1つ足りない賽は投げられた、の1stワンマンが終わった。
簡単に当日の記録、思ったことを書き残しておく。特段構成も考えないし、深くもならない。
直前の躓きはあれど、無事に1stワンマンを乗り切った。
まず、誰も流行病にかからずワンマンをつぶすことがなかった(そしておそらく神宮外苑花火大会にも出られる)というのは、当たり前のようでいてこのご時勢では大きな話だ。
正直、もっちゃんがかかってしまったとき、全員一気にかかっていればなあ、と思ってしまっていた。高い確率でそう大したことにもならず、ワンマンにはきっちり間に合うタイミングであったからだ。
散発的に感染者が出てしまい、この後の主要イベントが無くなる方がさらにダメージがあったであろう、と思うからだ。
もっとも、この流行病はことアイドルなど、壇上で歌う、踊るという人たちには予後も(まったく人によるのだが)あんまりよいものでもなく、つまり呼吸器の後遺症があることがあるゆえ、特に歌の面で不調をひきずってしまうことがあって、まあつまりよくないらしい。
その面もあって、最後まで悔しさを引きずったのが今回のもっちゃんだった。
まったく、今回の流行病など交通事故みたいなものだから、どうにもならない。ワンマンが無事に(上記の意味ではまったく無事とは言えないにしても)開催されただけでまずは喜ぶべきなのだ。
数か月前に開催がコールされ、しかしそこから当日に向けて特段の仕掛けはなく、当日は新衣装、新曲2曲披露(ただしその前にサブスク解禁)、メンバーも知らない重大発表といった内容。
もっちゃんは数日前からしっかり緊張しているようだった。
前物販の前にヲタク(プレイヤーとちゃんと言おうか)で呑む。ダラダラと過ごす。もちろんピリピリとした空気もなく、和やかな雰囲気で呑みすぎないようにゆっくりと呑む。
前物販。
お盆期間とはいえいちおう平日の夕方、そこまで人がいるわけでもなかった。
無事にフラワースタンドも会場に運び込まれていた。メンバー各色と、さいころを形どったスタンド。
僕はもっちゃんにしか行かなかったが、きっちり顔を引きつらせていた。大舞台前のいつものもっちゃんだ。
これで本番で緊張しすぎて失敗してしまうとか、何か全く普段の彼女が出せないというものではない(結果として、この日の出来に対してもっちゃんは大きな悔しさを抱いたようであるが)のはもうわかっていたし、特段の心配もなかった。
本番。
ソールドアウトという発表はなかったが、それなりに人が入っているようには見えた。このご時勢ではかつてのように真にぎゅうぎゅう、というのは望むべくもないし、そこまで露骨な集客策も何も打っていない中では上々の結果と見えた。
もっとも、今回も某氏のご厚意により前列にいける番号をいただき、最終状態はその位置から見ただけなので、後方がどのような状況だったのかは僕にはわからない。
タイトルの「ひとさいクエスト」らしく、ロールプレイングゲームをかたどり、もっちゃんが渋谷の街中でメンバーたちに会い仲間を増やしていく、という趣の映像から始まった。
僕は個人的な趣味から言えば、ライブは出来るだけ映像もMCも少なく、曲間も出来るだけ短くして多くの曲を詰め込み、ライブ自体で魅せる、という構成が好きなのだが、ことひとさいに関してはそのような期待はハナからしていない(そしてこれは特にネガティブな諦め、ということを意味しない)。
ひとさいは比較的ベーシックなアイドルなのだ。そうであれば、ワンマンではそれに向けて作成した映像も多く流すであろうし、MCもしっかり時間を取って行うであろう。
映像2回(もう1つは「新衣装を獲得するため」としたクイズ&大喜利映像だった)を流し、中間MCいくつかとアンコール後の1人ずつの挨拶、それを除けば変に奇をてらうこともなく、しっかりとライブをしていった。
このあたりのバランスが、上記の通りの趣味をしている僕がここで踏みとどまれる、楽しめるギリギリのところなのだと思う。
勿論、若いころに比べれば年も取り、趣味を押し付けることもなく、それに走りすぎることもなく、許容もするようになった。僕自身の状況からしても、しっかりアイドルに舵を取った中ではちょうどいいのがこのひとさいなのだろう。
最前列、上手側。壇上も当たり前だがよく見えるし、身体を傾ければ客席の半分から前、中央から下手にかけてはよく見えた。
壇上に集中しない、客席の客などを見るのは愚の骨頂、そんなこともかつては思っていたが、壇上に対する集中力がかつてよりは薄れた代わりに、そこまでの尖った思いもなく、何かふんわりとした気持ちで壇上と客席を視界に入れては、各メンバーの色に輝くペンライトが視界に入り、ああ、よかったなあなどと感慨にふけっていた。
各メンバーに担当色を持たせる作り方はここ10年以上の定番である。そういうアイドルであるからには、各色が客席で輝いていてほしい。このご時勢ではコールというのもほとんど聞くこともないが、各色の光、コールはやはりそのメンバーを本気で推す者たちが発してほしい。そう思う。
だから、当たり前のように5色がしっかり点在する客席を見て、ほっとした思いだった。こうでなくては、と安心していた。
そして、その中で、ワンマンライブであるから当たり前なのだが、彼女たちのために作られた空間で彼女たちが、デビュー時よりはだいぶたくましくしっかりした、ここがアイドルデビューだったメンバーに関しては、「アイドル」になった姿で壇上でずっと舞い踊り歌っている、この空間について、ぼんやり幸福を噛みしめていた。
ワンマンが当たり前というところで育ってきて、ワンマンが当たり前でないところもずっと見てきて、その道のりを、そしてもっちゃんの、ひとさいの道のりに思いも馳せ、そのうえで、ぼんやりと、いいなあ、そう思っていた。
もっちゃんが壇上でアイドルをやっている、極論それで幸せだった。
きっともっちゃんに待たされすぎたからなのだと思う。
アストロが終わってからの紆余曲折、ここに至るまでの長い道のり、歌とダンスを見てその上で会って話せる、それが当たり前という環境から長く長く離れていて、一緒に(烏滸がましいが、あえて一緒にと書く)どん底に落とされるような大きな悔しさも味わってきて、それでもこうやってここに這い上がってきて、ここでまた理想を夢を掴むべくもがいて。
その上で辿り着いたこの日だったから、もっちゃんが壇上でアイドルをやっている、それだけで幸せだった。
もっちゃんが壇上でアイドルをやっていれば、それだけで常にいつでも彼女は自らの持てる力の120%を出して、妥協なくやってくれる(そして終わって反省の弁を口にする)、確実にやってくれる、そういう信頼は揺るぎなかったから、安心して幸福を噛みしめていられたのだろうとも思っている。
もっちゃんに対してはそのような意味では、僕は安心してしまっている。
酷くだれることもなく本編をやり切り、アンコールに入り、プレイヤー側で用意したサイリウムも点灯し、そして1人1人のメッセージへ。
れいちゃんは最年少なのだから、アホキャラをしながらしっかりもしていて或いは道化を演じている面もあるかもしれないけれど、そりゃほんと甘えてほしいし、みーあんにはせっかくなれた憧れのアイドルを自分なりのやり方で味わい尽くしてほしいし、みねちゃんがこのチームなら昇っていけると思うならもっともっと良い景色を見せてほしいし僕等もそれを期待しているし出来ると信じている。ともかは、そりゃ歌とダンスに物足りなさを覚えることがないわけもないが、それでも本当にがんばっているはずだから、もっともっと頑張ってほしい。
もっちゃんはやっぱりコロナをひきずっていた。自分が自分のなすべきことをなせているだろうか、そう常に自分を責めている。僕等の知っているもっちゃんは、やっぱりそのもっちゃんのままでここで戦っていた。
自分を責めすぎるなよとも言わない。そうやって自分を責めて、自分を許さないで、プレッシャーをかけて、その反骨心をエンジンにしてどこまでも爆走するのがこの人だ。そんなことはもう何年も見ていく中で、僕もわかっている。
もっちゃんのすべてがわかっているとはもちろん思わないが、少しくらいは嬉しさも悲しさも、喜びも悔しさもわかっているつもりだ。その気持ちをほんの少しでもワリカンできればいい。まあ、勝手にこちらが理解している気になっているだけだろうが。
でももっちゃんはもう一人じゃない。You'll Never Walk Alone.「1人じゃないから」、Level.1のそのパートで君は顔をしかめて泣き出していた。新たな仲間が今はいる。ぶつかることも、思うこともあっても、そう、喧嘩だってできる。喜びも悔しさもワリカン出来る、仲間がいる。
こういう場面で泣くこともまたわかっている。人一倍泣き虫のもっちゃんだ。アイドルなら、こういうシーンで泣き出す、泣いて見せることができるのもまた才能だと思う(だからたかすかはアイドルの才覚があるのだよ)。もっちゃんらしいいちシーンだったと思う。
最後は「エピローグ」で締めた。
それでいい、それでいい、間違いないんだ、羽ばたいて。
終演後の特典会は満員御礼だった。
すっかり緊張から解き放たれて、悔しさを抱えつつ余韻に浸っているもっちゃんがいた。
あなた(もっちゃんは僕のことをあなたなどと言わないが)が来ると脱力する、そう堂々と言い放っては気の抜けた、溶けた笑顔を見せていた。
7年前、僕に同じようにそう言って、僕の前ではふにゃふにゃしながら碌に話もしなかった、ある女の子がいた。そんなシーンは初めてではなかった。長くヲタクをすると、こう、各々のシーンが螺旋階段のように重なっていく。
重大発表は未だに運営公式アカウントから発表していないが、まあいいだろう、2023年3月5日、2ndワンマンライブ@池袋halevutai開催の発表だった。
ASTROMATE時代も含め、もっちゃんはこの会場のキャパでのワンマンをしたことはない。史上最大規模だ。開催まで半年以上、仕掛けをするには十分な時間がある。今回ソールドアウトできなかった彼女たちは、一回りも二回りも大きくならないとこの会場ではソールドアウトもできない。
それでも、僕は悔しいと思った。
もっと大きな会場を押さえてほしいと思ったし、もっと仕掛けてほしかった。
だから、余裕でソールドアウトさせてほしいと思った。そして、次のステップではさらに高い空へはばたけるように。
ひとさいを全肯定もしないが、否定はしない。もっちゃんの(今のところの)アイドルとしての最後の夢であり、僕の(今のところの)ヲタクとしての終着点、墓場であるひとさいには、もっともっと大きくなってほしい。
そしてにっこり笑って最期を迎えたい。
だからもっともっと大きな展開、うねり、夢が欲しい。
来年の3月にはもっと大きな勝負ができますように。もっともっと賽を投げられますように。
個人的には、今、極めてポジティブである。