台湾 高雄市長選与党圧勝
国民党、新党の惨敗が意味するものは
一度失った信用を回復するのは容易なことではない。
政治の世界も同じだ、民心の離反に応えるには
人心の一新と党の政策転換である。
台湾・高雄市で行われた市長選挙がその答えを出した。
当選して支持者に手を振る陳其邁氏(白シャツ)
昨日行われた高雄市長選挙は、民進党の陳其邁(チンキマイ)氏が
投票数の70%に当たる67万1804票を獲得、他の2候補に圧勝した。
今回の選挙は、今年6月に行われた住民投票で国民党の韓國瑜市長の
リコールが成立し、解職されたのに伴う補欠選挙だった。
勝利した陳氏は、前回の市長選で国民党の韓國瑜氏に敗れ、
民進党の牙城だった高雄市を明け渡したが、
韓国瑜氏の嘘と出鱈目に騙された有権者が、発言は地味だが行動力のある
陳氏の再挑戦を支持した。
陳氏は56歳、台湾大学医学部卒で予防医学の専門家として、
蚊によるデング熱の防疫対策に取り組み、後に民進党入り、
立法委員(国会議員)や行政院(内閣)報道官、高雄市代理市長、総統府副秘書長
民進党副秘書長、行政院副院長(副首相)などを歴任した。
陳氏は韓氏の前例を踏まえ、「もし自分に不足なところがあれば、同じ基準で厳しく批判してほしい」と市民に要求。市長就任後の優先事項として、産業の転換や雇用機会の増加、交通インフラ整備、大気汚染の解決などを挙げた。
一方、国民党は過去最低の結果となった。
高雄市議から立候補した李眉蓁(りびしん)氏は、24万8478票(得票率25.90%)で
惨敗、韓国瑜氏のリコールに加え、自身の博士号取得が嘘だったことが
明らかになるなどして、支持者の離反を招いた。
国民党惨敗の理由はそれだけではない。
選挙中に、党は香港の民主派弾圧に対して、明確な中国批判が出来ず、
若者の支持を失った。
党は、総統選挙後に人事を刷新したが、黨主席の江啟臣氏(黒シャツ)に
指導力が無く、老幹部の親中発言を制止できなかった。
今回の選挙には台北の柯文哲市長が議長を務める台湾民衆党も
候補者を出した。(左呉益政(ごえきせい)候補 右柯文哲市長)
結果は3万8960票(同4.06%)と惨敗した。
柯文哲氏は2024年の総統選挙に立候補すると見られていて、
今回の選挙は、民衆党に対する期待度を測る機会だったが、
予想を大きく下回る結果となった。
柯氏は、「革命は未だ成らず、同志の更なる努力が必要だ」と
コメントした。
台湾の政治には中国の圧力に加え、香港問題が影を落としている。
習近平の独裁が続く限り、親中派の国民党や
「台湾と中国は家族のような関係が望ましい」と言う柯氏率いる民衆党は
有権者の支持を得られないことが今回の選挙で明確になったように思う。