心理カウンセラーの風湖です。

これから社会に出られる10代から20代の子供さんを持つ親御さんに、私からのお願いがあります。

あまり子供さんに自分の希望を押し付けないであげていただきたいのです。

あるセミナー終わりの午後、1人の大学生の女性が私のそばにうつむきながら近寄って来て言いました。

「先生、私は将来、先生のように人の悩みに寄り添ってあげられる心理カウンセラーになりたいと思っているのですが、親や大学の先生は、そんな不安定な仕事よりも臨床心理士の資格を取って医療に携わる方が良いと言うのです。先生の授業はとても興味がありますが、この心理学を学ぶと、確実に心理カウンセラーになって成功出来るのでしょうか?」

正直言ってドキッとしました。何故なら、この質問はこの女性のこれからの人生における課題がたくさん入っている質問だからです。

まず、「人生における成功とは一体何なのか。」
そして、「両親の期待を背負う若者の悩み。」
加えて、「失敗をしたくないという人間の不安。」

それらはすなわち、「両親との価値観の相違から来る、若者の行動力や判断力の低下。」に繋がり、ますます若い皆さんの未来の可能性を狭めてしまう結果となるのです。

今の時代、何を指して成功というのか、または何を指して安定というのかは、どんなに素晴らしい博士でも確実に「これだ!」とは言い切れませんから、私もその彼女に言いました。

「成功しようとしないでね。それよりも、自分が将来何をしていたら自分は楽しいのか、何をしていたら幸せなのかを考えてね。成功した人間になるよりも、価値のある人間になって下さい。」

もちろん、両親の意見も、学校の先生の意見も大切です。生まれてから今まであなたを心から見守り、大切に育てて来てくれたのですから、あなたに失敗して欲しくないと思う気持ちも分かります。

人は、それぞれいろいろな宝物を持っているのです。
しかし、何を持って生まれたかよりも、「自分の持っている物をどのように使うのか。」が大切なのではないかと思います。

私なら、自分の子供達にはずっと笑顔でいて欲しいと思っています。幸せそうに生きていてくれるなら、どんな人生の選択をしても構いません。

親は、ある程度子供を社会に適応出来る教育を授けてあげたならば、その子の前に立つのをやめて、横に立ち、その後には後ろに回る事が大切なのではないでしょうか。

子供は、親の宝物だけではなく、社会の宝物でもあるのです。

自分の子育ては間違いではないのだと信じて、社会に向けてその手を離す気持ちで子供の成長を待つ。そして後ろから支える勇気を持ってドーンと笑顔で構えていてあげて欲しいと思います。

その若い女性が、失敗ではなく、トライ&エラーを繰り返しながら人生の選択をし、行動出来るようになる未来を期待します。