心理カウンセラーの風湖です。
「結婚はしたいと思うのですが、出会いのチャンスが無いし、相手が見つからないのです。」
ある30代半ばの女性が私に相談に来てくれました。
その女性は、笑顔が素敵なとても綺麗な女性でした。しかも性格もとても明るいのです。ですから私は最初、冗談かなと思っていました。
「あなたなら街を歩いているだけで、声をかけられるのではないですか?」
と、私が聞くと、
「そんな事は全く無いです。実は私は今まで1度も、街を歩いていて男性から声を掛けられた事は無いのです。」
と言われ、ビックリしました。
いろいろとお話を伺っていると、お見合いパーティーや合コンなどの出会いの場にも時折出かけているし、マッチングサイトにも登録されているらしいのです。
という事は、街で声をかけられる事は無くても、物理的には何人かの男性には出会われているのですよね。
「でも先生、どの方とも結婚したいとは思えないのです。ですから私がいつまでも返事を迷っていると、そのうちに相手の方は私に呆れてしまい、去って行ってしまうのです。」
そういう彼女の表情は、どこか寂しさを感じさせていました。私は、どうやらこの案件には、彼女の心の中に原因は隠れているのではないのかな?と考えました。
つまり、例えば彼女を気に入ってくれて「付き合って欲しい」と言ってくださる男性がいたとしても、自分でも無意識のうちに、避けるような態度をしてしまう理由が、過去の経験の中に潜んでいるのではないかと思ったのです。
「あなたが結婚相手を見つけたくないのは、なぜなのでしょう?」
私が伺うと、彼女は驚いた顔をして、
「先生、実は私は昔、付き合っていた彼に裏切られた経験があるのです。」
と、打ち明けて下さいました。
今から3年前に彼女は、結婚を考えていた彼氏がいたのですが、自分よりも10歳も年下の女性と彼は浮気をし、彼女はアッサリと捨てられてしまったのだそうです。
当時は訳の分からないまま、ただ呆然とその現実の理不尽さを受け入れるしかなかったようですが、次第に彼女は、自分を責めるようになったのだと言います。
彼とお付き合いをしていた期間に、自分は何をしてしまったのかを思い出しては、反省したり、後悔したりを何度も何度も繰り返していたのですね。
そしてそのトラウマから未だに解放されないまま、長い年月、彼女の心は傷つき、他の男性とお付き合いが出来ないままでいたのです。
それでもまだ彼が好きでしたし、この3年の間に「男性は裏切るものだ」という信念が強固になってしまいましたから、どんな素敵な相手が現れたとしても、自分から壁を作ってしまい、その結果、愛を捧げる事が出来ずに苦しんでいたのです。
「あなたは、1人で悲しみを我慢して来たのですね。あなたはきっと、お友達にも彼の事は言えないですもんね。」
と、私が言うと、彼女は途端に気丈な表情が崩れ、ポロポロと涙が溢れて来ました。
失恋の悩みは、お友達などに聞いてもらうと少しは心が癒されると言われる方は多いと思いますが、彼女はそれが出来ませんでした。
何故なら、優しくて真面目な彼女でしたから、お友達に聞いていただいた時に、そのお友達は彼女を励ますために、その彼を「ひどい男」と、罵るでしょう。
ですが、まだその裏切った彼が大好きだった彼女は、例えお友達からであっても、彼の悪口だけは聞きたくなかったのですね。
そのために、ずっと1人で悲しみを自分の心の中に閉じ込めていたのです。
そして、しばらくの間、私の前で涙を流して号泣した彼女は、やがて少しだけホッとしたような笑顔を見せてくれました。
「これからは、少しずつ彼を忘れられそうです。先生、また話を聞いてくださいね。」
彼女はやっと、その心の中の叫びを吐き出して、その想いを癒す事が出来たのですね。
老若男女にかかわらず、「結婚相手が見つからない。」と悩む方は多いのですが、自分の心の声を聞いてみると、実は「見つからない」のではなく、「見つけたくない」のかもしれません。
焦らずに、自分の幸せとは一体何なのかを考えて、その答えが見つかったら、顔を上げて前に歩き出してみて下さい。
やがてふと気付くとすぐそこに、あなたと同じ価値観を持って寄り添って下さる方が現れ、幸せが訪れるのかもしれませんね。
