(定数113)は、国民党52,民進党51,民衆党8、無所属2で、
民進党は敗北した。
立法院選挙の争点は
*不動産価格の高騰
*若者の失業率11%
*物価高騰
*民進党議員の汚職 など日常生活に直結していて
国民党と民衆党は「8年に及ぶ民進党政権の腐敗」を訴え、
有権者の支持を獲得した。
ここでは有権者が現実問題の解決を野党に託したと理解すべきだろう。
但しいずれの党も過半数を獲得できなかったため、
今後は民衆党が法案や予算成立などで、カギを握ることになった。
実はこれ、柯文哲党首が民衆党を創設した時の青写真で、
総統選挙では敗北したが、立法院選挙では”勝利”したと言えるだろう。
頼氏の政権は困難な船出となったが、2年後の統一地方選挙で
巻き返すチャンスは十分にある。
(支持者に謝罪する侯候補(右)と朱党首(左))
今回の選挙で敗れた国民党の打撃は大きい。
立法院選挙で第1党となったものの、
3期続けて総統選挙で敗北したのは初めて。
しかも党員支持率ナンバーワンの侯氏で負けた。
本来なら党首の朱立倫氏が出馬するのが筋だが、
朱氏は2016年の総統選挙で蔡英文総統に大敗したことから、
党員の人気投票を行い、侯氏が立候補することになった。
国民党は「老化して人材がいない」と言われていて、
このままだと野党第1党から転落しかねない危機に立たされた。
中央選管は今回の総統選の投票率は71,8%で、
過去2番目の低さと発表した。
日本人はあれこれ不満を言う前に、この数字を噛みしめることが必要ではないか。