心理カウンセラーの風湖です。
「もう、定年の歳になりました。今までずっと働いて来ました。なんだか虚しくて、寂しいですね。」
ある、50代後半の男性が呟いていました。
今は、人生100年の時代です。
60歳なんてまだまだ若いのですから、リタイヤすることを考えることは少し早いのではないかなぁとは思いますが、日本には「定年」の概念がありますから、ひとつの区切りだと考える人も多いのですね。
それでも、やはり頭をよぎるのは、「老い」への心の切り替え方かもしれません。
人生の後半は、身の回りの整理整頓をしていく時期なのだと聞いたことがあります。
私達の人生は、前半戦は求めて求めて、それを手に入れていく作業の連続なのです。
しかし後半戦は、求め続けるのではなく、いかに自分が生きていきやすいように捨てていくか、ということです。
「あれもしなくちゃ、これもしなくちゃ!」
と、急いで急いで生活していると、自分は一体なにをしたかったのかがわからなくなってしまいますよね。
人は、長く生きれば生きるほど、恥をかくことも多いし、失敗もするものです。
出来るだけシンプルに、たくさんの背中の荷物は少しずつ下ろしながら、その荷物は誰かに引き継いで、楽に生きていきましょう。
私達は、子育てが終わるタイミングあたりで、その時期を見極めて、あるところで切り替えなければなりません。
子供に対する期待とか、会社での立場とか、若さに対する執着なども下ろしていきましょう。
それを、「まだ欲しい、絶対に失わないぞ!」と、頑張るとますます苦しいし、ストレスになります。
人間が老いていくというのは、使わないものは手放し、自分が心から楽しいと思えるものの中で暮らすことを選ぶ作業をすることなのですね。
多分使わないであろう、それらを捨てていく作業の中で、とても大きなものというのは、「私」が抱えている価値観。こだわり。プライド。固定観念…。
そういうものを捨てて行ったときに、人間はとても楽になることができます。
新しいなにかを受け入れる準備が出来るということになるからです。
仏教の言葉に、「生まれ難き人間界に生まれしを喜ぶ」というのがあります。
それは、人間界に生まれ落ちただけで喜ばしいという意味なのです。
捨てる作業がひと段落落ち着いたあとは、大河の流れに任せて淡々と生きていけば、きっと幸せだと感じる心の余裕ができてきます。
そして、目の前にいる人を大切にして、目の前にあることをひとつひとつ大事にしていくのです。
どんどん過ぎていく日々の中で、今日、ただ今、この瞬間を、私がどう生きるかを考えて生きていきましょう。