ピストルの音と共に第一走者の五年生の男の子たちが一斉に走り出した。
薫は上手くスタートでき、立ち上がりからトップに立った。基本的にアンカー以外
の走者はトラック半周して次の走者にバトンを渡す。
(よし、このまま逃げ切れば1位でバトンを渡せる)
そう思ったときだった。
(やばっ)
薫の一物の先端から、我慢していたオシッコがほんの少し飛び出した。
しかし、量は少なかったので、履いていたボクサーパンツを少し湿らせた
だけですんだ。
(早くゴールしてトイレ行かないと)
薫の頭はそれ一色になった。
(トイレトイレ)
ジュジュッ・・・・
走っている間に少しずつオシッコが溢れ出してくる。
(やばい!)
「ハァハァハァ」
薫は第2走者が待つ場所まで1位のまま逃げ切ってバトンを渡した。
「先生、オレちょっとトイレ」
走り終えた薫は近くにいた先生にトイレに行くと告げてそのままトイレに
走っていった。
「くぅ・・トイレトイレ・・」
既に薫のボクサーパンツはかなり湿っていて、体操服のズボンにも被害
が及びそうになっていた。
「トイレトイレ・・ふぅ、間に合っ・・・ええっ!」
なんとトイレは全て塞がっていた。
「そ、そんな・・」
薫はもはやその場で待つこともできない状態だった。急いでトイレを飛び出し
て、トイレの裏で立ちションしようと走った。
ジョジョジョ・・・・ジュワ~・・
「あ・・・・あ・・・・」
トイレの裏にたどり着く前に薫のダムは決壊してしまった。紺色の体操服の
ズボンに、どんどんオシッコが染みてゆく・・・幸い紺色なので、お漏らしがあま
り目立たなかったのが不幸中の幸いである。
「どうしよう、オレ・・・漏らしちゃった」
薫にとって五年生の運動会は、小学校生活で一番苦い思い出となったのだった。