仕事を自分で支配することについて思う事。

心理カウンセラーの風湖です。

「あなたの仕事は、あなたが死んだら誰かがやる。」

久しぶりの休日の午後、ある本を読んでいたら、こんなフレーズが目に飛び込んで来ました。
そして私は、先週行ったあるカウンセリングをふと思い出しました。

私のカウンセリングルームに来てくださった45歳の男性が、こんな風に話して下さいました。

「私は今の会社に入社してから約20年、ほとんど休みなく働いて来ました。朝早く出勤して、夜中まで残業し、尚且つ休日にも緊急のメールが私の携帯に届き、慌てて会社に向かう事も度々ありました。
でも、その甲斐があり、昨年、本社で管理職を任される事になったのです。」

そこまで意気揚々とお話をされて、その後、男性はふと目を伏せて言われました。

「なのに、その本社での上司との関係が上手くいかなくなって、先週から眠れなくなり、食事も取れなくなり、ついに会社にも行けなくなってしまいました。
私は、部下を70人ほど抱えているのに。私が会社を休んだら、会社に凄く迷惑をかけているに違いないのに…。」

その男性は、その話し方も雰囲気も本当に穏やかな優しさに溢れていらっしゃる方でした。子供は出来なかったらしいのですが、社内結婚をして、妻との時間も大切にしたかったのに、つい仕事ばかりでそんな余裕も無かったと涙を流されていらっしゃいました。

私は、少し間を置いて、その男性に言いました。
「楽しくもないのに、絶対あなたがやらなければならない仕事などありませんよ。何より重要なのは、自分の幸せと愛する人の幸せなのですから。」

男性は、はじめは確かに働く事は楽しかったのです。ですから、20年以上も仕事に邁進して来たのです。それは、自分の仕事を自分で支配して、考えたり、工夫したりしていたからです。

なのに管理職となってからは、成績や数字に追われるようになり、いつからか誰かにあれこれ言われて指示されて、常に誰かに監視されている状態の仕事に変化してしまったのですね。

幸せに働くと言う事は、仕事を自分で支配出来ている実感を得る事が出来、しかもそれを楽しめる事なのではないでしょうか。

フランスの思想家、アランの言葉に、
「他の誰かの畑を耕してはならない。自分の畑を耕しなさい。」
と言うものがあります。

人は、自分の行動を自分でコントロール出来ている事に対して幸せだと実感出来ますが、自分の行動を誰かに監視されている、あるいは自由に考えて工夫する事が出来ないと思うと、そのモチベーションどころか身体の免疫力まで下がってしまうのだそうです。

スケジュール帳がいっぱいになっている状態が、成功の証だと思っている方は、もしかしたらそれは偽の成功、偽の幸せなのかも知れませんね。

まずは立ち止まって、その仕事を楽しんでいるのかを確認してみて下さい。そしてその過程を大切にしながら愛情のある暮らしをしてくださいね。

今ある、人生の貴重な時間を無駄にしないように。

自分の心までコントロールされないように願います。