四月の永い夢
「モスクワ国際映画祭」にて「国際映画批評家連盟賞」と「ロシア批評家連盟特別表彰」の2冠達成。
監督は詩人から転向した中川龍太郎。
前情報だけでも 難解な文学作品の匂いが漂ってきて 見るには少し迷う。
しかし 主演 朝倉あき・・・たしか 下町ロケットで女性エンジニア役で出ている。
悲壮な表情から 一気に変わる笑顔が印象的な女優。その名前に釣られ鑑賞。
3年前 恋人の死から教師をやめ 蕎麦屋でアルバイトをしている主人公 滝本初見 27歳。
ファーストシーン。桜と菜の花の中でたたずむ喪服姿の初見。
モノローグで 心が真っ白になったままの姿が描き出される。
前半は 喪失感の中でも穏やかに過ごしていた主人公の日常が徐々に動き出す様。
始まりは 恋人の母親からの手紙。息子のPCに初見宛のファイルがあったとの内容。
蕎麦屋の閉店。急に空いた時間。
まだ貯金はあるのでしょう。就職活動はしない。友人からの臨時教師紹介も積極的ではない。
そして 初見に恋する青年。手ぬぐい染工場に勤める志熊 藤太郎(三浦貴大)とのふれあい。
偶然再会し 初見に助けを求める DV被害の元教え子 楓。
前半での見せ場は 花火大会の後 志熊に手ぬぐい染め工場を案内され帰るシーン。
軽快な音楽が流れ 高揚した気分で歩いていく初見。
しかし突然 ストップし曇る表情。喪失感以外の存在を感じさせる。
後半に入り 志熊の告白。迷う表情の初見。
しかし恋人の話に及び 一人にさせて欲しいとシャッターを下ろす。
前半に引き続き 何か隠されたものを感じさせるシーン。
終盤は 恋人の実家を訪れ 温かく迎えられる。
そしてクライマックス。元恋人の母親とアルバムを見ながら話している途中 初身は突然謝る。
亡くなる4ヶ月前に別れていたこと。今まで誰にも言えなかったこと。
そこにあるのは もしかしたら 元恋人の自死を止められなった罪悪感なのでしょうか。
その後 明かされていく恋人の最後の手紙。「自分を忘れて欲しい・・・」
そして 今の初見からの返信。
「忘れて欲しい」というのは「いつまでも覚えてて欲しい」の裏返し。あなたのそんな部分が嫌いでした。
と言うことは 恋人が忘れてしまうことへの申し訳なさ 呪縛だったのでしょうか。
ラストシーンは駅の食堂で流れてくるラジオ。投書リクエストは 告白した志熊からのもの。
もう一度会いたいという言葉のあとに 好きな曲が流れ出し 初見の顔が笑顔にかわる。
無駄になりそうなセリフや 背景説明がなく やはり少し難解な作品でした。
恋人の自死原因 初見が感じていた恋人への感情 想像で補わなければならない内容でした。
ただ それらをふくめても ラストの初見の笑顔が全ての印象を変えてしまいます。
朝倉あきの笑顔は最高です。


