心理カウンセラーの風湖です。
私は、心理学の講師として心理学を生徒さんに教えていますが、その一方で、メンタルクリニックなどでいわゆる精神的ストレスや不安な感情などが原因で体調までも崩してしまったりしている方に対してのカウンセリングもしています。
精神的に弱くなってしまうきっかけというのは、様々な場面がありますが、どのような症状の方でもその性格に問題がある訳ではありません。そして育って来た環境が悪いわけでも無いのです。
普通の人が、普通に生活している中である日突然鬱状態に陥るという人が大半なのです。
何故かと言えば、長い人生を歩んでいる私達は、毎日様々な経験をしている中で、自分の意思とは違う何かが起こったり、大きく心が揺さぶられる出来事にぶつかる瞬間が必ず来るからです。
そういう時に、人はいとも簡単に鬱状態になります。
最近では、40人に2人の割合で鬱状態になっているとも言われていますし、人間は人生の中で平均2回は鬱状態になるといいますから、特別な事では無いのかもしれません。
そして、そのような状態に陥ってしまい、私のカウンセリングを受けてくださっている方の相談には、ありとあらゆるパターンの悩みが多いのですが、その中でも最近多いなと感じる悩みは「外出出来ない不安」です。
例えば、ある日会社に行こうと電車に乗ると急激に不安に襲われてしまい会社に行けなくなる、という不安症です。
その理由は人により様々です。
会社で同僚に比べて成績が悪い場合、それを認めたくないと思う事が原因なのかもしれません。
また、上司から厳しく叱責されるのが怖くて会社に行きたくないのかもしれません。
いずれにしてもその理由は、実は本人にもはっきり「これだ」と断言出来ない場合が多いです。
何故なら、私達はついつい、現在の問題を過去のせいにして誤魔化してしまう癖があるからです。
推理小説や、刑事物のドラマや映画でも、殺人犯は「何故殺したのか?」と、問われると「自分は親に捨てられたからだ。」と答えるシーンがあります。
まともな家庭に育てられなかったから自分は殺人犯になったのだ。自分は悪くない。
という理由です。
それを見ている私達は、
「なるほど。親に捨てられると子供は悪い事をしても当然なのだな。」
と、何の疑問も持たずに納得をしてしまいます。
しかし、親に捨てられた子供が全て殺人犯になるわけではありません。
「鍵っ子だったから私は暗い生活になった。だから、私が人見知りなのはお母さんのせいだ。」
「家が貧乏だったから大学に行けなかった。だから良い仕事に出会えなかった。」
しかし、それは単なる言い訳です。
誰かに自分の価値観や信念を「間違っている」と指摘されるのが怖いから、過去や環境のせいだにして相手を納得させようとしてしまうのです。
過去の体験をバネにして未来を切り開く道を選ぶのか、ずっと被害者のふりをして言い訳だらけの人生を過ごすのか、それを決めるのは自分です。
自分次第でいかようにでも進む道を決める事が出来るのです。
しかし私は、そのような不安を抱いているクライアントさんには常に自分で気付いていただきたいと思っておりますから、長い時間をかけてその方の無意識から来るトラウマや思い込みを外してもらうように努力をしています。
気付けば、人は変わります。
そしてこうすると決めたら、人は成長するのです。
不安だから外出出来ないのではないのです。
外出したくないと突き動かすトラウマや思い込みがあるのです。
人見知りだから彼女が出来ないのではありません。彼女を作りたくない原因が他にあるのです。
貧乏だったから大学に行けなかったのではありません。大学に行ったら他の人よりも自分が劣って見えるかもしれないと自分が判断したのです。
どのような理由があるにせよ、その人の行動にはその人なりの理由をその人が作り上げて、不安までも作り上げてしまっているのですね。
それでも、外出出来ない状態を本人が幸せだと思って笑顔ならばそれでも良いのかもしれません。
「今はそういう時」だと見守ってあげるのも良いアドバイスになるのです。
悩みを持つ人は、皆さん真面目で優しい方ばかりです。
そのような人達を私は尊敬しています。