心理カウンセラーの風湖です。
生物は38億年も生きながらえてきました。
過去なんて全然関係ないのです。今日は今日。明日は明日。将来の心配もしなくても良いのです。何故なら、一年後にはもうまっさらな自分なのですから。
今だけ見て生きていれば良いのですよね。
昨日、心理セミナーに集まって来て下さった皆さんの中に、20歳の男性がいらっしゃって、その方が私に質問をして下さいました。
「先生は、未来の自分の可能性を信じて過去の自分の経験とは気持ちを切り離しましょうと言われましたが、僕はどうしても子供の頃の嫌な記憶が忘れられないので、どうしたら考え方を変えられるのかを知りたいのです。」
以前NHKBS1を何気なく見ていたら、ある生物学者が、大勢の学生の前で講義をしているシーンが映りました。その中でその先生が、とても丁寧なゆっくりとした口調で、
「1年前の私といまの私は、まったくの別人だと言えます。中身が完全に入れ替わっているからです」
と、言っていました。
「1年前の自分といまの自分が、生物学的には全然別人である」とはいったいどういう意味なのでしょうか?
それは実は、細胞が全て生まれ変わっているということなのです。
角質が28日周期で生まれ変わる、毛が抜けて新しい毛が生えてくる、まあそのぐらいなら多分大勢の人は知っていますよね。
私達の体にはおよそ37兆個の細胞があって、それらは生きている限り何度も何度も生まれ変わりを繰り返しているのです。
そして、その繰り返されるスピードが、ものすごく早いのだそうです。
1年前にあなたという人間を形作っていた37兆個の細胞は、いまのあなたの体内にはすでにひとつも残っていないというのです。
1年前のあなたの目玉と、いまのあなたの目玉とは、全然別物なのです。いわば新しい目玉になっているのです。
例えば、地震に強い頑健な建物を作ったとします。100年は大丈夫。メンテナンスを繰り返せば200年程度は保証します。
しかしそれが1,000年後にはどうなるのでしょうか。10,000年後は?どんなに頑丈に作っていたとしても風化が始まり、いずれ朽ち果てて消滅してしまいますよね。
築き上げたものはいつか壊れて姿をなくしてしまいます。
朽ち果てることにどう対抗してきたのでしょうか。
それは、細胞を積極的に壊すことにしたのだそうです。
体の中をわざと不安定な状態にして、それを補うための新しい細胞が生まれる環境を作ります。
生まれた細胞をまた壊し、次を生み出すのです。それは、生きている間延々と続く、分解と合成の連続なのです。
その話を聞いていて、なんだか私も大きな勇気をいただきました。
過去なんて全然関係ないのです。今日は今日。明日は明日。将来の心配もしなくても良いのです。何故なら、一年後にはもうまっさらな自分なのですから。
今だけ見て生きていれば良いのですよね。
現在、命がある事に感謝して、今を楽しんでいれば良いのです。
過去の恥ずかしい思い出や、人間関係の辛い思い出も、それでいいんだよと言ってもらえたような気になりました。
体がどんどん生まれ変わり続けているのに、頭の中だけ過去の何かに固執するなんて、どうにもちぐはぐですからね。
確かに思い起こしてみれば、一年前にどのような悩みを抱えていたのかは、あまり覚えていませんし、覚えていたとしても、今ではそんなに深刻な問題では無いような気がします。
ちなみに、「それほど細胞が常に新しく生まれ変わっているのに、なぜ老けるのかですか?」という質問をした方がらっしゃって、その教授はこう答えておられました。
「生まれ変わるといっても、前の細胞に残った老廃物はそのまま引き継がれます。
きれいに掃除をしたつもりでも部屋の隅に取りきれないゴミがこびりついているようなもので、少しずつ溜まっていくその老廃物が、次第に老いとなって現れる」のだそうです。
毎朝、生まれ変わっていく、流動体の私達人間なのですから、今日から気持ちも新たに生まれ変わって、一瞬一瞬を楽しく生きて行きましょうね。
長くて深い生物学の観点から見れば、あっちとこっちは、どっちもどっちなのですから。