心理カウンセラーの風湖です。

「四〇にして惑わず、五〇にして天命を知る、六〇にして耳順う。」

という、論語の一説があります。

人は、年齢を重ねると心境がだんだん変化していきます。一般に、心は平穏になり、生活の知恵が身に付いて来ます。何かしらの問題が生じたとしても、冷静な対応が出来るようになって、生きる事への感謝の心が芽生えて来ます。

しかし、年齢を重ねるごとに何かを新たにはじめる事に対しては臆病になる人も多いと感じます。

私が日々教えている心理学講座をはじめるようと望んでいらっしゃる方も、「もうこの年齢だから、物覚えも悪くなって来ているし、これから勉強して意味があるのでしょうか。」と言われる方もたくさんいらっしゃいます。

興味深いデータが報告されています。

「損をしそうだ。」と予感される状況では、若者の方が高齢者よりも強く反応することがわかったというのです。しかし、実際に損をしてしまった時の反応は、若者でも高齢者でもほとんど同じだったと言います。

つまり、損失そのものへの嫌悪感は歳を重ねても減ってはいません。ただ、若者よりも人生経験が多い分、「将来への不安を感じる」要素がそれだけ多くなるという事も考えられるのです。

例えば、定年で環境が一気に変わったり、子供が自立したり、時に配偶者が先立たれる事もあるでしょう。両親の死を経験する方も増えて来る年齢ですから、自分の健康状態も気になります。

「いい歳をして。」とは、これから来るであろう最悪の状況に対して自分を守るために新しい何かをはじめる事を避けてしまう自分への言い訳なのかも知れません。

人々の癒しとなっている、瀬戸内寂聴さんが出家を決意したのは51歳の時です。
世界的なピアニストであるフジコ・ヘミングさんがそのコンサート活動を開始されたのは70歳手前の時。
アメリカのドナルド・レーガン元大統領が、政治家に出馬表明をしたのは70歳を超えてから。
カーネルサンダースさんがチキン産業を目指したのは65歳を過ぎてからなのだそうです。

「人の老うるをおそれず、ただ、心の老うるをおそれる。」とは、中国の諺です。

脳は歳をとると、不安要素が増える事もある反面、「より幸せを感じる。」という傾向もあると報告されています。
周囲になんと言われようとも、本人が幸せに感じているのであれば、何よりそれが一番なのではないでしょうか。

私はいつまでも心も身体も健やかな老境に至りたいと願っています。