心理カウンセラーの風湖です。
「結婚して30年です。妻からモラハラだと言われました。でも、自分では自覚はないのです。最近は家の中で喧嘩ばかりになってしまい、会話もなくなってしまいました。」
ある50代の男性が、このように訴え、私のところに「どうすればいいのかわからない」と言って相談に来られました。
「確かに、感謝の気持ちをあまり口にしなかったのかもしれません。でも、気づけば家事も手伝っているし、やりたいことがあれば自由にやらせてあげているのに。」
もともと奥さんは明るくて優しい、頭の良い女性だったといいます。
着物の着付けの先生をしていて、この頃はコロナで仕事は減ってしまったそうですが、それまではあまり喧嘩はしなかったのだそうです。
「あなたは、いつも上から目線で私に圧力をかけているのに、それに気づかないの?」
突然そう言われて、困惑してしまった、というのです。
「たしかにあなたは奥さんを苦しめていますね。そして、奥さんもそう言いながら自分を苦しめていると思います。」
私がそう言うと、男性は驚いたような顔をして、しかし、目を閉じて考えはじめました。
実はこの男性は、去年までは奥さんが仕事で忙しくしていたので、経済的にも対等な立場を保っていられたのですが、コロナで奥さんの収入がほぼなくなってしまったので、自分だけの収入で「はたして大丈夫なのか」と、とても不安になっていたのです。
しかし、それを正直に言えない男性は、自分の自信の無さを隠したいために、無意識に奥さんに対して「優しく寛大な気が効く夫」を演じていたのですが、その言動が知らず知らずのうちに嫌味のようになってしまったのでしょう。
結果的に、それが奥さんには「バカにされている」と感じさせることになっていたことに気づかなかったようです。
「奥さんは、すべてわかっていて、我慢していたのかもしれませんね。」
私がそういうと、
「その通りです。僕は今、気付きました。」
と言って、なにもかも気づき、申し訳なさそうな表情になりました。
夫婦の問題の発端は、ほんの些細なことなのかもしれません。
しかし、そのままにしておくと、とことんまで傷付け合う結果になってしまうこともあるのです。
夫婦の関係のことだけではなく、人生において少しでも気になることがあるのなら、ためらわずに信頼できる人に話をしてください。
そうすることで、早めに対処することができますし、その体験を次に生かすことができるのだと私は思います。