心理カウンセラーの風湖です。


 「私は、女ばかりの集団行動が苦手です。どちらかと言えば1人でいる方が好きです。私の職場は女性ばかり。やはり集団行動をしている人が多いのです。私は馴染めないのでいつも1人でいます。周りに合わせた方が良いのか悩みます。」



 女性は、団体で行動するという印象が強いですよね。ですから、周りに合わせて行動出来ない自分はおかしいのではないかと悩んでしまう女性のクライアントさんもたくさんいらっしゃいます。


 実は私も、あまり人付き合いの良いタイプの人間ではありません。

  1人の時間が好きなのです。


 ですから、1人暮らしも寂しいと思った事はありませんし、仕事もフリーランスです。

 食事も大抵1人で外食します。
 

 とはいえ、知人とお酒を飲む賑やかな時間の楽しさも好きだし、心理学講座の生徒の皆さんと一緒に食事をする時間もとても大切なひとときだなと、嬉しく感じます。


 思い返せば、私は子供の頃から1人が好きだったかも知れませんね。しかし、学生の時の学園祭などの楽しかったイベントの思い出が詰まっているのもまた確かです。




 ここで、面白い傾向に気づきます。


 つい先日まで私は、新型コロナウィルスの影響で、自宅待機を強いられていた期間1人でずっと家の中で過ごしていました。

 しかし、1人で過ごした時間は、皆と過ごした時間とは異なり、実はどんなふうに過ごし、何を考えていたのかを鮮明に思い起こす事が出来ないのです。


 これは、私だけに起こっている事では無いようです。


 過去の心理実験から、
「集団で行った事は、1人で行った事よりも記憶に留まりやすい。」
 事が広く知られているのです。


 人は、必ずしもコミュニケーションのためだけに集団を作っているわけではありません。


 コンサートでは音楽を楽しみ、映画館ではスクリーンの中の世界に釘付けになり、美術館では芸術に感銘します。


 そこには多くの人が同じ場所に集い、同じ体験を共有しますが、そこには会話はありません。


 イエール大学の研究では、このように言葉を交わさずに同じ経験をすることの効果を調べているのだそうです。


 例えば、1人でチョコレートを食べる場合と、見知らぬ人と2人で食べる場合を比較したのです。


 2人の場合でも会話はありません。
 ところがアンケートの結果「2人で食べた方が美味しい。」と、判定されたそうなのです。


 逆に、凄く苦いチョコレートを食べた場合は、「2人で食べた方がより苦い」と判定されたのだそうです。


 会話を交わさなくても、同じ経験をするだけで感情が何倍にも増えるのですね。


 そうすると、「集団行動が苦手です。」と主張する方も、実は他の女性社員の方々が、同時にそこの会社全体の時空間をお互いに共有しているからこそ、生まれている感情なのでは無いかなと思うのです。


 となれば、私の「1人好き」とは、真の意味の孤独ではなく、たくさんの人がいる場所の中にいるからこそ楽しむ事が出来る、無言の集団効果を味わっているのだとも言えそうですね。


 無理に他人と合わせて行動しようとしなくても、私達は、たくさんの人達とその空間にいるだけで、経験を共有して楽しんでいるのです。


 お互いに同じ場所で同じ感情を倍増して楽しんでいるという事は、同じ行動をする事となんら変わらない経験なのではないでしょうか。


 ですから、無理に他人と合わせて行動しようとしなくても、相手はあなたの存在も全て含めて時空間を快適に過ごしているのですから、気にする事はありません。


 会話は無くても、1人で孤立するより、集団の中で自分なりに快適に過ごせばそれで良いのですね。