心理カウンセラーの風湖です。

 ある生徒さんから質問をいただきました。

 「私の職場には、明らかに空気の読めない、指示を聞かない後輩がいて、私がその後輩の直属の上司になるので、とてもストレスが貯まります。どのように対応すれば良いのかわかりません。」



 職場や、さまざまなコミュニティという限られた空間での人間関係は、その人独自の価値観を相手に主張し合う場でもあります。

 もちろん、家族間や友人関係でも同じ事です。

 ですからそこには、相手の言動によって怒りや恐れなどといった、終わる事のないネガティブな感情が湧き上がる場面が多いのだと思います。


 しかし多くの場合、そこから逃げるわけにはいきませんから、心身共に緊張してしまい、余計にストレスを溜め込んでしまうのです。

 

 
 心理学を学ぶと、その効果として「ポジティブになった。」とか、「他人の言動が気にならなくなった。」とか言う、自分の心の中の変化を私に伝えてくださる方も多いです。


 私の担当する心理学講座の、ある男性の生徒さんの話です。

 ある日、新聞を買おうとコンビニに入った時、とても無愛想な店員がいたそうです。

 彼は店員に礼儀正しく挨拶をしましたが、店員は何も言わずにやはり無愛想な態度で対応して来たのだそうです。

 しかし、彼はニッコリと微笑んでお金を払い、お礼を言いながら新聞を受け取ってお店を出てきたと言っていました。

 私が、

 「店員がそんなに無愛想なのに、何故お客さんであるあなたは愛想良く振る舞えたのですか?」

 と尋ねると、彼はニッコリと笑顔でこう答えてくれました。

 「だって先生、相手がどんなにネガティブな態度を取っても、私はポジティブな態度を貫く事をモットーにしているからですよ。
 相手がネガティブな態度を取るのは、相手の自由ですが、私がポジティブな態度を貫く自由を奪う権利は誰にもありませんから。」

 


 ポジティブ思考は、一時的な考え方ではありません。

 現実を誤魔化すための言い訳でもありません。

 生き方の問題なのです。


 つまり、幸せは偶然やって来るものではなく、自分が心の持ち方や考え方を選ぶ事によって感じるものなのです。



 自分のそばにいる人に心をネガティブな方へ誘導されている事に気がついたのならば、考え方を変えて、自分のポジティブな人生観で相手に影響を与えてあげられる人になれば良いのです。



 では、どうすれば良いのでしょうか。

 答えは、相手を良く観察する事なのです。

 

 良く相手を観察していると、その相手が本当に必要としているものが見えて来ます。

 人はみな、そばで応援してくれる人が必要なのです。

 だれかの励ましがあれば、ベストを尽くすモチベーションになるし、その人の能力や、良いところを引き出すのに役立ちます。

 

 第二次世界大戦中、たくさんのユダヤ人を救った日本人外交官、杉原千畝はこう言いました。

 「誰かに助けてもらうのではなく、1人でも多くの誰かを助けましょう。決して見返りを要求してはいけません。」

 終戦後、日本政府の意向に反して独断でビザを発行し続けたことで杉原千畝は外交官を解雇され、一般の企業に転職しました。

 彼に送られる賞賛や感謝の言葉はほとんどなく、むしろ痛烈な批判ばかりだったのだそうです。

 


 どのような状況においても、周囲の人を励ます事を心がけて生きて行く事は、簡単ではありません。

 しかし、その事だけに集中しているだけでも、周りの人達の心が変わり、雰囲気が明るくなり、生き方が楽になるのならば、それがやがて大きな環境の変化につながっていくのだと思います。