心理カウンセラーの風湖です。




 先日、ある30代の男性がカウンセリングに来られました。

 彼は、エリート・ビジネスマンなのですが、深刻な劣等感からくる不眠に悩まされていました。




 その理由は、彼には昔から仲の良い同級生である超エリートの友人がいて、どうしてもその友人といつも自分と比べてしまい、「彼に比べると、自分は中途半端だ。」と落胆していたからなのです。




 しかも彼は、子供の頃から権威的な父親に高い期待をかけられていました。

 父親が怖くて、しかし父親に認められたいと思い、頑張って頑張ってなんとか落ちこぼれずに生きてきたのですが、そのプレッシャーもあり、胃の痛みや不眠に悩まされてきていたのです。




 それでも、いつまでたっても父親は、認めてはくれません。

 本人も、ただそれだけを望んでいる自分に対して「自分は小さいな。」と、感じていました。




 私は彼に、こうアドバイスしました。

 「自分の人生を"成功への過程"だと捉えるのではなく、"親からの自立"と、考えてみたらいかがでしょうか。」




 父親からいつも超エリートの友人と比較されてきて、いつか親に認めてもらおうと必死で頑張ってきたのです。

 しかし、やっとの思いで合格した大学も、何社も受けてようやく採用された会社も、父親にとっては中途半端だと言われてしまうのです。




 彼は、長い間悩んでいたその劣等感を、視点を少しずらすことにより、本来の自分の気持ちや感情に気づくことができたようです。




 「父親目線の考え方をやめて、『親からの自立』という視点から人生を振り返ると、『自分は十分良くやってきたじゃないか。』と思うようになり、嬉しくなりました。」




 そう言って彼は、だんだんと生き生きとした表情に変わり、見違えるように元気になっていきました。




 自分の人生の本質はまさに親からの自立心との戦いであって、友人との比較はその現象に過ぎなかったのだと気がついたのですね。




 自分の本当の心は、本人にはなかなか気が付かない場合も多いのです。

 彼は小さい頃から、親からのものすごいプレッシャーによるストレスにずっと悩まされてきたのです。




 視点を変えれば今まで見えていなかったものが見えてきます。

 他人と比べたり競ったり争ったりすることは、本来人の目的ではないのです。




 悩みや苦しみを抱えている人は、少し視点を変えて、自分の心の本質を見つめ直してみることも大切なことなのではないでしょうか。