アニメ「ロミオの青い空」に
アンジェレッタ・モントバーニという1人の少女が登場します。
彼女は生まれながらの持病を抱えた、体が弱いながらも優しい心を持つ少女です。

貧しい農家出身の主人公のロミオは人身売買で煙突掃除夫として売られ、
アンジェレッタ以外の人間からは全く人間らしい扱いを受けていませんでした。
だから、ロミオとアンジェレッタが心を交わし絆を深める場面に、
ぼくは心を大きく打たれます。

アンジェレッタは物語の中盤で、医学が進んだパリで治療に専念するためと、
本作の舞台であるミラノから去って物語から退場します。
そこから先のお話には一切登場せず、
わずかに「アンジェレッタはパリで静養していますよ」と
彼女の祖母のイザベラの科白で言及されるのみです。

ロミオファンの皆様ならご存知だと思いますが、
本作の脚本家である島田満先生は、ファンブックやインタビューなどで、
「アンジェレッタはパリで静養を続けるも、18歳で亡くなってしまう」
という、いわゆる「隠し設定」について述べていました。
ぼくの手元にある脚本集でも、
最終回で亡くなったアンジェレッタの写真を
イザベラが眺めるという、本編ではカットされた描写が書かれています。

これについて、ぼくは
「島田先生はそう言ってるのかもしれないけど、
作品は読者や視聴者に届いた時点でもう作者の手を離れているわけだし、
作品で直接描かれていないことを、島田先生が言ってるからって
すべて受け入れる必要はないよね。アンジェレッタが無事に病気を治して
生きているって思っていてもそれは視聴者の自由だよね。」
と思っていました。

ところが、昨年、ロミオの青い空放送20週年記念イベントに参加して、
直接島田先生のお話を伺って考えが変わりました。
「ロミオはアルフレドの死や、本編が終わった後もアンジェレッタの死など、
多くの苦難に次々と直面していきます。
悲しいけれど、愛する人との別れという悲しみは生きていく上で避けられないことです。
苦難のなかでも人生を生きることを描いたこの作品で、
そこはしっかりと描かなければならないことだと私は考えていました」
と島田先生がアルフレドやアンジェレッタ、
ロミオの心に大きな暖かな光を当てた人たちの死について語ってくださいました。

(1年以上前のことを記憶を元にしているので、かなり怪しい部分が多いと思います、
ぼくの変な主観がかかっていたらそれは全責任はぼくにあります。)

それを聞いた瞬間、ぼくは、放送から20年経って、ようやく、
アンジェレッタ・モントバーニという1人の少女の死を受け入れることが出来たのです。
生きることは辛いことの連続だけど、それでも人は生きていかなければならない。
ときとして、自分を唯一人間らしく扱ってくれた天使のような女の子の死でさえも
乗り越えなければならない、と。




……アニメの登場人物一人の死を受け入れるのに20年かかるってどんだけこじらせてんだよ、
とは思うのですが、それだけぼくにとってはロミオの青い空、
そしてこの作品の登場人物であるロミオやアルフレド、アンジェレッタ、ビアンカの存在は
とても大きなものだったのです。
あのアニメ、見たら確実に泣いちゃうので、絶対に人と一緒に見られないと思ってますし。

結構たまたま世界名作劇場系のアニメの話題が連続してますけど、
いつもそんなアニメばっかり見てるわけじゃなく、
お馬鹿なアニメもたくさん見てるので、そういう品が良いアニメ選り好んで見てるわけじゃないですよ、念のため。

ロミオの青い空は20世紀最高の激アツホモアニメです(断言)。
あーあ、今までまじめに語ってきたことこれで全部台無しだよ。

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