冒頭挨拶
「こんにちは、光希だ」
「守です」
「よう、剣吾だぞ」
「今回の主役は、どうやらオレらしい」
「まあ、たまには光希にも主役を譲ってやるか」
「光希も剣吾もいいよね、僕は相変わらずリクエストも無いし
主役の話も最近は全然無いよ」
「守は真面目だけど地味だからな、オイラみたいに可愛くて人気者
だったら、出番も増えるのに」
「そうだね、剣吾人気あるもんね」
「オウ、エッヘン」
「別に言うほど人気があるわけじゃないだろ」
「あ、ああ、なんだよ光希、オイラが人気者だからひがんでるな」
「別に・・・・・・・」
「そうだ、光希もオイラみたいな格好して、オレじゃなくてオイラって言って
みたらどうだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
剣吾「ん?どうした二人とも」
「プッ、フハハ、相変わらずお前は面白い奴だな」
「ほんと、光希が剣吾みたいな格好してるところなんて、想像つかないね」
「え、オイラは本気だぞ」
「せっかくだけど、やめとくよ」
「そうか」
「オレは人気者にならなくていいよ、1番は剣吾だよ」
「うん、そうだよ」
「まあね、オイラ可愛いし」
「こいつのこういう前向きなところは見習いたいもんだ」
「まったく」
「ん?そうだ、そんなことより早く話に入らないと」
「そうだな、じゃあ」
「本編のスタートです」
500円玉の行方は
それは、とても寒い冬の出来事でした。6時間目の授業は体育で、サッカーだった。
光希達の学校は、真冬の外での体育では上はジャージを着ることが許されているが
下は半ズボンだじゃないと駄目だった。剣吾に至っては、体操服も普段着も同じような
ものだった。むしろ体操服の方が、タンクトップではなく半そでなので、若干厚着となって
いた。いつもの様にホームルーム終了後に待ち合わせをし、3人揃っての下校が始まっ
た。
「ヘッ クシ」
「ハッ クシ」
「なんだお前達、このくらいの寒さで情けな・・・・ブアックシュン」
「へへへ、オイラもくしゃみ出ちった」
「今日は凄く寒いね」
守が両手を擦り合わせながら言った。
「天気予報だと、明日まではこの寒さ続くらしいぞ」
同じ様に手を擦り合わせながら光希が言った。
「いいじゃん、子供は風の子だぞ」
「剣吾、その言葉はもう死語だよ」
「四五?四五ってなんだ?」
「死語って言うのは、今は使われなくなった言葉だよ」
「え、子供は風の子って、もう言わないのか?」
「最近の子供は、真冬に外で遊ぶ奴は少ないからな」
「まったく、近ごろの子供は軟弱になって」
「プッ、剣吾なんだか頑固なおじいちゃんみたいだね」
「そう言えばそうだな、頑固ジジイになれる素質はあるかもな」
「もう、何だよ2人とも・・・・・・・・・あっ」
「どうしたの、剣吾?」
剣吾は、足もとに落ちていた銀色に輝く物を拾い上げた。
「500円玉拾った」
「じゃあ、交番に届け・・・・・」
「ラッキー、今日はついてるぞ」
「駄目だよ、ちゃんと届けないと」
「何だよ守、これはきっと神様がオイラに与えてくれた物なんだ」
「・・・こいつ、目を輝かせながら言ってるよ」
「とにかく交番に届けないと」
「駄目だ、これはオイラのものだ」
二人が数秒揉み合った後だった。
「なら、こうしてやる」
剣吾は、すぐ近くにあった自販機に500円玉を入れ、デタラメにボタンを押した。
ガチャンガチャンガチャンガチャンガチャン、5本のドリンクが出てきた。この自販
機は、今ではかなり珍しい1本100円の自販機だった。その為、よく学校帰りの
中学生や高校生が利用していた。
「これでどうだ、使っちゃったぞ」
「もう、剣吾は」
「ところで、何が出てきたんだ?」
「え~と・・・・・・・」
「KAA(カー)オレンジと無限茶(むげんちゃ)とカポリエスットとファンタジスタ・ピーチと
BBレモン」
「それってひょっとして全部・・・・・・・」
「つめた~いのところのやつだ」
「この寒いのに」
「ほら、守、光希、飲めよ」
剣吾は、光希と守に1本ずつドリンクを渡した。
「このクソ寒いのにか?」
「僕も、遠慮しとくよ」
「情けない奴らだ、オイラならこんなの簡単に飲めるぞ」
「ほほ~、じゃあ残った3本飲んでみろよ」
「うっ」
「もし飲めたら、オレ達も飲むよ、なあ守」
光希は、ちょっと意地悪く言ってみた。
「ええっ、もう、しょうがないな」
「ようし、見てろよ」
パキッ!!剣吾はまずKAAのオレンジを飲み始めた。
「ゴキュゴキュゴキュゴキュ・・・・・・・・・・プハー」
「・・・・・こいつ、一気飲みしたぞ」
「・・・・・・・・凄いね・・・・・・・・」
「よし、次」
続いてファンタジスタ・ピーチとカポリエスっとを、少し時間が掛かったが、飲み干した。
「・・の、飲みきったぞこいつ」
「うん」
二人はやや呆れながら、剣吾を見ていた。
「さあ、お前達も飲めよ、ゲフッ」
「仕方ないな、剣吾の努力を認めるよ」
二人は寒い中、冷たいドリンクをなんとか飲みきった。
「よし、ちゃんと飲んだな、美味かったか?」
「寒くて、あんまり分からなかった」
「僕も」
「しょうがないな~」
そう言いながら、剣吾は空になった空き缶5つを持って、自販機の横のゴミ箱に捨てに
行った。
「あいつネコババはするくせに、ゴミのポイ捨てとか絶対にしないんだよな」
「そういうところは真面目なんだよね~」
剣吾がゴミを捨てて戻って来た。
「なあ剣吾、お前ゴミのポイ捨てとかしたことあるか?」
「・・?ないけど」
「ふふ、偉いね剣吾」
「何言ってるんだよ、1年生のときに先生から習わなかったか?ゴミをその辺に捨てたら
いけませんって」
「・・・・500円玉はネコババしていいのかよ」
「だって、父ちゃんがさ、小銭は届けてもどうせ持主は現れないから神様の贈り物
として受け取っていいって言ってたぞ、父ちゃんが言うんだから間違いない」
「こいつは純粋なんだかバカなんだか」
「でもそういうところは剣吾らしいよ」
「??」
三人は、冷たいドリンクのせいで唇の震えが暫く止まらなかった。
「あ、雪だ」
「また振り出したな、明日積もるかもな」
前日の夜から雪が降り始めたが、雪遊びが出来るほどは積もらなかった。
「積もったら雪合戦し・・・・・・」
「どうしたの?」
「・・・オイラ、ションベン」
そう言うと剣吾は、すぐ近くの塀に小走りで向かった。塀の前に立つと、立ちションの
態勢に入った。だが・・・・・・・
「くそっ、チ○チンが出てこない」
剣吾の小さなチ○チンは、寒さのせいでいつも以上に小さくなっていた。
「くそ、よっ、よっと、早くしないと出ちゃう・・・・・えいっと」
「町中での立ちションもOKなんだな」
ジョジョジョジョジョジョジョジョー
剣吾の足元にうっすら積もっていた真っ白な雪が、すこしずつ黄色く染まっていった。
{ブルルッ}「はー、でるでるー」
先程のんだ3本のドリンクは、剣吾の、寒さでいつも以上に小さくなったチンチンから
勢いよく放出されていった。長い時間かけて、剣吾は溜まったオシッコを全部出し切
った。剣吾はスッキリした顔で戻って来た。
「わりーわりー、あースッキリした」
「お前さ、あんなところで立ちションして恥ずかしくないのか?」
「だってさー、漏れそうだったし、漏らしちゃうよりいいだろ?」
「そうかもしれないけど、僕は人通りのあるところでオシッコなんて出来ないよ」
「オレも無理、恥ずかしいし」
「なんだよ2人も、かっこつけちゃって」
このとき光希は、まさか自分がこの後に体験することになる尿意との闘いの事など、全く
考えていなかったのだった。
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