じていた。ほんの10分ほど歩いた時には、周りは沢山の木々に覆われていた。
「どうだ、都会にはこんな場所ないだろ?」
「そんなことないよ、オイラが住んでる所にだって、こんな山はあるぞ」
「そっか、でもこんなのはいないんじゃないのか?」
そう言って太一は周りの木々を片っ端からゆすり始めた。3本目のクヌギの木を
ゆすると、上から何かが落ちてきた、カブトムシだった。
「うわ~、すげ~」
太一「どうやらカブトムシはいないみたいだな」
「うん、オイラカブトムシなんてデパートでしか見たことないよ!」
剣進は少し興奮気味に答えた。
「じゃあ、剣進が帰る日の朝にカブトムシ届けてやるよ」
「ほんと?じゃあ、オイラの友達の分も貰えるかな?」
「ああ、いいぜ、何人だ?」
「えっと、4人」
「分かった、じゃあ行こうか」
二人は再び歩き始めた。剣進はいつの間にかわくわくしながら太一について行っていた。
それから30分近く歩き続けた。
「太一ー、まだー?」
「おう、もう少しだがんばれ」
いつも元気な剣進でも、さすがにバテてきていた。
「着いたぜ」
剣進の目の前には、上には広い青空、下の方には村が見渡せた。そしてそのすぐ
近くにはとても大きな木があった。その木は剣進がこれまで見たことのあるどの木よ
りも大きかった。

「どうだ、すごいだろ?」
「うん・・・・・・・すごい」
剣進は目の前に広がる景色と、その大きな存在感の木に感動していた。
「オレがここに連れてくる奴は、お前が多分最後だよ」
剣進「どういうことだ?」
「もう少ししたらここには来られなくなる・・・」
「え?」
「実は、ここにダムを造る計画があるんだ」
「ダム!」
「ああ、オレの村はもう人があまり住んでいないし、ここにダムが出来れば多くの人が
喜ぶんだと・・・・村の奴らも仕方ないって思ってるみたいだし・・・・」
「ここがなくなっちゃうのか・・・・・」
「まあ、建設予定ではこの場所は大丈夫らしいけど、村からこの場所に続く道は、多分ダム
の底だろうな・・・・」
「そうなんだ・・・」
剣進と太一は少しの間、目の前に広がる大空と、眼下に見渡せる村を眺めていた。
「悪りー、こんな話しちまって、せっかくここに来てくれたんだ、もっと楽しんでもらわ
ないとな、魚釣りにでも行くか」
剣進「うん」
太一「ここからすぐ近くによく釣れる川があるんだぜ」
2人は魚釣りをする為に、川に向かって歩き出した。その場所は自然番組に出てくる様な
綺麗な川だった。澄んだ水から泳いでいる魚を見ることが出来た。夕方まで2人は魚釣りを
した。