台湾 野良犬白書
全島に約16万頭、2年前より6%増
台湾で野良犬は「流浪犬」と書く。野良犬より恰好良く見える。
台湾の田舎に行かれた方は、このような野良犬の群れに遭遇したことが
あるのではないか。
台北や高雄などの都会で見る犬は、ほとんどが飼い犬だが、
田舎、特に農村地帯に行くと、このような光景によく出会う。
そこで、台湾の農業委員会は2年に一度、
全国の村633を抽出して、野良犬の実態調査を行っている。
それによると、2020年の野良犬の数は15万5869頭で、
2018年より9096頭増えたことが分かった。
野良犬が多い上位3地区は、屏東県、台南市(農村部)、嘉義県である。
九州ほどの国土に16万頭の野良犬がいると聞くと、
多くの日本人はぞっとするかも知れない。
しかし、これまでの台湾旅で、野良犬の群れに遭遇して怖い思いをしたことは
一度もない。
そのわけは、
*台湾の人は野良犬によく餌を与えるので、飢えていない
*そのため、群れていても餌を求めて見ず知らずの人に近づかない
*常夏のせいか、日陰で休んでいる野良犬が多い と私は見ている。
農業委員会も、家に付いて餌をもらっている犬を
完全な野良犬と判断していいのか、区別がつきにくい、としている。
友人の林さんが飼っている「大輔」も元は野良犬で、林さんが保護した。
人懐っこく、初めて会った時、最初に2,3回吠えたが、
林さんの友人と理解すると、忽ち尻尾を振って、甘えてきた。
台湾では2017年、動物保護法が改正され、
野良犬や野良猫の殺処分が禁止された。
きっかけはある映画だった。
2013年に公開された『十二夜』は、動物収容所に送られた犬の12日間の様子を
追ったドキュメンタリーである。
12日間に引き取り手のない犬は13日目に安楽死させられていたのである。
この映画がきっかけとなり、2017年に動物保護法が改正された。
その結果、2016年に殺処分された犬猫は1万3000匹余りが、
2017年には800匹以下に激減した。
法改正後、動物収容所に保護された野良犬猫は、避妊手術を受け、
里親探しが行われているが、引き取り手のない犬猫がどうなったのかの
報告はない。
また、収容所によっては法改正後から野良犬の捕獲や引き取りを拒否するなど、
不透明な部分が出ている。
今回の数について、農業委員会は「あくまで推計」としている。
林さんも「どれが飼い犬で、どれが野良なのか区別がつかない」と言う。
放し飼いをしている人も多く、おおらかな国民性の下で、
野良たちは結構自由に生きているように見える。