ビジョナリーカンパニー②は既存企業・ベンチャー企業が偉大な企業へ躍進する為の概念を描いた本である。


 既存・ベンチャー企業+躍進の法則(ビジョナリーカンパニー②)
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 偉大な企業、偉大な実績の持続

 偉大な企業・偉大な実績の持続+時代を超える生存の原則(ビジョナリーカンパニー①)
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 永続する卓越した企業


偉大な実績を持続する企業に躍進する為の法則を米国市場の上場企業の事例から定性的・定量的に分析し導き出したものである。



その法則とは下記のステップである。

1.第5水準のリーダーシップ
2.最初に人を選び、その後に目標を選ぶ
3.厳しい現実を直視する
4.針鼠の概念
5.規律の文化
6.促進剤としての技術
7.弾み車と悪循環


井の中の蛙大海を知らず・・・。




1.「野心は会社の為に」~第5水準のリーダーシップ~
・偉大な実績を持続する企業は第5水準の経営者によって率いられている。この経営者は謙虚さと職業人としての意思の強さという矛盾を兼ね備えている。野心的であるが、その野心は会社に向けられ、個人には向けられていない。
・また熱狂的と言えるほど意欲が強く、優れた成果を持続させなければ決して満足しない。偉大な企業への躍進に必要であれば、どれほど大きな決定でも、どれほど困難な決定でも下していく。そして成功した時の要因は運や従業員など自分以外だと考え、失敗の要因は全て自分であると考える。
・非凡で有名な改革の指導者の招聘は、偉大な企業への躍進とその持続と逆相関の関係にあるという予想外の調査結果がある。

「リーダーシップの5水準」
第5水準/第5水準の経営者
⇒個人としての謙虚と職業人としての意思の強さという矛盾した性格の組み合わせによって、偉大さを持続できる企業を作り上げる。
第4水準/有能な経営者
⇒明確で説得力のあるビジョンへの支持と、ビジョンの実現に向けた努力を生み出し、これまでより高い水準の業績を達成するよう組織に刺激を与える。
第3水準/有能な管理者
人と資源を組織化し、決められた目標を効率的に効果的に追及する。
第2水準/組織に寄与する個人
⇒組織目標の達成の為に自分の能力を発揮し、組織の中で他の人たちとうまく協力する。
第1水準/有能な個人
⇒才能、知識、スキル、勤勉さによって生産的な仕事をする。


2.「だれをバスに乗せるか」~最初に人を選び、その後に目標を選ぶ~
・適切な人材こそが最高の人材であり、もっとも重要な資産である。その人材は専門知識や学歴・業務経験ではなく性格と基礎的能力によって決まる。
・偉大な企業への躍進を導いた指導者は、まずはじめに「適切な人をバスに乗せ」「不適切な人をバスから降ろし」「その後どこに向かうべきか」を決めている。誰を選ぶかが先で、何をすべきかが後。ビジョン・戦略・戦術・組織構造・技術も「誰を選ぶか」を決めた後に考えるのである。この原則を厳格に一貫して適用している。
・多くの企業は「一人の天才を一千人で支える」方式で行っている。躍進に繋がっている企業もあるが、天才が退けば崩れてしまう。
・報酬制度の目的は、不適切な人々から正しい行動を引き出すことにはなく、適切な人をバスに乗せ、その後もバスに乗り続けてももらう事にある。

「人事の決定で厳格になる為の実際的な3つの方法」
1.疑問があれば採用せず、人材を探し続ける(成功の最大のボトルネックは何よりも、適切な人々を採用し維持する能力である)
2.人を入れ替える必要がある事が分かれば、行動する(まずは座っている席が悪いだけなのかを確認する)
3.最高の人材は最高の機会の追求にあて、最大の問題の解決にあてない(問題部門を売却する時に優秀な人たちを一緒に売り渡してはいけない)


3.「最後には必ず勝つ」~厳しい現実を直視する~
偉大さへの道は自分が置かれている現実の中で最も厳しい事実を直視するところから始まる。そしてその事実(逆境)に真っ向から取り組むことで更に強くなっていく。
・事実を知る為に上司が意見を聞く機会、そして究極的には真実に耳を傾ける機会が十分にある企業文化を作り上げる事が重要である。社風を作る基本的な4つの方法(①答えではなく質問によって指導する。②対話と論争を行い、強制はしない。③分析を行い、非難をしない。④入手した情報を無視できない情報に変える「仕組み」を作る)
・リーダーシップはビジョンだけを出発点にするのではなく人々が厳しい現実を直視し、その意味を考えて行動するよう促す事を出発点とするべき。そして動機づけに力を入れるのではなく、人々の意欲を挫かないようにするにはどうすればよいか?という問題点に力を入れるべきである。
・どれほどの困難にぶつかっても、最後には必ず勝つという確信を失ってはならない。


4.「単純明快な戦略」~針鼠の概念~(針鼠…単純で冴えない動物だが肝心要を知っておりそこから離れない)
「自社が世界一になれる部分」「経済的原動力になれるもの」「情熱を持って取り組めるもの」という3つの円が重なる部分を深く理解し、単純明快な概念を確立する必要がある。
飛躍した企業は業界がどれほど悲惨であっても卓越した利益を上げる方法を見つけている。そして目標や戦略は虚勢ではなく理解に本ズいて設定している。
(1)自社が世界一になれる部分
世界一になりたい部分という願いや目標ではなく、なれる部分がどこか理解するところが重要。中核事業であってもそれが世界一になれないのであれば針鼠の概念の基礎にはならない。
(2)経済的原動力になれるもの
飛躍した企業は経済的原動力をたった一つの「財務指標の分母(X当たりの利益)」という形にまとめている。その指標を長期にわたって一貫して上昇させる事を目標にしている。
(3)情熱を持って取り組めるもの
どうすれば情熱をかきたてられるのかではなく、情熱を持って取り組めるものは何かという観点で考える。

「偉大な企業の財務指標の分母(分子は利益)」
アボット社…従業員一人当たり
サーキットシティ社…地域当たり
ファニーメイ社…住宅ローンのリスク水準当たり
ジレット社…顧客一人当たり
キンバリークラーク社…消費者向けブランド一つ当たり
クローガー社…地域の人口千人当たり
ニューコア社…鉄鋼製品1トン当たり
フィリップモリス社…世界的なブランドカテゴリー当たり
ピットニーボウズ社…顧客1社当たり
ウォルグリーンズ社…来客1人当たり
ウェルズファーゴ社…従業員1人当たり


5.「人ではなく、システムを管理する」~規律の文化~
・偉大な業績を維持するカギは、自ら規律を守り、規律ある行動をとる企業文化あることである。それには規律ある考えができ、規律ある行動をとる規律ある人材が必要である。
・また3つの円が重なる部分に熱狂で期とも言えるほど重視する人でなければいけない。その部分以外でビジネスチャンスがあったとしても飛びついてはいけない。「止めるべき事」リストが重要である。
・官僚制度は適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろせば不要となる。
・規律の文化には二面性がある。「一貫性のあるシステムを守る人たち」が必要であるが「システムの枠内で自由と責任を与える」ことも必要である。
・規律をもたらす文化と暴君は似て非なるもの。規律の文化は極めて有益であるが規律をもたらす暴君は極めて有害である。


6.「新技術にふりまわされない」~促進剤としての技術~
・技術の流行に乗るのを避ける必要があるが、自社の針鼠の概念に直接適合するのであらば、その技術の先駆者にならなければいけない。導入のタイミングは業績が飛躍するようになった後に技術利用で先駆者となる。
・飛躍した企業が開発した最先端技術を競合に無料で提供しても、自社に近い業績を上げる事は難しい。
・偉大な業績への飛躍を導いた経営幹部の80%は成功要因の上位5つに技術が入っていない。


7.「劇的な転換はゆっくり進む」~弾み車と悪循環~
「準備段階」と「突破段階」という2つのフェーズがある。偉大さを持続できる転換は、準備段階から突破段階に移行するパターンを常にたどっている。巨大で思い弾み車を回転させるのに似ていて、当初は僅かに前進するだけでも並大抵ではない努力が必要だが、長期にわたって一貫性をもたせて一つの方向に押し続ければ、弾み車に勢いがつき、やがて突破段階に入る。
・比較対象企業は賢明とはいえない大型合併によって突破口を開こうと試みるが、偉大な実績に飛躍した企業は、突破段階に達した後に、すでに高速で回転している弾み車の勢いを更に加速する手段として、大型買収を使っている。
・転換の動きには「名前」「標語」「開始の式典」「特別な計画」など、何か特別な事をやっていると思わせるものは何もない。
・偉大な企業への躍進を導いた指導者は「力の結集」「従業員の動機付け」「変化の管理」にはほとんど力を入れていない。条件がうまくそろえば、意欲や力の結集や動機付けや改革への支持の問題は自然に解決する。力の結集は主に実績と勢いの結果であり、逆ではない。