心理カウンセラーの風湖です。
「ねぇ、どっちがいいと思う?」
洋服を両手に持ちながらそう尋ねる女性。
どれほど多くの男性が、女性のこの質問に頭を悩ませていることでしょう。
友人から聞いたことがあります。
この質問に対するベストな返答は、
「本当はもう心の中では決まっているんでしょう?」
と、爽やかな笑顔で切り返すことだと。
なるほど、うまいことを言うものだと感心しましたが、この切り返しのうまさも実は経験の賜物に過ぎないのでしょうね。
人は、個人の経験によって判断の反射の仕方が変化することは十分にあり得ます。
たとえば、ランチを注文するとき、なにを根拠にメニューを選ぶのでしょうか。
自分の健康状態、必要な栄養分、昨日食べたメニューとの重複、レストランの質、季節の食材、価格と自己資金、シェフの腕や名声…。
すべての要因を満遍なく考慮することは不可能ですから、合理的に決めているつもりでも、実際にはごく少数の情報に基づいた反射的な判断だったり、あるいは「ただなんとなく」という漠然とした感覚が先行していることも少なくないはずです。
おそらく各個人の脳に「思考癖」があり、その癖がその癖が、目の前の情報への反応や解釈に「偏見」をもたらしているのでしょう。
ですから、冒頭の女性が「どちらの洋服を選ぶのか」は、「すでに決まってしまっている」という言い方が正しいのですね。
たとえば、骨董品の鑑定士は、実物を見ただけで本物か偽物か、また本物だったらどれほど芸術的価値があるのかを瞬時に見分けることができます。
それはほとんどが反射なのだそうです。
真贋を見極める力は、経験がものを言います。
どれほどたくさんの品を見たことがあるのか。
どれほどたくさんの素晴らしい逸品に出会って来たのか…。
素晴らしい経験は、かけがえのない財産となり、適切な反射力となり身を結びます。
センスや直感などもすべて経験の賜物です。
逆に、悪い反射癖がついてしまうと、その後に正しい訓練を受けても、なかなか戻すことが難しいものです。
自己流でスポーツや楽器を始めて、妙な癖がつくと、後から修正しづらいことと同じです。
ですから私は、より良い判断をしてより良く生きるためには、「より良い経験が1番だ」と考えています。
あなたが「大好きな異性」を、なぜ好きになったのかを問われても、理由は見つからないのかもしれませんが、実はかなりの過去の経験による自分自身にとっての的確な判断によるものだと言えます。
ですから私は常に言っています。
「この世に正しいことなどありません。正しさよりも、楽しそうな方を選ぶと、それが正解です。」と。
「ヒトの脳は、自分自身に無自覚である事実に無自覚である。」とは、ヴァージニア大学のウィルソン博士の言葉です。
ヒトは、自分自身の判断基準に対しても無自覚なのですね。
ですから、どちらを選ぶのか迷ったら、あなたの決めた方が正しいということになるのです。