つくづく被災した街なのだと思う。

 

週明け、外に出ているごみの量が違った。むろん、ただの燃えるゴミが行儀よく青い袋に入って捨てられていて、カラスがつついてついばんでめちゃくちゃにして、くちばしの黒光りするカラスが怖い、東京じゃあねえのに何でてめえら田舎のカラスがそんなに怖いツラしてやがんだ、どけよそこ、ってんじゃない。

出ているのは家具、家具、家具だ。企業であれば、そこにスチール製の机と回転する椅子が加わる。そしてそれがとにかく大量に出ている。大量に。

そう、決められた期間内に出せば、街が無料で回収してくれるというのだ。

 

そして週明けは片付けの日々だった。

浸水し水を吸いだらしなく重くなった段ボールを持ち上げる、持ち上げる。だらしなくなっていない、生きながらえた段ボールを持ち上げる、持ち上げる。だらしない段ボールの中身が生き残ってたら段ボールを組み立て、段ボールから段ボールへ生き残りを移し、移し、ガムテープで封をし、持ち上げ、運び、積む、積む、積む。

肉体労働の日々だった。もやしっ子の僕にはたまらない。

 

そして砂塵が舞う。

泥水が押し寄せ、あらゆるものを運び、汚し、あっという間に去っていった、そのあとには泥を残す。それが乾く。なにを成分としているかわかったもんじゃない、危ない砂塵だ。

外に出る際はマスクを。掃除の際にはマスクを、そしてけが防止に必ず軍手を。傷に何か入り込んだらどうなるかわからねえぜ、一寸先は闇だ、覚悟しな、そう医務室の姉ちゃんから連絡があった。ごもっともだ。いったい何が溶け込んだ砂塵だかわからない。それが一面を覆い黄土色の大地なのだ。

 

今日は雨が降り、その何が入っているかわからない黄土色を流しつくした。これは願望だ。流しつくしてくれればいい。きっと流しつくしてはいない。そして路肩を破壊しいくつかの弱り切ったガードレールを地の底へ突き落すのだ。すでにそんな光景が街中で珍しくない。

これが水害という奴なのだ。実に勉強になった。

 

日曜と同じ組み合わせだ。洪水とあすとろさん。

肉体労働で疲れ切った僕は月曜の渋谷へと吸い込まれていった。そんなにハロウィンは盛んじゃなかった。

渋谷19時20分は定時ダッシュでギリギリなのだ。実に疲れた。出囃子が鳴る5秒前に会場入りした。実に疲れた。だからふわっと入って、何も考えず、すっと溶け込んで、おいおいやった。コールをしたり、突っ込んだり、おいおいやったりした。特に疲れたなあ以外は考えず、おいおいやったりした。20日間で心と体にこびりついた錆が少しは落ちてきた気がした。悪くない具合で体が動き、声が出た。別段調子が良いわけではなく、来る道中にえずき、ライブ中にえずいた。終わった後もえずいた。ビールを呑んでえずいた。喉の検査が必要だろうか。

 

そんな程度だからライブの記憶もさしてないが。もちの笑顔がよかったってくらいだ。

腕をがんと振って体をぶっ飛ばして踊れる。強い体がある(病に対する、という意味でも、暑さでもなく。この2つには、特に暑さにはかなり弱い)。しっかりとした声がある。どこまでも磨かれて伸びそうな未来がある。そういうもちを好き好んできたつもりだが、時々ふと気を抜いてぼんやりと壇上を見上げると、どんな時もにっかにかと笑っている、幸せそうなもちがいる。そして、ライブについては「たのちかった」と語るのだ。

ああ、幸せじゃないか、そう思った。もちがにっかにか笑っていれば世界は幸せなのだ。

 

もちチャイナ。編み込んだ髪を輪っかみたいにしたものを添えて。

僕はとても好きだった。鮮やかなブルーを身にまとったもちを見て、最初に思ったのは好き、でも、かわいい、でもなく、頑張ったな、だった。もち、そういうのとてもできやしないと言っていたじゃないか、がんばったな、と。そして胸元に目が行った。男の子だからね、仕方ないじゃないか。こんなところにわざわざ書くのが最低だということなのだろうがね。

 

開口一番、「帰りたい」。

カメラを持ってきていないことが心底悔しい、そう伝えたら、「今日は撮らないでって言おうとした」。

実にもちづきで、もちづきだ。

この日の自撮りなりなんなり、ツイッターに上げた画像はどれも強烈に補正をかけている。チャイナに身を包んだ自らを隠ぺいするがごとく。

実にもちづきで、もちづきで、もったいないなあと思う。ストレートがをたくは好きなものだ。

 

ことりいぬ。似合ってはいた。もっと別のものも想起したがそれはそれだ。メンバーの並びがあんまり恵まれないよなあと思う。これは単なる見た目の話だ。可愛い同士で固まっていればいいのに、綺麗は綺麗で、そんな話だ。

 

ところで僕はハロウィンという感覚が未だにしっくりこない。ガキの頃はそんなに騒いだ記憶がない、そんなことが立派に言える時点でおっさんの階段を登っている。

まあたとえばきゅりがおみ足を惜しげもなく見せつけたり、はんながショートの巫女で座敷童感を出しながらかわいさを振りまいていたりするハロウィンは嫌いじゃない。まひろさんは今年は攻め方が存分にわかっている気がする。このレベルで終わるのだとしたら心底もったいないと思う。どうにかなってほしいと思う。

まだ狂騒は続く。ハロウィン本番っていつなんだい?