夏の日差しが強いこの頃・・・年中真夏小僧の剣吾にとっては正に一番
活発になる時期である。年中変わらぬタンクトップに昔ながらの短い半ズボン
の少年は、今日もとても元気である。
この日は大好きな父親が休日で、早朝から少し遠くにある穴場の池に魚釣り
に行ったのであった。何日も前からこの日を楽しみにしていた剣吾は、昨夜はなか
なか寝付けずにいた。それでも朝はしっかりと目を覚まし、朝御飯のおにぎりを沢山
たいらげて、張り切って出かけた。混雑していない早朝の道を通っても、目的地の
池に到着するまではかなりの時間がかかる。剣吾は車の中で楽しそうに夏休みに遊
んだことや、一学期の出来事を父親に話した。最近はなかなか早く帰れなくて、剣吾
と一緒に夕御飯を食べられなかった父親も、変わらずに剣吾が楽しそうに毎日を過ご
していたこをを聞いて、嬉しく思った。順調に車は進んでいたが、それでも到着した時に
は、午前九時を少し過ぎていた。到着すると、早速釣竿の準備を手際よく始め、魚釣り
を開始した。穴場というだけあって、次々に魚が二人の餌に食いついた。途中で母親が
用意してくれたお弁当を美味しそうに食べた。時間が午後一時くらいになったときだった。
「さて、そろそろ帰るか剣吾」
父親が剣吾に言った。
「えっ！だってまだ昼過ぎくらいだよ父ちゃん」
息子の剣吾は、少し不思議そうに言った。
「まあな、でも帰りは多分渋滞するんだよ、だから少し早目に帰ろうと思ってな、父ちゃ
ん明日も朝から仕事があるから」
「そっか・・・・分かったよ父ちゃん」
「もう少ししたら連休がとれるから、そのときはキャンプにでも行こうな」
「本当！父ちゃん」
「オウ、男に二言はないぜ」
「やったー」
剣吾は大喜びだった。
「さて、じゃあ釣竿を片付けて帰る準備するか」
「うん」
二人は釣竿を片付けて車に乗り込んだ。父親の予想通り、帰りの道は多くの
車で渋滞していた。
「あちゃ～、やっぱり渋滞したか」
「どれくらいで家に着きそうなの父ちゃん」
「そうだな～・・・まあ五時前には着くと思うけどな」
「そんなにかかるの？」
「まあな、この時期は特に混むんだよ」
暫くはゆっくりでも車は流れていたが、徐々に車が増えだし、動きが止まることが多く
なってきた。助手席に座っていた剣吾は、遊び疲れと、寝不足で寝てしまっていた。
一時間ほど車があまり動かない状態だったが、少しずつまた動くようになってきた。最
大の渋滞ポイントは越えたようだ。
「ん・・・んん・・・父ちゃん・・」
「お、剣吾目を覚ましたか、やっと一番やっかいなところを過ぎたぞ」
「父ちゃん・・・ションベン」
剣吾が目をこすりながら言った。
「げっ！本当か剣吾」
「うん・・・・トイレない？」
剣吾は少し寝ぼけていた。
「サービスエリアは少し前に通り過ぎちまったし・・・もう少し我慢出来るか？」
「うん・・・多分」
「そうか、よし」
車はゆっくりながらも流れている。これならなんとかなりそうだ。
「んん・・・喉渇いた」
まだ少し寝ぼけている剣吾は、水筒を掴むと残っていたお茶を飲み始めた。
「おい剣吾、お前ションベンしたいのにお茶なんか飲んで大丈夫なのか？」
「え・・・ん・・・・ああっ！」
ようやく意識がはっきりした剣吾・・・しかし少し遅かったようだ、コップ一杯分
くらいのお茶を飲んでしまった。意識がはっきりした剣吾は、強く尿意を感じる
ようになってしまった。
「父ちゃん・・オイラやばいかも・・」
「げっ、もうちょっと我慢しろ」
「うん・・・・オイラ頑張る」
しかし、その返事はあまり力強いものではなかった。
なんとか流れていた車の流れが、再び流れにくくなってきた。
「くそー、最大のポイントは越えたのになー」
夏休みの為か、普段よりも車が多く、流れが悪い。その後も車の流れは良くならずに
いた。
「と、父ちゃん・・・オイラ・・・もうダメかも」
「もう少し頑張れ剣吾、あと少しでサービスエリアだ」
「でも・・」
「剣吾、男には耐えなければならないときが人生には何度もある、今がその時だ」
「父ちゃん・・・」
剣吾は力強い父親の言葉に少し感動して父親の方を見た。しかし、父親の言葉
は、本来こういう場面で使う言葉ではないのだが、単純に剣吾は感動したのだった。
しかし、父の力強い言葉も、剣吾の小さなダムを支え続けることは出来そうにない。
剣吾は顔を青くしながら両手でしっかりとその小さな一物を握り締め、必死に尿意を
耐えていた。刻一刻と剣吾のダムに蓄えられている水は水門をこじ開けようとしてい
る。もうあまり猶予はない。水門に僅かなヒビでも入れば、そこから一気に大量の
水が溢れ出すことになる。そうなってしまうと、剣吾は今時珍しい短い半ズボンを履いて
いる、パンツはブリーフなので、トランクス等よりは、水分を吸い取ってくれるだろう。しか
し、ズボンがオシッコを受け止めてくれる面積は普通のズボンよりも少ない。その為剣吾
が座っている車のシートはビショビショニなってしまうだろう。それを阻止するべく剣吾
はダムの決壊を必死で堪え続けている。しかし無情にサービスエリアを前にして再び
車は動きを止めてしまった。
「と・・父ちゃん・・・・」
弱々しい声で剣吾が父親を呼んだ。
「どうした、もう限界か、漏れそうか？」
「うん、オイラ、もう無理みたい・・・」
「こうなったら仕方ない、剣吾、お前車降りてションベンしてこい」
もう剣吾の我慢は限界にきている、車はほとんど動かない現状なら、外に出ても大丈夫だ
と父親は判断した。
「う・・・うん」
剣吾は左手でしっかりと一物を握り、右手でシートベルトを外すと体を左側に向けてドアを
開けた。左足を最初に車の外に出し、ゆっくりと体を車の外に出した。左手はしっかりと
一物を握っているので、右手でドアを閉めた。ドアを閉めるとすぐに右手を左手の上に被せ、
両手でしっかりと一物を握り締めた。限界寸前で、衝撃を膀胱に与えてしまえば一瞬でダム
が決壊してしまう危険がある為、剣吾はゆっくりと一歩ずつ路肩のフェンスの方へと歩き出
した。前かがみになって両手でしっかりと一物を握りしめているその様は、正に子供がオシ
ッコを我慢している姿そのものだった。
フェンスまであとほんの二メートルくらいのところだった。
ププーッ
「わっ！」
どこかの車がクラクションを鳴らしたようだ。そのクラクションは剣吾に向けてのものでは
なかったのだが、驚いた剣吾は、弾みでダムを少し決壊させてしまった。
「やべっ、ちびった」
ほんの僅かでも一度決壊させてしまったダムは、もうその大量の水を抑えておくことは
出来ない。すぐに次の水流がダムの出口に流れ出す。必死に抵抗を試みるが、少しまた
少しと水は溢れ出している。
路肩のフェンスまでたどり着く前に、剣吾は半ズボンの右側の裾を引っ張り上げて、小振
りの可愛い一物を摘んで外に出した。
その瞬間・・・というよりは既に少しずつ流れ出してはいたが、一気にオシッコがフェンスに
たたきつけられた。
シャアアアアアアアアアアア
フェンスにオシッコが当たる音から、水流の力強さが分かる。
「ふぅー」
剣吾の口からなんとも言えない声が漏れた。
「あぶねー、もう少しで全部漏らすところだった」
幸いにも漏れ出たオシッコの量は少なく、被害は剣吾のブリーフがなんとか受け止めて
くれた。剣吾の小さな膀胱一杯に溜め込まれたオシッコはなかなか終わらなかった。
当然周りの車からも見られているが、剣吾は全然そういうのは気にしない。
ようやく長い放水が終了し、ピュッピュッと最後に残ったオシッコも出し切った。
可愛い一物をプルプルと振って滴を飛ばし、一物をしまった。剣吾の目の前には、変色した
コンクリートのフェンスと、フェンスの下には長い川が出来ていた。
すっきりした剣吾は、走って父親の車へと戻っていった。