心理カウンセラーの風湖です。
昨日、「子育てに心理学を生かす」という題材のセミナーを開きました。
子育て中は、親の様々な価値観や信念を子供に植え付けます。
それは、多くの場合、子供にとって役に立つものだとは思いますが、まれに役に立たないものも含まれている場合もあるのです。
姫野カオルコさんの小説「彼女は頭が悪いから」という小説をご存知でしょうか。
2016年に起きた東大生による強制わいせつ事件を題材にした小説です。
フィクションとはいえ、事件の背景などに照らし合わせると、かなりリアルな設定であることがわかります。
その小説の内容は、男子学生たちがいわゆるヤリサーといわれるセックス目当てのサークルを作り、東大生と知り合いたいという女子学生たちの気持ちにつけ込んでセックスしたり、性的な搾取をする……。
学生たちは、東大生である自分に寄ってくる女は“下心”があると考えて最初から見下しています。
中でも、偏差値の低い大学の女子学生はモノ扱いで、酒宴を盛り上げるために呼びつけて、おもちゃにするのです。
彼女達に対しては、そうしても構わない相手だと思っているのですよね。
この小説に登場する男子学生やその両親は鼻持ちならない学歴至上主義の人々ですが、決して特殊ではなく、ある階層においてはごくありふれた人々なのだと思います
「そんなの、女の子の方が悪い。そもそも東大生狙いだったんだから、自業自得じゃないか。」そう思う人もいるかもしれません。
実際の事件でも、ネット上には被害者への苛烈なバッシングがあふれていたのだそうです。
教育熱心な親ほど、学歴や職業が人としての値打ちを表すという価値観を無意識のうちに子どもに与えがちです。
以前、「道でゴミを集めている人を見かけるたびに、息子に『勉強しないとああなっちゃうよ』と教えている」と誇らしげに言った人がいました。
ゴミを集めてくれる人がいなかったら、私達の暮らしはどうなってしまうのか、何事も感謝する気持ちを教えることが教育なのではないでしょうか。
私は、この小説に出てくるような高学歴の子供を持った母親に、心理学を教えたことがあります。
その母親は、「かつての自分だったら、被害に遭った女子大生をバカにしたかもしれない。」と、おっしゃっていました。
「被害者の彼女は、その男子東大生の母親の代わりなのではないか?」と、涙を流していました。
「自分の子供と過ごした過去のいろいろな場面を思い出して、あの時自分に向けられていたのはまさしく彼女が浴びたのと同じまなざしだったのだと気づきました。」と。
つまらない女に騙されないように、と親が言ったのかもしれません。言わないまでも、どこそこの大学の子は……と眉をひそめたり軽蔑したように笑うだけでも“教育効果”は十分です。
自分の本当の笑顔を子供に見せた事がありますか?
親は、「どんなあなたでも大切な存在」だと子供を抱きしめてあげてくださいね。