「夏のマジックなんかに頼るんじゃなく、わたしたちは狂い咲くところを見せることはできたかな」
(早崎友理(ASTROMATE))
夏はアイドルにとって特別な季節だ。何をしてもそれなりの形になり、汗と共に思い出となる。
夏の前に配信ライブという不本意な形にて解散した前世を思えば、たとえ主要なフェスに出られない裏街道の夏でも、その代わりにヲタクをしていてもなかなかご縁もないようなステージに出たり、なにかしらの仕掛けをしてくれている、と思える今は幸せなのだと思う。
ちょうどこれを書いている今も、ひとさいはデビューから半年を祝うとして、24時間連続での配信をツイキャスにて行っている。今はメンバーの一人、榎本雅(いつも「みーあん」としか書かれないものだから、たまにフルネームを見ても「みーあん」と一致せず、この人は誰だろう、となることがある)が、メイド服と猫耳、いつものふにゃふにゃ声で配信しながら、同じくメンバーの望月さあや(このブログでわざわざフルネームで書くこともほとんどないよね)が前の時間帯の配信で作ったみそ汁を飲んでいる。
のんびりとした時間が流れている。方向性が合っているのか間違っているのか、そもそも何をもって合っているというのかもよくはわからないが、運営がやる気を持って(あるいはメンバーからの発案も多いやもしれないが)何かしらの仕掛けをしていこうという姿勢が見える、それだけでも幸せなのだと思うし、アイドルってこういうものだったね、と思い出してもいる。
一番の山は前回の記事で書いたファーストワンマンであろうが、それ以外にも夏の暑さと熱と吹き抜ける風の中で、きっと彼女たちと僕らの思い出になるであろうイベントが2つあったので、書き残しておく。
ただの個人的な備忘録だ。2022年夏の、僕らの熱さの備忘録。
・第71回 大須夏まつり
もっちゃんと全く同じ時期にかかった流行病のせいで、前日までは自宅幽閉だった。
あまりにも急速に自らの体が鈍る感覚があり、ラジオ体操を毎朝してみるなどしていた。大人になってからは、ラジオ体操って効くよね、などという夏休みの小学生には抱くことのできない感想を持つもので、しかしまあ、焼け石に水というようなもので、そもそも体が鈍るだのなんだの、もともと碌に運動もせず鈍りっぱなしだからそう関係ないかとも思うわけで、
そんな話はまあとにかく、娑婆の空気を吸える初日がこの日で。
単独行で名古屋まで行き、現地に前乗りし名古屋を堪能していたをたくと合流し、早速挨拶がてらに味噌煮込みうどんを食べて遠征の感を醸成、ただ名古屋はもう行き過ぎたくらいに行き過ぎているので、特段に名古屋だからこれが食べたい、というのもない。
強いて言えば僕にとっては食べたいのが味噌煮込みうどんくらいであり、もう昼前にはつまり僕としての名古屋遠征は達成していた。
まさしく名前の通り、大須の祭りの一環としての参加。
3ステージもあり、ただしすべて出番10分、なおかつひとさいを呼んだのが地元の老舗ローカルアイドル・OS☆Uであり、当日のタイムテーブルはすべてのステージでその妹分・OS☆K(20分)とOS☆U(30分)に挟まれるという、アウェイゲームもここに極まれり、というイベント。すべて屋外。
をたくとしての感性からすれば、どう考えても楽しくないわけがないバカイベント(誉めてもいるし、貶してもいる)だった。
早めに会場付近に行き、たいしてをたくがまだ来ていないのを横目に、仮装パレードなどを見物して、あまりに暑いので腹も減っていないのに近くの串カツ屋に逃げ込んだ。
のんびり賽を振り、その結果の酒を得て、のんびり、のんびりと呑んでいた。夏の昼下がりだった。気負いもなく、過度の高揚もなく、ただ、ぼんやりとゆっくりとしていた。
その結果、最初のステージに戻るとすっかり椅子も整備されたうえで椅子が埋まっており、後方立ち見、無性に太陽の光が強く、それはそれは見事に夏だった。
10分を少々超えるくらいにしっかりひとさいもやっていた。夏だった記憶しかない。
をたくが一人、会場を出るときからふらふらしていて、次第にそのふらふらが大きくなって、とりあえず道端で横にさせて、その後コンビニまでなんとか持っていき、そのまま特典会会場までまたなんとか持って行った上で横にさせ。
うわごとのように推しへの愛を口にしていた。
特典会はずいぶんな人の多さだった。初回特典というのはなんだかんだ、こういうような機会には効力を発揮する者なのだと思うし、100人の中から1人でも2人でも、今後につながればいいと思う。
ふらふらの人に気が行っていたから、そんなに特典会もいかなかったのだが、全てが終わった後にチェキを眺めてみたら、もっちゃんもずいぶんいい顔をしていた。
2つ目のステージは商店街の一角、ステージはフラットであり黒山の人だかり、まあ、ほとんど見えなかった。
3つ目もまたフラットだったが、こちらは到着した時にはさほど人がおらず、そのおかげでなんとか見ることはできた。
ただ、ステージが予定通り始まらず、祭りのスタッフもひとさいの一つ前がこない、と困惑していると、女の子たちがスピーカーなどの機材を運んできて、セッティングを始めた。OS☆Kの子たちだった。
夕暮れとはいえまだまだ熱気の残る空気の中、淡々と少女たちがセッティングをしていく。何とも言えない緩さ。
締めはLevel.1よりは新しい世界へのほうがいいなと思った。
こんな熱さにほだされる屋外ステージなんてものは、どう転がったって楽しいものである。
居酒屋でをたくと呑み、そのまま新幹線でも呑んでいた。真面目な話を、どうでもいい話をした。をたくの呑みなんてのはいつだってそんなものである。
僕らのTIFはここにあったのだ。
・神宮外苑花火大会
大須夏まつりの項を書いてからこの項を書き始めるまで1日が経っている。ひとさい24時間配信は終わっている。メンバーもなぜかお付き合いしてしまったをたくもお疲れ様である。
どうでもいい話をしたり、深い話をしたり、ゲームをしたり、どこかに電話?をかけたり?(この時間帯はあんまり見られてないからよくわからなかったのだけれど)、半年祝いのケーキを食べたり、まあゆるゆると楽しくのんびりやったようである。
どうも今回の企画、メンバーと運営間での、何かのノルマを達成できなかったことによるものだったらしいが、こちら側としては全くどんな形で見てもそれなりに楽しく、ウェルカムな企画だった。
ずいぶんもっちゃん、立派になっちまったなあ、そんな感である。
ひとさいに入ったもっちゃんには、なんだかとても安心している。
閑話休題。
神宮外苑花火大会。
なぜここに出演することができたのか、なぜ滑り込めたのか、よくわからない。
流行りものには全く疎くなってしまった僕はよくわからないのだけれど、今回ひとさいが出演した軟式球場のライブに、共に出演していた方々は誰もがそれなりに名の売れている人だと聞いた。
予想の斜め上すぎる発表に、まずは困惑し、そして疑い、花火大会の公式サイトを見て、どうも夢ではないようだ、しかしこれいかに、あれこれ思索を巡らせる前にひとまずチケットを確保していた。誰と一緒に行くかの当てもないまま4枚購入し、そしてまだその時は他の予定を飛ばしてひとさいに来るほどハマっていなかったはずの人からチケットをくれと言われ、あと2枚はパッセン(PASSPO☆のをたくです、ってもう注釈入れないといかんのだろうか)を呼んで、早々に埋めてしまった。
ワンマンの勢いをかってそのまま行くとはいえ、全くよくわからぬ大舞台だった。
メンバーも緊張していたのかどうなのか。僕は単に楽しみだった。不安は天気だけだった。
土曜に開催、ただし天候不順(小雨決行)であれば翌日に順延、そんな予定だったが、僕は日曜の仕事を回避できずにいた。だから、天気予報のサイトを2週間前からずっと見ていたのだが、一日に100ミリ以上降るような予報から晴れマークまで全くの日替わり、予断を許さない状況だった。
当日も小雨がぱらつく天候だった。涼しいのは救いだったが。
カンビン、持ち込み禁止。だからペットボトルに美味しい水を入れて持ってきた。しゅわしゅわするものと氷とクーラーバッグを直前に買った。全く何をしに来ているのだろう。
そんなに頑張って並ぶ、などという気もなく、開場前の程よい時間に会場に着くと、すでにそこそこの人数が並んでいた。小雨がやはりぱらつき、浴衣姿の人が多く、待っていると足をアリがよじ登ってきた。アウェイゲームの開幕だった。
時間になり、たいして待たされもせず中に入ると、指定されたブロックは運よく最前ど真ん中だった。主催から渡された1人用のシートを敷き、荷を下ろすと早々にビールを買いに行き、1杯入れる。
時間通りにライブが始まり、オープニングアクト(ひとさいより前にそんな存在が出るとは思っておらず、ひとさいがオープニングアクトなのでは、などと思っていた)が我々同様、いや、さらなるアウェイゲームだったかもしれない、そんな中で熱唱し、そしてひとさいの出番となり、いつものSEが鳴り響く。
随分大きなステージで、とんでもなく大きな客席で、小雨が降る中、確かにメンバーがステージ上に出てくる。立ち上がってはいかんとは聞いてない、立つべ立つべ、そうやって数人で立ち上がる。
表情が細かに見えるほどに近いわけではなかったが、特段何かおかしな様子もなく、まあ問題なくいつも通りやれるし、楽しめるだろうとは思った。
24時間配信でこのときのことをもっちゃんが語っていた。曰く、手が震えていた、ただその手の震えを、おお、身体は緊張しているのか、そう冷静に観察する自分がいた、と。
僕は今まで、大きな舞台、アウェイゲームではそれこそはちきれんばかりの気合を入れてテンションを上げて、まさしくやるかやられるか、そんな気持ちで臨むことが多かったが、この日は単に楽しみというか、日本でも有数の規模で行われる、あの名にし聞く神宮外苑花火大会、それを見られる、それを見に来た、それを楽しみに来ただけの単なる観客の気持ちだった。
まったくいつも通りに、でも広いステージといつもよりあまりに多い、なおかつ無関心な層が多い客を前に、なんだか楽しそうにメンバーはやっていたし、僕らは、少なくとも僕は特段いつもと変わらず、ただ跳ねるときだけはいつもより悪い足場に気を付けて、気持ちよく楽しませてもらった。
曇天、小雨の夏の1ページ。
特典会は時間が進むに従い、おそらくはひとさいの後に出た男性アイドルのファンが中心だったのか、浴衣姿で着飾った若い女性を中心に、加速度的に列が増えて行った。そのうちの数人と僕も話をした。男性アイドルは最近は特典会もなく、だからひとさいの特典会に来てみた、そんなことを言っていた。
男性アイドルに行く女性が女性アイドルに通うようになる、そんなケースがそう多くあるとももちろん思ってはいない、実際逆パターンでお前は行くのか、と言われたら、そもそも無料だろうが特典会にはいかない、だからこの日に来た新規の方がそうたくさんその後につながるとも思わないが、こんなものはいわば砂金を探す作業、この日来てくれた人のうち1人でも2人でも今後につながればそれでいい。しかも、この日の新規と思しき方々には、もう新規特典だけではなくお金を出して券を買っている人もいた。
そんな光景ならそれでハッピーじゃないか。お祭りなのだ、楽しければよいのだ。
メンバーはあまりに多くひっきりなしに来る客に、何か疲れてそうな表情の子もいたが、まあ全体的には楽しそうにやっていた。
もっちゃんは鼻の下に汗を浮かべながら、私は大きいステージが好きだと笑顔を輝かせていた。今日が涼しくて本当に良かったとも言っていた。そういえば今年の夏は流行病はあれど、暑さ由来の体調不良というのはないままここまで来られている気がする。
日が暮れるまで、たっぷりと特典会を行っていた。そのままをたくたちで乾杯(と言っても、近くの出店のビールが尽きてしまい、大半の者は手に何も持たず、或いは持参したソフトドリンクでだったが)を行って、たいして待たずに花火が打ちあがり始めた。
そして僕ら4人はのんびりと、前述した美味しい水で花火見物を決め込んだ。酔いのせいか、ひとさいのおかげか、素晴らしくきれいに見えて、とても楽しく、それは立派な名にし聞く神宮外苑花火大会の見物であり、夏の1ページだった。
終わった後もその4人で居酒屋に行き、楽しく呑んだのだが、居酒屋の記憶は大半が抜け落ちている。僕は気持ちよく酔っていたらしい。
冗長な備忘録である。
昨日の配信ではそう重大でもない(?)重大発表として、新曲の発表、そして「あっち向いて恋!!」のMV解禁がコールされた。
曲も増えていき、MVも増えていく。表の王道でなくても、良い思い出の残せる、ひょっとしたら何かしらの傷跡もつけられたかもしれないイベントにも出演し、配信等の企画も行う。
その施策が当たるのか外れるのか、良い方向を向いているのかどうか、そんなものはわからなくても、ただひとさいが何かをやって、よじ登っていこうとしている、そうやってしっかりもがいている、メンバーも運営もちゃんとやる気を出して前に踏み出そうとし続けている、そんなことは感じている。
当たり前のことなのかもしれない。
当たり前がないところが多いことを知っている。当たり前がないところでやって来たこともある。
だからこの当たり前が、イベントで楽しい、配信で面白い、MVでかわいい、そんな当たり前が今は嬉しいのだ。
そして夏は終わらない。
望月さあや生誕祭まで終わらない。
3年ぶりの生誕祭、史上初の単独生誕祭。
もっちゃんの言葉を借りれば、「いつも応援してくれているみんな、わたしを少しでも知ってくれてる方に たくさん感謝のきもちを伝えられる日にしたいです^_^」。
きっと、ここまでの望月さあやの歩みが正しかったことを証明してくれるだろうし、たくさんのありがとうを伝えてくれると思う。だからこちらもたくさんのありがとうを伝えて、本気でお祝いをしたい。
チケットはこちら。
夏のマジックにだって頼り切ったっていい。盛大に笑顔で夏を終えるのだ。
それまでのあと少しの間、灼熱の夏が続くのだ。