「夏のマジックになんか頼るんじゃなく、私たちは狂い咲くところを見せることはできたかな」

(早崎友理Only Fiveより)

 

狂い咲いて行こう、とはずいぶんな歌詞だ。彼女たちの最後の曲、Our Songの一節。或いは僕等はそこでもう気付いているべきだったのかもしれない。

きゅりは僕への最後のおんりーふぁいぶに、「狂い咲く」の意味をわざわざ辞書から引用して載せていた。その中には、「物事が衰退してゆく中で(中略)異常な盛り上がりを見せること(後略)」ということも書かれている。しかし、この意味で歌ったつもりはないとも言っている。

 

同じネタ元では面白くもないので、手許にある、数百年ぶりに引いた紙の辞書、新明解国語辞典第五版から引用する。

 

「咲く季節でもないのに花が咲くこと。(正統から外れているが、特異な存在として評価される人の意に用いられることもある)」

 

きゅりはその僕宛のおんりーふぁいぶにて、アイドルがいちばん輝く季節は夏だと言い、その前に私たちは狂い咲くことができたか、と問いかけた。菊の季節に桜が満開、は古の悲劇の2冠馬・サクラスターオーだが、そこまで季節は離れていないにしても、彼女たちは実に狂い咲いたものだ、と思う。

そして、現代の正統、からは外れていたのかもしれない。僕にはもはや、現代の正統がわからないが。そんな僕のようなをたくがついていたからこのようなところで終わったのかもしれない。そんなのは思い上がりかもしれない。

どうにしろ、しかし特異な存在としてでも、そう、なんでもよいのだ、とにかく後の世に評価されてほしい。地下アイドル界のワンオブゼムであろうけれど、ひとつ、歌とダンスに拘り、まっすぐ魅せようとし続けたアイドルとして、評価されてほしい。

そんな思いを込めて、ASTROMATEを語る最後の記事である。

 

ラストライブの感想(あるいは僕による僕のためのその時の僕の記録)、そして各メンバーについて、1人ずつ語っていきたい。

言うまでもないが、僕の感想であり、僕の語りだ。彼女たちに触れたをたくたちは、一人一人、自分にとってのラストライブがあり、自分にとっての彼女たちの像があるだろう。それらは語られるべきだ。彼女たちが幕を引いた以上、あとは僕たちがいかに語り継いでいくか、それが実に重要なことであると思う。

思われる限り語られる限り、アイドルは滅びはしない。だから、おおいに語ろうではないか。

 

…なんて、カッコいいものではない。ただ、最後に、誰よりも僕のために記録として残しておきたい、それだけのことである。

当初、書き始めようと思いついた際は、自らの能う限りの技巧を駆使し、何かを作り上げてやろう、という野心もないではなかった(ちなみにこの上までの文章は、そんな思いもありつつ書いたものであり、ここから先はそこから数日経っている)が、ラストライブの日から毎日、ライブのアーカイブ配信を見ているうちに、何を書いたものかわからなくなってきた。

感じることは山ほどあれど、いったい何を残せばよいのかが、全くわからなくなってきた。ただ確かなのは、素晴らしいASTROMATEが素晴らしいラストライブを行った、ということである。しかしそれをどう語ればよいのか。

 

そして僕自身、ASTROMATE解散後の世界にも慣れてきた。

解散発表、解散前、それらは極めて冷静に受け止めてきたが、ラストライブ終了直後は何か重くのしかかったものがあるように感じ、そして実際に、ツイッターでのもっちゃんのおはようがない世界、というものに圧倒的な空虚さを感じてきた(余談だが、このことについてはもっちゃんにもウェブ特典会にて言われていた。「さあやのおはようがない世界が来るんだよ」と。そして、それは彼女自身にとっても、みんなのおはようがなくてとてもさみしいんだよ、とも言っていた。百も承知であったが、実際に迎えると実に空しいものだった)。しかしそれにもすっかり慣れてしまった。

 

つまりおおよそ、なんだか手ごたえのない中で書く、それでいて確かなものもあるような気がする、そんなふわふわとした中で書く、最後の記事なのである。

肩の力は抜けている。締まりのない記事になる気がする。それでいい。

素直な思いを最後に書きたい。

 

 

1.ラストライブについて

 

・ASTROMATE LAST LIVE「LAGASH」@恵比寿CreAto(無観客、配信ライブ。配信媒体はTICKETVILLAGE)

 

開演前にも後にもたっぷり特典会が用意されていた。無論、直接触れ合うことは叶わず、ウェブ特典会、テレビ電話のようなものだった。嬉しい半面、実にお疲れさまなものだ、とも思った。ラストライブの前など、終わりのムードを味わい、酔い、浸り、そして集中したいということもあろう。

 

開演前、トップバッターの回を買っていたのだが、時間になって画面に現れたもっちゃんは、それはもう酷いくらいに顔が強張っていた。そして、緊張する、緊張するとばかり、ずっと言っていた。

何回か買っていたから、次第にその緊張が解けてくる過程が見られるのかな、と思っていたのだが、1時間半後の最後の回になってもあまり変わらず、強張ったまま。そしてやっぱり、緊張する、緊張する、少しはましになったけれどやっぱり、と口にしていた。

感謝は伝えなければならない、とお母さんに言われた、とも言っていた。彼女の、実に親愛なる、お母さん。困ったとき、あるいは、悪い夢を見てしまったときにも、すぐに連絡をしてしまう、お母さん。

 

一方僕はといえば、しっかり事前に出来上がっていた。

当日はPASSPO☆時代からのをたく仲間・ミッチーさんに頼み込み、家を会場として提供してもらい、あすとろを同じ理由で見始めてずっと一緒にやってきたさこ推し(まひろ推し)・いはらさんのほか、同じくPASSPO☆時代のをたく仲間で、あすとろのをたくなのかそうではないのか、少なくともラストライブは一緒に見てくれるであろう人、すっかりはんな推しになっていたむったんと、一緒にもっちゃんを推していたこともあったあかめさんを呼んでいた。あすとろがかつて集まってタコ焼き器で作っていたシューマイを再現するなどし、そして呑んでいた。

もちろん、ライブをしっかり見られるくらいには酒量もコントロールしていたが、そして別に酒のせいではないとは思うのだが、緊張感とは無縁だった。

一人で見ているのはきっとつらかった。この日ご一緒してくれた彼らには感謝している。

 

開場時間(=放送開始時間)きっかりに、テレビの画面に配信を映し出した。開始時間から数分遅れ、ライブの告知ポスター画面から会場へと切り替わり、いつものSEが始まった。

そこから先は実に僕自身、集中していたように思う。2015年5月31日、赤坂BLITZでのPASSPO☆槙田紗子、ラストライブ。あの時のゾーンに入ったような集中力を取り戻したように思えた。いや、そこまでではなかったか。ひとまず、集中していたように思えた。

 

ASTROからライブが始まった。大切な日はいつもASTROスタートだ。

すっかり見なくなっていた初期衣装を身に纏った彼女たちは新鮮だった。この衣装で髪をストレートに下ろしているもっちゃんは、それこそ当時は非常に珍しかったのだ。

そのもっちゃんはやはり顔が強張っていた。それでもその緊張で歌声が震えるなどということもなく、立派にいつものもっちゃんのパフォーマンスをしていた。いつもの、か?いや、とても気合の入った、最後にふさわしいものだった。

 

Brilliant Worldの頃にはすっかり緊張もほどけていたように思えた。

初代、2代目衣装ともに、はんなは音々のものを着ていたのだが、それとロングヘアーも相まって、1番のAメロ、「そんなのナンセンス」のシーンではまるではんなが音々のように見えた。実に正当な後継者だった。

音々からはんなへと推しを辿って行った者たちは少なくなかったが、彼らが泣き出す姿が目に浮かぶようだった。

 

歴史を振り返るスライドショー。

そりゃしゃちフェスのシーンはナレーション担当はもっちゃんだよなともなったし、同様にねねが辞めたシーンはまひろだよなとなった。TIFについてもっちゃんが担当だったのは、個人的には嬉しかった。

よくまとまっていた。明かせる程度以上には、綺麗な歴史にもしていなかった。そんなにうまくいったわけではなかった、というのを隠すことなく述べていた。

 

スライドショーはきゅりの発案、企画だという。彼女自身から終演後のウェブ特典会にて告げられた。

彼女は最後の最後、自らを納得させ、燃え尽きるためにただ全力を尽くしたのだが、その一環としての作品である。変に全体のライブを緩ませる、だれさせることもなく、あすとろの歴史をよく知らぬ者にもコンパクトに知らせることにも成功した、よい企画であったように思う。

そしてラストナレーション、「それぞれに、新しい思いと、選択肢を抱いて」と述べてからのCHOICESは美しい構成だった。

 

CHOICES、My Lightの頃にはもっちゃんもすっかりいつも通り、いや、いつも以上に戻り、笑顔を爆発させていた。

いつも以上、という点では、この日のはんなは本田ときゅりに引っ張られたのか、いつもより歌声が大きい気もしたし、特に後半は表情もいつもよりは幾分か柔らかいように思えた。

きゅりはいつもより歌声さらに大きく、まあその分不安定なきらいもあったが、何よりも気持ちが出ていた。表情も実に豊かだったように思う。

まひろも歌声は同様、そして踊りもいつもよりキレも勢いも上、ほとばしる力感、その分不安定になりそうなところをよく抑えてこらえていたように見えた。

そして本田は錆がすっかり落ちていた。前週のコロナ後初対バン、初日は早々に舞台から退場し、2日目はどうにも歌声が本調子にも思えず、ラストステージをこの調子で迎えるのかと心配になっていたが、2回パフォーマンスをしたことによってすっかり調整出来ていたように思う。

そうなれば、あとは気持ち、気合がダイレクトに出来の良し悪しにつながる彼女、怖いものなどなかった。これで終わりという開放感、これで終わってしまうという悲しさも手伝い、エモーショナルの権化たるステージングだったろう。

 

自己紹介MCでそれぞれに気合を示し、そして暮れのワンマンで好評だった、代わる代わるメンバー2人でアストロの曲をショートバージョンでつないでいくメドレー。

冒頭のSTARAGAZER、出だしのパートは本来本田がやるところをもっちゃんが担当。気持ちが入りつつも、彼女らしい、やわらかく丁寧なレガート唱法、まさしく別の曲に見えるスタートだった。

次のREBELSはクールに決めつつもしっかりはんなを引っ張っていく(のちのMCでは2人で相当練習した様子がうかがえた)まひろ、まさしく結川の姉貴と呼ぶにふさわしい、頼りがいのある姿を見せてくれたし、CHOICESは続投となったはんなが声でか大将きゅりに引っ張られてさらにしっかり歌い、2人で攻撃的なパフォーマンスを披露していた。

まひろ、本田という美人2名のASTROは2人の艶がぶつかり合い、特に本田が歌い上げる後ろでまひろが優美なソロダンスで彩る落ちサビは、アストロの一つの完成点、大いなる見せ場であったように思う(まひろをカメラが追っておらず、一部しか見えなかったのは残念ではあったが。ちなみに、その優美なソロダンスも含め、それぞれもっちゃん、まひろが2人バージョンへの振り付けを担当したSTARGAZER、ASTROの全景はきゅりの公式ツイッターにて動画がアップされているので、ぜひ。きっと彼女のツイッターが消される前の、6月中は見られるはず。早崎友理Twitter(@kyuri_ASTRO))。

そこからもっちゃんとまひろ、本田それぞれとのハイタッチで出てくるNever Endはもうお祭り。ハイテンションでかまし、最後のいつもならきゅりが決めるフレーズもまたもっちゃんが、丁寧にしかし勢いよく決めていた。

総じて、意図的にいつもと違う人がパートを担当するように組まれ、ノンストップで駆け抜けたメドレー。暮れのワンマンの時もそのような感想を漏らしていた気がするが、アストロの魅力を普段と違う形でぐっと凝縮し、かつ全体の勢いを削ぐこともなくむしろ加速させていた、好企画だったのではないか。

 

間のMCでは、それぞれについているファン、STARGAZERの特徴なんてことを話していた。僕の感想としては各々、だいたいそうだろうな、そんな客層だったよなという以上も以下もないので、アーカイブで見ていただく…もう見られないはずなので、当ブログの前記事でもご参照ください。

まあ、僕はクセつよだろうな、笑。僕が当日見ていた会場では、もっちゃんが「クセつよ」と言った瞬間、他のをたくから僕を指しての笑いが絶えなかった。

 

そこから4曲はまさしく彼女たちの、僕たちの日常だった。飽きるほど死ぬほど繰り返した4曲20分の対バンだった。これがアストロだった。

全員(はんな以外、かな)、カメラに対して行うレスの感覚をすっかりつかみ切り、指差しなどもよく行っていたが、その中でも本田がカメラ大好き大将と化し、実に手数多くレスを送っていた。このあたりを天性の感覚でものにしてしまうあたりは流石である。

そして、Never End1番Bメロ、もっちゃんから手を大きく広げて求め、本田と抱き合い、そして頷きあうシーン。2年3ヶ月、頑張ってきたんだなあと感慨深かった。

 

ラストMC、それぞれの手紙。

はんなはここで泣き出す、感極まるような人でもなかろう。しっかりと自らの気持ちを語った。ことり、という3文字が泣かせた。

まひろもまた、自らの気持ちを大々的にさらけ出すような人でもないけれど、飾りもしないありのままの言葉だなあ、という気がした。実際この2年3ヶ月を経れば、誰もが10回は辞めようと思うところだろう。

 

もっちゃんは、ああ、この人はここで真実を語ったのだな、そう思った。

正直に言うと、僕個人としては、この語りのうち結構な部分は、それまでの特典会や、Only Fiveを使用しての質問に対する答えとして等で聞いていた。だから、この場でそこまで語るか、と少しの驚きもあり、ただ内容には何も驚きはなかった。

不安、劣等感、そんなものと戦い続けたのがこの2年3ヶ月の望月さあやだった。それはわかっていた。

「私は、印象に残らないアイドルじゃなくて、忘れられないアイドルになれていましたか?」

仲間たちと一緒に見ていたから、大泣きするわけにもいかんよなと、涙をこらえるのに必死だった。翌日、1人でアーカイブを見て、落涙した。

 

本田は実に本田の真骨頂だった。泣いて、笑って、正直にものを言って、をたくに対してお節介も言って。

元々軽い物言いの人だが、努めて明るく振舞おうとした結果でもあろうと思う。

その後に映し出されるきゅり、そもそも照明が良く当たる本田とあまり当たっていないきゅり、金髪に白い肌の本田と黒髪に地黒のきゅり、卒業を決めてある種すっきりした本田と、燃えきらないもの、未練、無念さが滲むきゅり、あまりのコントラストにめまいがした。これも僕が見ていた会場では薄笑いが漏れていた。

 

そしてきゅりは名文家の面目躍如たる内容だった。アストロは当然、アイドル全体への語りも入れつつ、自らを総括し、無念の思いを吐露し、メンバー一人一人、さらにはスタッフやファン(あえてSTARGAZERと言わないのはもちろん5年間の総括だからである)への感謝、アストロへの愛も盛り込み、クローザーの役割を完璧に果たした。

 

感極まった中でのSTARGAZER(こちらは無論曲名である)。

しっかり泣きを入れて歌うのはさすが本田である。意図的でも不意にでもどちらでもよい。そのようなふるまいができるのがエースたる者なのだ。

そこからラストソング、Our Song。冒頭および最後のもっちゃんの笑顔があまりにまぶしかった。すばらしかった。こう笑顔を爆発させ、短い手足をぶん回し、そして観客を幸せにさせるのが、望月さあやというアイドルだった。最後こそ真髄だった。

最後に5人が固まっていた時、まひろが右腕をもっちゃんの首に回していた。僕は語彙がないから、感慨深かった、以上のことを書けない。

 

エンドロール。

歌詞の直筆、おそらくもっちゃんはREBELSとASTROだろう。自らのマイルストーンと、初期の歌唱のエースから受け継いできた大切なパート。

 

「夢抱いた季節は、ゆるやかに、過ぎ去っていて。」

Our Songのこの歌詞が映し出された瞬間、終わりが来たのだとわかった。

 

過不足のない、素晴らしいASTROMATEの素晴らしいラストライブだった。

全曲を連続でやる、というほどのマッチョさも見せず、かといって無駄な企画で冗長にすることもなく。

地下アイドル、ライブアイドルの王道、真正面から歌とダンスでしっかりと魅せ切る、かといってアイドルを否定することもなくその枠の中でしっかり戦い抜く。そんなアストロを貫いた、実に見応えのあり、どこに出しても恥ずかしくない、僕はこのグループが好きなんです、そう胸を張って最後まで言えた、そんなライブだったように思う。

 

終了後のもっちゃん特典会。

「たのちかった」と一言。大泣きしたし、とても楽しかった、と。

それだけ聞ければ十分だった。

ほかのをたくとの回では大泣きしたようだ。終盤戦での僕の回のうち1回は、「すいません1個前がそら(をたくの名前)で泣きました。もうあかーん」と言って、さらに泣き腫らした目で登場していた。無論、僕との回で泣くこともなく、その2分間でゆっくり落ち着いて行っているようにも見えた。

まあ、そらちゃんならそりゃ泣くだろう。わかり切っていた。僕は感動的な話もしていないし、そんなもんだ。

 

 

2.メンバー、およびASTROMATEについて

 

ASTROMATEは、初めは7人だった。

 

・高橋真利亜

さすがに語ることもないが。我々の前には、お披露目の2日間だけいたメンバー。初日の大阪、全握で一人震えているようだったのを思い出す。

アストロとして語られることも彼女自身がどう思うか、というところはあるが、まあ、今でも元気そうなので、なにより。自分の道に邁進してほしいと思う。

 

次に、6人になった。

 

・桐島杏

本物の歌うたい。歌唱面での最初のエースだった。

繊細過ぎる人であり、太陽の下では溶けてしまうような白すぎる肌の人だった。

か弱くかつ難しそうな人には惹かれてしまう僕(アイドル終盤の難しかった槙田紗子を追っていた弊害だろう)は彼女に惹かれ、そして気がついた時には手遅れだった。

アストロにおける、僕の原罪だった。このブログを熱心に読んでくれている人でもあった。

 

沖縄に帰っているのか、こちらにいるのか。どこで何をしているのかは知らないが、どうにかして生きていてほしい、さらに望むなら彼女なりに幸せに生きていてほしい、それだけを思う。

彼女が完走した世界のアストロを見てみたかった、もちろんそれはある。実に美しい歌声の人だった。

 

最初の夏は5人で迎えた。ここでようやく安定した。

 

・柚木音々

本物のアイドル。

つい先日芸能界から引退した、渡辺麻友の信奉者。彼女のように完璧なアイドル、というベクトルではなかったが、天真爛漫、それでいて誰よりも優しく、誰よりも世界を全体を、その大きな2つの目で見ている、歌でもダンスでもなくその存在で誰もを惹きつける、メンバーからもSTARGAZERからも誰からも愛される、素晴らしいアイドルだった。

元祖・まひろの相棒。ビジュアルの整ったツーショットは眼福だった。

 

例の一件の時は誰よりも僕に優しかった。そんな優しくて、かつ自らの身の振り方を考えられる感性を持った彼女が、1年が経過したころに辞めるという決断をしたのもまた当然だろうと思う。

ド地下アイドルに戻ってきちゃだめだぞ、そんなことを最後の頃、彼女には何度も言った気がする。何か言われてしまえば乗せられてしまいそうな、そんな人のいい彼女だっただけに。

その後、危惧したようなこともなく、どこかで生きているようだ。どうかこの優しい人が報われますように、そう願っている。

卒業ライブで披露した、調子外れの「初日」は永遠に。アイドル性をもって何もかもをねじ伏せた、究極の形だった。

 

1ヶ月の4人体制を挟み、TIFは第2期の2人を加え、6人で参戦した。

 

・小鳥遊桐恋

「元気なことり」。「物静かなはんな」の対になる人。

新風を吹かせた、ということで。吹かせすぎたか、笑。

 

初期メンバーに対する2期はいつだって大変だ。その大変さを半年とはいえ、なんとかはんなと一緒になって潜り抜けてきた。そして、ことりが辞めることではんなの心に火をつけた。

彼女自身として語られることはもとより、はんなが成り上がっていくことにより、その初期を支えたメンバーとして語られる人であったろう。

コロナの影響も少なかったギリギリの2月末で卒業し、その後大してライブを重ねられることもなく、6月をもってアストロ自体が解散したのは皮肉なものであったが。

 

個人的には世話をして世話になった、笑。彼女にフォーカスし過ぎていたので、全体における彼女を語るのは僕にとってはむしろ難しい話だ。

この半年の経験が何か彼女にプラスになっていればよいと思う。

 

最後はまた5人だった。

 

・本田夏実

彼女の言葉を借りれば、僕はまさしく「正面衝突」「交通事故」を起こした人なので、そんなに多くも語れないが。

 

まさしくASTROMATEの象徴だった人だと思う。彼女が動くが如く、アストロは動く。ロックアイドルとしてのアストロ、それをステージ上で最も体現していた人、だったような。

何球団目かの渡り鳥だが、経歴の中ではいわゆるアイドルらしいアイドルもあったようで、そんなところでよく収まっていられたものだな、とつくづく思う。そんなことを思いながらラストライブのスライドショーを見ていて、しかし最初の頃はその収まっていた時代の片鱗だったのか、ずいぶん大人しい見た目だったのだなと。ま、最後が金髪だったから思うだけなのかもだが。

 

ステージに出ればスターだった。歌はそもそも声量があり、技術もそれなり、ダンスは逆に特筆することはなく、ただ、彼女の持ち味はそんなことではない。

始まれば一瞬で猛烈な一撃を見舞って空気を変え、客席を煽りに煽り、空気が温まればあとは笑顔を爆発させながら我がステージを全力で楽しむ。

誰が見てもわかる華と圧倒的な輝き。乗っているときのこの人は誰にも止められない。まさしくアストロのエース、初期から最後まで君臨し続けた。

 

それだけに、この人が卒業を決めたのであればアストロもおしまいとなることもあるだろう、今回の結果もまた、無理のない話のように思う。そして、彼女自身、ラストライブでもあえて明るく語っていたけれど、普通に考えればここでピリオド、というのも自然であるようにも思う。

お疲れ様というほかはない。

 

・結川まひろ

彼女とも個人的にはすれ違いで終わったが、振り返ってみると、一部見解の相違はあれど、おおよそ僕の身から出た錆であり、その点は申し訳なかったな、と思う。

 

アストロの誇るダンサー、そして後半のもっちゃんの相棒だった。

もともとふわっとした人であり、本人もラストライブMCでも言っていたとおり、ゆっくりな人だった。しかし自分が譲れないところでは本当に頑固というか、一本通った人で、特にダンスに対する拘りは素晴らしいものがあった。何度か彼女のダンスを褒めながら話をしたことがあるが、ダンスに対する考え方、思いの強さには驚かされるものがあった。

ネガティブなのが悩み、そんな自分を変えたい、というのがデビュー時の触れ込みだった。そんな自分を変えることはできただろうか。

 

とにかくどこに出しても恥ずかしくない美人だ。

アストロにいるのがもったいないなあ、と思うこともあった。もちろん彼女がアストロを楽しんでいる、このメンバーとこの楽曲群をパフォーマンスすることが楽しい、そんなことはわかってはいるのだが、この地下のフィールドにいるのはもったいないなあ、坂道でもイコラブでも何でもいいから、アッパークラスのアイドルにさらっと入って売れてくれねえかなあ、そんなことも思っていた。アストロにもまひろ本人にも失礼な話だが。

 

なによりも個人的には、彼女のダンスが好きだった。足さばき、手と足のポジション取り、立ち振る舞いがとにかく好みだった。世間的にももちろん上手、キレがありかつ妖艶、なんて言葉で称されるのだろうが、良い悪いというよりは、いや言わずもがな良いのだが、それ以上に好みだということに尽きる。

卒業後はダンスの道を志しているとも聞いている。本物の世界にはもちろんもっともっと上手い人もいて、その中でまひろが現時点で圧倒的なアドバンテージを持っているかと言われると、そんなことは全くないのであろう。しかし、地下アイドルとしてこの年でこれだけ踊れた人が、本物の教育を受けて磨かれて、どんなようになっていくのか、それは実に楽しみである。食うのも難しい世界だろうが、どうにか食っていけるようになってほしい。

もしアイドルに戻ってくるのなら、今度こそは沢山の人に見つかってほしいと思う。

 

・佐藤はんな

「私天才◎」

音々がいなくなったアストロに降りてきた、ここにいるだけでOKな人。若者に対して訴求力のあるビジュアルで、何人もの新規顧客を連れてきた。もっとも、本人の言うとおり、いわゆるDDが多かったとは思うが。

 

ことりの項でも触れたとおり、ここにいるだけでも大変だったと思う。ましてや、元来社交的な性格ではない。物静かな人だ。

「はんなをよろしくね」

それがことりから伝えられたことだった。本人からのほかにも、ことり経由でも話は聞いていた。

 

「私は負けず嫌いだから」

心の奥底には燃えるものを持った人だったろう。しかしそれを表に出すことは苦手で。そのあたりを克服しきることはなく終わってしまった、というのは本人談である。

まあ、アストロのはんなは確かに終わったが、はんな自身はここで終わるわけではない。始まったばっかり、あるいは数年後、はんな自身の経歴を振り返ってみれば、ほんの助走に過ぎないかもしれない。実際に、その助走を見守り、話を交わした僕としては、この10か月間はほんの助走であってほしい。

助走とすれば、少なくともパフォーマンス面においては、本人もラストライブMCにて述べていたとおり、高いレベルの中でもまれる経験を積んで、次に向けては上々だったのではないか。もちろん、また歌って踊るアイドルグループをやるのであれば、だが。

 

ラストライブ後に聞いたら、アストロは楽しかった、と言ってくれた。本心であることを願っている。それ以上に、とにかくここから1歩も2歩も進んでいってほしい、そして、何年か後、自らの経歴を振り返るときに、胸を張って「私はASTROMATEでキャリアを始めました」と言ってほしい。

早くも復活の狼煙を上げている。SNS類も(ツイッターはばっさりツイ消しはされているものの)そのまま生きており、また、ミスiDに参戦、だと。明るくて真っすぐにアイドル、という人でもなく、或いは親和性もあるかもしれない。幸運を願っている。

はんな-ミスiD2021

 

・早崎友理

「数多く存在するアイドルの中で、描いた夢を叶えて、新しい夢を見つけて、アイドルをやり切った、と思うところで引退することができる人がどれだけいるのでしょうか。私は、そんな輝かしい引退の仕方はできなかったけど、ASTROMATEとして活動する中で、これ以上はないと思えるようなメンバーたちと、大好きな楽曲を歌って踊ることができたのは、本当に幸せなことだったと思います」

(ラストライブ、本人のラストMCより)

 

本田ときゅり、経験者は2人いたわけだが、どちらかと言えばきゅりのほうにだいぶ肩入れしていた僕としては、アストロというのは早崎友理、そしてならさきゅりという一大叙事詩…そこまで言うほどの膨大な物語ではないが、彼女がその物語を終えるための舞台だったのかな、という気はしている。

そしてそれは道半ばで終わることになったのだが、彼女は彼女なりに燃え尽き、諦められ、一般人に戻ることができたのではないか。心残りがないわけではまったくないだろうけれど、気持ちよく、アイドルを終えることができたのではないか。

 

最初から最後までアストロの精神的な支柱だったように思う。思いの強い、かつ弱さも穴もある人で、しかしそれがまた、欠点でさえも多くのをたくを惹きつけることにつながっていたような気がする。メンバー思い、STARGAZER思い。僕は個人的にはけっこう救われました。

運営のようなこともやり、若いメンバーの世話もして、得意なデザイン関係の能力を存分に活かし、アストロの告知をし、最終盤のコロナの世ではOnlyFiveの脅威の書き込みでをたくの度肝を抜いた。「危なっかしくて目が離せない」本田のブレーキ役としてもよく機能していた。2年3ヶ月持ったのも、彼女がいてこそだろう。

 

少なくとも四半期に一度は客が来ないと悩んで、僕にも愚痴を言っていたように思う。経験者として、元々関西で活動し、基盤があったのだから仕方のないことでもあるが、その時の客を呼べないということで、アストロ全体の客入りが伸びないのに対して責任を感じてしまうこともあったのではないか。自分がいるのに、上手くできない、そう抱え込むこともあったのではないか。

総じて、最後の勝負という意気で上京して、こんな素晴らしいメンバー、楽曲の中で、こんなはずではなかった、そんな事態ばかりであったのではないか。気苦労の絶えない2年3ヶ月だったろう。

 

ラストライブ、やり切れたらしい。

それなら、よかった。

それならば、それでよかったのだ。ここにアイドル人生を無事に終えられたのだ。

あとは彼女のをたくたちが時々でも、彼女のことを思い出せばいい。思い出して、時には酒でも呑めばいい。あのころはならさきゅり、早崎友理がいたのだと。

 

・望月さあや

もう彼女については僕は語りつくしている。こちらの記事を参照されたい。

私論・望月さあや(ASTROMATE)

 

まあいろいろあった僕だから、もっちゃんが最後まで僕に推させてくれただけでもう、いいのである。完走させてくれただけで。ありがとう、という言葉しかない。

ラストライブではもっちゃんの歌声を堪能させてもらった。柔らかく女の子らしく、そしてよく伸びる歌声。元の出自を感じ、そして今後のその方面―舞台での活躍の可能性を僕は感じていた。

 

歌でもダンスでも超一流、とは言わない。しかしアストロを支えていた、アストロのダイナモだったのは紛れもなくもっちゃんであり、これからの鍛え方次第、考え方次第、あとはちょっとの運次第では、この世界でどのような形になるかはとにかく、生き残っていくことは十分できる人だと思う。本人も何をするかは今、故郷の島根に帰ってゆっくり考えているところだろうが、少なくとも何かをする気ではあるはずだ。

存分に、これまで培ってきたもの、勿論人間関係、ある種のコネも含めて(たとえば槙田紗子なんてのはいろいろ使ってみるといい、相談、お願いしてみるといい、そう思う。さこ自身もそうやってどん底からのし上がってきた人だからだ)、活かしてこれからもこの世界で冒険を続けるとよい。

 

だから、僕は彼女にさよならなど言わなかった。また会おうとしか言わなかった。

きっと期待に応えてくれるだろう。その日が待ち遠しくてならない。

まあ、もしもっちゃんがこれを読んでいても、変にプレッシャーとは受け取らないでほしいけれど。待つのは慣れているから、もっちゃんのペースで進めてほしい。そしてまた、その満面の笑顔を見せてほしい。

 

 

素晴らしいASTROMATEだった。僕にとってアストロのライブというのは、実に肌に合う、楽園であったように思う。

けれん味も面白可笑しさもなかった。ブリブリのアイドルでもなかった。現代のアイドルシーンにおいて、どういう存在だったのか。僕はそれについては無知ゆえ語ることができない。

客席も、極端にコールとオイオイの掛け声だけに偏った、ずいぶんと昔気質のものになっていた。そうなった一因は僕にもあったように思う。僕はそれで楽しいをたくだった。熱量さえあれば、それでよかった。そういう育ちをしていた。みんなで呪文を唱える、みんなで一緒に何かをする、それが楽しい、というようには育っていなかった。少なくとも、自らがそれを主導するようには、育っていなかった。

 

流行りの現場にいる若いをたくが最初からついて、そういう流行りの現場になっていったら、或いは違う未来もあったのでは、と思うこともある。何度も思った。たらればだ。

僕は結局、曲がりなりにも最初から最後までアストロを見て、そのだいたいの期間で馬鹿みたいに現場に通い、あれもこれもした。本当に、いろんなことがあった。

すべて終わったのだ。水に流すというのも違う、ただ、僕はASTROMATEは楽しかったし、最高だったと胸を張って言う。真っ直ぐな者たちが真っ直ぐに歌とダンスで勝負してきた、素晴らしいASTROMATEを追いかけてきたのだと言う。

そういう気持ちになれて、そう言えるのなら、をたくとしては十分じゃないか。

 

すべてのメンバーとすべてのをたく…STARGAZERたち、その他関わってくれた方、ありがとうございました。