心理カウンセラーの風湖です。

毎年、この時期になると思い出す風景があります。

もう何十年も前の事。それは高校三年生の三学期、もう卒業式が目前に迫り、学校に通う必要もなくなったある日の午後、私は忘れ物を取りに自転車で通い慣れた道を久しぶりだと感じながら高校へ向かいました。

当然の如く、三年生の教室はがらんとしていて静まり返り、人の気配はなく、あれだけ騒がしかった生徒達の面影を残して無造作に並べられた机や椅子、廊下に並んだ古い傷だらけのロッカーなどが一斉に私に注目したような気がして、自然に涙が流れた不思議な記憶です。

遠くに聞こえる下級生の合唱の声。ピアノの音色。
最上階の音楽室から外に向かって響く吹奏楽部のパート練習の管楽器の音。
校庭の運動部のランニングに合わせた力強い掛け声など、何もかもが、そこに佇む私を後ろから外に押し出している様な感覚に襲われて、今でも胸を締め付けます。

それから何年か経ち、成長して社会人となって、毎日同じ様な生活を過ごす私達ですが、過去には決して悪い思い出だけではなく、確かに純粋に一瞬一瞬を敏感に感じ取りながら、喜び悲しみ、仲間に助けられてお腹を抱えて笑ったあの日々を忘れてはいけないと思います。

人間の脳には時間軸が無いのだそうです。
はるか昔の忘れてしまった思い出でも、あるほんの少しのきっかけでふとその当時の自分に戻る事が出来るのですね。

心理学では、ブラインド効果と言って、ある出来事が起こった時に、それが花屋さんの前なら花屋さんを見た瞬間にその記憶がわっと浮かび上がったり、同じような風景を見た瞬間に、まるでデジャブの様に同じ体験をしている様な感覚になるのだそうです。

それならばまず、自分の1番素敵だと思う風景を頭の中にストックしておきましょう。

嫌な予感がした時に、その風景を考えただけでも気持ちが和らぐ事があります。

高校三年生の風景からはもうかなりの年月が流れていますが、私の心は、この時期になると10代に戻るのです。

その廊下に通った風の匂いまで感じます。

そして、今日も頑張って参ります。