名古屋は雪が降っていた。吹雪いていた。

FuMA、初の遠征。そして佐藤めり―ハンナ、佐藤はんな、初の遠征。呼ばれたのはでらロック。ある種、宿命。僕の。

久々に夜行バスに揺られて朝にキリンジのエイリアンズを聴き、何度となく入った名古屋駅近くの銭湯に身を浸し、そして終わりに味噌煮込みうどんを食べるには十分な材料だった。名古屋、大阪、そのあたりならだいたいルーティンが出来ている。

 

やっとこさリリースされた新作EP「FuTUNE」を引っ提げてのライブ、まあ、どうだったんでしょうね、初めて見た人の感想なんて知らないけれど。

僕は楽しかったですよ。撮りたいように撮ったし踊りたいように踊ったし光る棒を振りたいように振ったし。いい音が鳴っていてメンバーみんな気持ちよさそうにステージにいた気がしたし。遠征してメンバーみんなで飯を食って大きなイベントにも出てとてもいい経験だったろうし。僕もメンバーともようしゃべった気がしたし。あ、アイリさんは2日間8ラウンドお疲れ様でした。その翌日もライブだったそうですね。もうほんとお疲れ様です。

 

何度も戦える体制になったと思ってきたFuMA(ルナビスナップ)だけれど、まあ今度こそ戦える体制になったろうと思う。そろそろ戦えてくれ。

長い道のりでございました。よく耐えきった佐藤めりさん。とにかく耐えるのだけは本当に得意だからね、さとうさん。耐えてアルカイックスマイルしているのは得意なんだ、ちょっとだけ毒づくのも得意なんだ、この人が今後一人でしっかり生きて行けるのかたまに心配になるんだ、さとうさん。

 

間もなくもちづきもデビューするし、きっとどの程度かはわからないけれど今よりは僕と疎遠になるんだ、FuMAさん。やっとメンバーも安定しそうで音源も出て、これからというところまで1年半弱お付き合いして、このタイミングでとは物好きだね僕。

ならばここで一区切りの代わりに、各メンバーに対する感想でも書き記しておけばいいじゃないか。

こんなことを散々に言いながら、結局そんなに行く頻度が変わらなかったりしたら、それはそれで面白いのだけれど。

 

 

・未知セラン

名は体を表す。未知なる存在、未知セラン。ケセランパサランから生まれました。どういうキャラ設定だ。そのキャラが生きたシーンは見たことがない。Future+UMAに合わせた設定なのだろうか。そのうち生きることを願いたい。

 

酒を愛し露出の多いギャル。ONLYFIVEではスキーウェア姿にセーラーブルマまで(僕は購入していないので、結局どんないでたちだったかは知らない)、攻めることもできる。昔にどこかでアイドルをしていたのだというけれど、どこだかは知らない。調べる気もない。水着姿の写真はお見かけした。

明るい子だと思う。話しやすい子だと思う。思うだけだ。何度も話してはいないから、どういう子だか掴めるまでは話してはいないから、どういう子か、まだそこまで明確なイメージはない。

 

明確なイメージがつかめるまでに通って、それなりに話せるようになって、すぐに疎遠になるというのもいただけないな、そんな思いからあまり気も進まなかった。数回でそれなりに話せるようにというか、最初から話せていたのだから、コミュニケーション能力は高いほうなのだろう…まるで採用試験での学生を評するように語ってしまう。職業病。

 

間違いなくほかのメンバーの誰とも違う個性。ともすればグループを牽引できるくらいにしっかりした人だと思う。しっかりした人なのかどうか、つかめるまでには至らなかったけれど。

遠慮しないで、未知セランを発揮してほしい。控えめで優しい性格の子が多いFuMAだから、スパイスとして効いてほしい。元気印でかき回してほしい。お姉さん(に見えるだけなのかもしれない)として導いてほしい。

そして、やり残したことがあったからまたアイドルになってしまったのだろう。そのやり残しをここで燃やし尽くしてほしい。君もまたアイドルとしてここで満足できるように。

 

・綾瀬アイリ

綾瀬である。

歴戦の兵(つわもの)である。苦労人である。事務所の最古参(と認識しているが、本当かは知らん)。自らが君臨するNEMURIORCAとの兼任で、苗字を得て舞い降りた。

ネムリのアイリはよく知らない。FuMAの綾瀬アイリも、上記未知の人以上によく知らない。輪をかけて話すこともなかった。今まで2度しか話していない。勿論、ちゃんとした彼女のファンほどには彼女のことは掴んでいない。以下は僕の勝手なイメージだ。

 

水のような人。ここまで癖のない踊りをする人は初めて見た、とめりに言わしめる人。

パッと見て、凄みを感じなくて、しかし確かにそつがなく明らかに上手く、いや、上手いのかどうか、主張がなく実にまるで水が如く踊る。

そして接触では初見だろうが何だろうががっちり受け止め、そして気持ちよく返す。不快な気持ちにさせない。これがプロか。地下アイドル職人。

2回では彼女の深淵など何も見えない。経歴からして語れば語るほど面白そう、積み重ねた年輪はいくらでも味わうことも出来ようが、それを味わい尽くす機会は僕には訪れない。

 

FuMAではやりづらさもあるだろう。MC、特典会時の初め終わりの挨拶、仕切りなんてのはいくらでもできる、でもここでは私がやるべきではない。自らを縛ってほかのメンバーを立てている。まだ、鍛えている、というふうでもない。

自分で言うように、自ら望んでここに来たのだとしても、そうでなくここに遣わされたのだとしても、この子がいつか本気を出せるようなFuMAになってほしいし、まずは他のメンバーが彼女に食いつき、絡み、壁を壊し、同じFuMAのメンバーになってほしい。これはまた他のメンバー同士でも同じことが言えるのかもしれないが。一緒に喜び、泣き、眠れない夜を過ごし、壇上で拳を突き上げてほしい。

そして他のメンバーは彼女を利用してほしい。見て、話して、学んで、味わってほしい。生きた教材だ。これだけの経歴を持つアイドル中毒者が、グループに入った僥倖を感じてほしい。切磋琢磨出来るくらいに育った上で、対等の立場で切磋琢磨してほしい。

そのうえで、彼女自身も、FuMAに入ってよかったと思える日が来てほしい。日々ハードワーク、修羅の道の中で、違う発見が出来る日々であってほしい。すでに、楽しんでいるのかもしれないが。

全く、勝手な思いだ。

 

・夢良瀬らむ

まどろむらむさん。だいたい眠そうだし、食べたものの話をする。らむは一体なんでらむだと思っているんだい。

車の中でもめっちゃ食うんすよ、ピザまんとか。これは名古屋まで車を往復させた若きスタッフくんの言葉である。お疲れ様だ。

 

食べるのに細い、薄い。とにかく体が薄い。そしていつも気弱ににこにこ笑っている。

踊りは丁寧に。丁寧すぎるくらいに丁寧に。固めに見える。少し笑えるようになったかもしれない。

「笑えるようになりました!…なってませんか?お母さんに褒められたんです」

基準は相変わらずお母さまである。きっと優しいご家族なのだろう。愛のある家庭で愛されて育った子なのだろう。

 

既に去った方の友人として入ってきて、そんな経緯だから彼女がここを嫌になってしまわないか、折れやしないか、いつも心配ではあるのだが、この間ストレートに聞いたら、「(アイドルは)楽しいですよぉ?」とやっぱり気弱に笑っていた。

 

そろそろアイドルの水にも慣れてきたころだろう。ここからはさらに夢良瀬らむを曝け出していってほしい、或いは構築していってほしい。

例えば彼女はゴスロリ趣味なはずだ。着飾った写真をたくさん載せてみたってよいだろう。ほかに何か趣味嗜好でもあるなら出していけばいいし、何かなりたいアイドル像があるなら、それを表で形作っていけばいい。

そうやって、唯一無二の夢良瀬らむを作り上げていってほしい。きっとその世界に酔うファンだってその時には増えてくるだろう。どういう経緯でも、この世界にやって来た物好きなのだから、まだ人目に触れぬポテンシャルがきっとあるだろう。

創意工夫を凝らして、アイドルを楽しんでいってほしい。良い航海をしていってほしい。

 

・蒼波ユウ

押しも押されもせぬ、エースを務めるボブ。確かな使命感を持ってアイドル道を歩いていく。アイドルは笑うもの、キラキラ輝くもの。そのアイドル観を成就すべく奮闘しながら、「らむちゃんは私が育てる」、同期の面倒も見る。

今年はFuMAの年だよ。そう宣言してそれを成し遂げるべく、力を入れるのはツイキャス(配信)、TikTok、ONLYFIVE。常に発信し続け、捕まえた客が冷めてしまわぬように加熱し続ける。その合間に飛行機や新幹線で通学する。ご立派な学生だ。

こういう真っ直ぐな努力家は僕の好物で、実に感心する日々だ。彼女が饒舌にONLYFIVEで語ってくれた、その物語に酔っているのかもしれない。だから彼女の自信になりたいよ、僕は。

 

そうは言っても、強気でガンガン攻めるとかそういう人ではない。

ステージ上でも降りても、にこにこにやにやしながら、ふわっとした声で語っている。舌足らずというか、なんというか。歌声も女の子らしいウェットでふわっとした声。本人はそれほど好きでもなさそうだが、彼女のキャラでアイドルをやる上では武器だろうと思う。いい声質だ。

 

何度も言っているが、FuMAの浮沈は彼女の両肩にかかっている。控えめなめりとらむを引っ張り、セランを引き出し、アイリに学び。FuMAのかすがいは彼女だと思っている。

まずは自分が見えている道を、真っすぐに、全力で駆け抜けてほしい。自分自身に、自信を持って、確信を持って、走り続けてほしい。そのうち超えるべき壁もなにも見えてくるだろう、そこで悩み、傷つき、血を流し、そしてその壁を乗り越えていって、さらに強く輝いてほしい。

ユウは勇者なのだ。これからいくらでも試練を迎えて、そのたびにレベルアップしていくのだ。

いつか故郷の親御さんに、CDを届けられるように、願っています。

 

・佐藤めり

君はまだアイドルをしている。中毒者といえば、大変な中毒者だろう、アイドル中毒者。

とにかく耐え抜くのは得意なのだ。大変な頑固者なのだ。ASTROMATEを、ルナビスナップを、そうやって耐え抜いてきた。「(みんな辞めてしまって)私が悪い子みたい」

 

相変わらず、感情を爆発させることもない。静かに笑い、静かに嘆息し、静かに毒づいて、静かに一人ビールを呑む。そんなに年中呑むわけでもない。たまにだ。お母様と妹さんと仲がいい。2人なしで生きて行けるのか、不安になる。

彼女なりの野望もある。思いもある。静かに周りの期待などを読み取って、静かに頓挫して、また静かに嘆息していたりもする。ひっそりとプライドもしのばせている。

そしてぼんやりしている。特典会中も少し人が途切れると、どこかに意識を飛ばしている。客が来て、気付かなくて、スタッフに目の前で手をブンと振られて、絵に描いたようにハッと驚いたような表情を浮かべる、そんな光景も目にした。

よく忘れ物もするようだ。たまたまそんな話を聞いたりしただけなので、それが本当によくと言うほどの頻度なのかはわからない。

 

きっと、なりたいアイドル像がある人だ。アイドルに憧れた人だ。その憧れに、ここまでの行程で少しでも近づけたのだろうか。

最近は顔色がいい。ようやく安定したFuMAで、平和に過ごせているからだろうか。しかし彼女が満足できたかと言えば、そんなことはないだろう。まだまだ渇望する栄光がある。静かに渇望し続ける。

 

歌とダンスにもこだわりがある。元々ダンスには多少なりとも腕に覚えがある。望むアイドル像の中に、パフォーマンスについての基準もあるのだろうと思う。そして、かのASTROMATEが残したアイドルだ、そこで鍛えられたパフォーマンスを今に伝えるアイドルだ。どうしても、そのような目で見てしまう。

 

君はまだアイドルをし続ける。まだ渇きが癒えない。癒えない限り、ここに立ち続ける。そうやって立ち続けてきたし、これからも立ち続ける。

その道程にアイドル・佐藤めりが刻まれていく。すっかりパフォーマンス中に笑うことを覚えた、柔らかな佐藤めりが。

僕には君の渇きがいつか癒える日が来るよう、願うことしかできない。

 

 

以上が新生FuMAの5枚羽根だ。今度こそ、飛べるだろう。今度こそ、飛ばなければならない。

見つかるべき人に見つかり、安定した、幸福に満ちた行程を、今度こそ辿ってほしい。佐藤めりをアイドルとして成就させてほしい。

そして佐藤めりに笑っていてほしい。暖かな陽の光の下で、笑っていてほしい。

「愛は祈りだ。僕は祈る。」

(舞城王太郎『好き好き大好き超愛してる。』)