心理カウンセラーの風湖です。
「金の斧、銀の斧」という童話をご存知でしょうか。
とても有名なお話ですよね。
「ある日、木こりの男が木を切っていると、自分の鉄の斧が泉に落ちてしまいました。
すると泉の女神が現れて、木こりが落としたのは金の斧か銀の斧かを尋ねました。
木こりが正直に『どちらでもない』と答えると、女神は全ての斧を木こりに渡しました。
それを見ていた欲張りな男が、自分も金の斧をもらおうとしましたが、女神に欲張りを見抜かれてしまい、なにももらえませんでした。」
という内容の童話です。
このお話は、「正直者でなくてはならない」という教訓のお話です。
このお話を読んだ子供の頃は、嘘をついてもいつかはバレてしまうから、いつでも正直でいなくてはならないな、と思ったものです。
しかし、大人になると、本当にいつも正直であることが大きなチャンスや運につながっていくのかどうかは、少し疑問が残ります。
なぜなら、なにか大きな選択を迫られた時、私達は「ポジティブな嘘」が必要な時もあるのではないかと思うからです。
たとえば仕事をする上で、上司から自分には分不相応だと思えるような大きなチャンスを仕事で依頼された時、あなたはどう返事をするでしょうか。
自分の気持ちに正直に、「いや、まだそのような仕事は私には出来ません。」と正直に答えたほうが安心するし、失敗したらどうしようなどと悩む必要も無いですから、断るでしょうか。
しかしそれとは逆に、自分には出来る自信はまだ無いのですが、それでも勇気を出して「やります。」と、自分の気持ちとはうらはらな返事をするでしょうか。
正直な気持ちで返事をした場合と、自信は無いのに嘘の返事をした場合、自分の未来はどのような違いになっていくのでしょう。
もしかしたら、自信は無くても「嘘」ともいえる返事をすることによって、それからの仕事への向き合い方が変わり、自分の仕事のレベルをどんどん上げていくことが出来るかもしれません。
それならば、はたしてこのような嘘は、正しくないことなのでしょうか。
「自分には出来ません。」と正直に答えたら、そこで話は終わってしまいます。
「やります。」と、「嘘」をつくから手に入るチャンスもあるのです。
しかしこれは、どちらが正しくて、どちらが間違っているとは言えませんよね。
どちらを選んでも自由だし、どちらでも正解なのかもしれません。
そう思うと、「いつでも正直でいる」ということは、大人になるととても難しいことだと言えるのではないでしょうか。
どちらを選んでも「正解」なのだとしたら、自分の本当の気持ちに嘘をついて人生の選択をし、「出来ます。」と答えた人は、それに向き合う決意をし、成長をしていくということを決断したということになりますよね。
それならば、その「嘘」は、金、銀、鉄の斧をすべてとおなじくらいか、それ以上の価値があるような気がします。