チェコ大統領の歴史認識を問う
「西欧のロシア人も第二次大戦中の日系人の様に
監視せよ」と発言
民族に対する差別や偏見が、戦争の口実に利用されてきたことを
私たちは、歴史を通して学んで来た筈ではなかったか。
数百年にわたり、ウクライナを支配下に置いたロシアでは、
ウクライナ人を従属民族、被征服民族と見るロシア人が多く、
彼らはこの偏見をロシアのウクライナ侵略を正当化する根拠にしている。
プーチンも「ウクライナ人とは兄弟だ」と言いながら、
「ウクライナはロシアの領土だ」とファシストの本質を見せている。
そのロシアは第二次大戦後、東欧諸国を支配下に置いて、
自由を剥奪、民主化要求に対しては武力弾圧を繰り返していた。
チェコ共和国は1968年8月、当時の共産党指導部が自由化を承認したが、
ワルシャワ条約機構が軍事介入、多くの市民を虐殺して
ドプチェク書記長らチェコ指導部を拘束してモスクワに連行、
自由化運動はソ連により弾圧された(プラハの春)。
そうした苦い経験を持つチェコの大統領が先日、とんでもない発言をして
問題となっている。
パヴェル大統領は15日、自由ラジオヨーロッパのインタビューで
ロシアのウクライナ侵略戦争を念頭に、
「第二次世界大戦中に米国が国内の日本人を綿密に監視したように、
西側諸国に住むすべてのロシア人はより厳しい監視を受けるべきである」と述べた。
その理由を問われた大統領は、
「戦争は進行中であり、ロシア市民に関連する安全対策は
通常よりも厳しくすべきである。西側諸国に住むすべてのロシア人は
以前よりも綿密に監視されるべきである、なぜなら 彼らは侵略戦争を繰り広げた国の
市民だからだ」と答えた。
これに対して自由ラジオヨーロッパは、
*米国は有刺鉄線のフェンスを設置し、日系アメリカ人を強制隔離した。
*12万人の日系アメリカ人は米軍によって監視され、自由を奪われた。
*彼らは間違いなくアメリカ市民だった。
* 米国政府は数年後に謝罪し、16億ドル以上を補償した。
と指摘した上で、 大統領の言う「厳格な監視メカニズム」とは何を意味するのかを
尋ねた。
これに対してパヴェル大統領は、
「戦争の代償に過ぎない、第二次大戦中、米国に住む日本人も厳重に
監視されていた」と述べた。
パヴェル氏は今年3月大統領に就任した元軍人の政治家である。
彼は、ロシアのウクライナ侵略後から一貫してウクライナを支持し、
台湾の自由と民主主義を称賛してきた。
それでもこうした人権侵害の歴史を誤認している。
今回の発言で、
大統領の自由と民主主義に対する意識が問われている。