心理カウンセラーの風湖です。

「自由になりたいのです。」

私の担当する心理カウンセリングに何回か来てくださっている27歳の女性が、うつむきながら私におっしゃいました。

とても綺麗で背も高く、学歴も申し分ない彼女でしたが、どこか自信が無さそうで、何かあるとすぐにネガティブな考え方をしてしまう為、常に不安そうな表情をしているのが少し気になっていました。

「あなたはそんなに素敵な女性なのに、不安だと考えてしまうのは、何か原因があるのでしょうか?」

と、彼女に寄り添うように私が言うと、その彼女は少しずつ打ち明けてくれました。

聞けば、小学校低学年の頃、ほんの些細な事で仲が良かった友達と喧嘩になり、そのままイジメに発展し、なんと中学を卒業するまで我慢に我慢を重ねてイジメに耐え抜いていたと言うのです。

人の行動を制御してしまう原因の1つは、他人から卑下される言葉を刷り込まれる事による思い込みです。
長い間悪口を言われ続ける事により、人の脳は反発するよりも、受け入れた方が良いのではないか、楽になれるのではないかと考え、その言葉をそのまま受け入れてしまい、次第に自信を無くしてしまいます。

もう一つは、とても大きな衝撃による信念の歪んだ上書きです。
他人から親や先生などからの何気ない一言からショックを覚え、その人の心に鋭く突き刺さり、トラウマとなってその人の脳裏に張り付いてしまいます。
それが信念に変わり、何かやりたい事があっても自分には出来ない、失敗するに違いないと考えてしまいます。

そして彼女は、その自分への思い込みから自由になりたいのだと私に訴えて来たのですが、そこで私が彼女を元気付けようとしていくら褒めたり励ましたりしても、もう長い時間、自分に自信がない状態を続けている彼女にはあまり響きません。

「それなら、逆にとても意地の悪い心のあなたを思いっきり前面に出してみましょう!」

私は、彼女に言いました。
彼女は、ビックリしたような表情で、しかし、今までになくパッと目を見開き、顔を上に上げて私を見ました。

彼女は随分と長い時間をかけて、他人から自分に対するネガティブな言葉を聞きながら生活をして来ましたから、ネガティブな言葉は聞き飽きているはずです。
それならば、反対にネガティブな言葉ならいくらでも思い付くはずですよね。

でしたら、今こそ反逆の時です。
子供の頃からイジメに苦しんだ、それに耐え抜いた自分へのご褒美として、そのイジメた人達の顔を思い出し、言ってやるのです。

「私をイジメたアイツには負けるもんか!」
「私の方が彼女達よりも顔も心も綺麗だし、頭も良い!これからは私の時代だ!」
「幸せになって、次に会う時には私を羨ましいと思わせてやる!」

「私は、このままでは終わらないぞ!」

はじめは、躊躇していた彼女でしたが、そのうちに私の後について拳を握って反証してくれました。

人に感謝しましょう、謙虚になりましょうと言い続けている私なのですが、時には負のエネルギーをパワーに変えてしまう事も必要なのではないでしょうか。

最近の彼女は、会うたびに少しずつ元気になりつつありますが、毎回、彼女に会うだけで私まで元気をもらえる様な気がします。

時間がかかる場合もありますが、心の綺麗な状態だけではなく、とても悪い心の自分だって、誰でも持っているのですから、そんな自分にもたまには登場していただきましょう。

それから、上手く自分の心がコントロール出来る様になったら、また、心身共に綺麗になればいいのですから。

上を向いて、飛行機雲でも見つけてみましょうか。