梅雨が明けた。夏の到来である。

甲子園の季節である。春もだけれど。でも夏のほうがさらに盛り上がる。

負けがすなわち終わりだからだろう。高校生活の中での野球の終わり。

だから全員が全員、特攻よろしく向こう見ずな全力プレイに励む。

そして散り際まで含め、その精神性を大衆は娯楽として愛し、消化していく。

 

彼らは3年間が保証されているが、地下アイドルで3年続いたらいいほうだ。

明日もわからねえ新人アイドルの、突如降って湧いた、あるいは何故か課金投票系企画にもかかわらずガチンコで得票をカウントしてくれ、その結果ヲタクが物理的に祭り上げて登る、大舞台。

この夏最初で最後の大舞台。

周囲がきな臭え彼女たちにとって、あるいは最後かもしれない大舞台。

マジ夏すぎる。

 

いつものことながらレポートをする気などさらさらない。

 

・FREEDOM NAGOYA 2018

 

1票500円なんだって。投票企画。一番稼いだ連中が本番に出られるんだって。フェス運営の金稼ぎ…ゴホン。

だからこういうのは嫌いなんだ。まあヲタクがこういう舞台に上げられる(と見せかけてる、ものが多いわけだけれど)と考えると夢があるわけだけれどね(ないない)。

 

だいたいが聞いたこともない連中が集う中、何故だか同事務所勢で2頭出し。

翌日に同じところで開かれる大規模フェスに、さらに同事務所の別ユニットが…名前隠すことねえな、ASTROMATEが出ることが判明したのは、投票開始から結構経ってからで。

 

とあるヲタクが投票してくれ、ときたから。

勝つ気はあるのかい、勝算はあるのかい、と聞いた。勝てねえ戦はしねえよ、と。

結果、投票した。

だからきっと僕も名古屋へ行った。

自分で少しは祭り上げるのを手伝った神輿、最後まで見たいじゃない。

 

久々の名古屋だった。

名古屋は夜行バスで行くと、碌に睡眠時間が取れないから嫌いだ。

ロングスリーパーの僕にとっては、東京から名古屋まで、たった6時間程度の乗車時間では短すぎる。

風呂入ってモーニング食って、くそほど雨が降るというからドンキで使い捨ての靴を買って、現地へ。

駅からちょっと遠かった。それで連れがすでにイライラしていた。きっともう少し牛乳を飲むといい。

 

現地に着いた。我らが本拠地(販売所)へひとまず顔を出した。

槙田さんに連れられて何故だか現場の主力スタッフになってしまった人がいた。今日も明日も出番のないはずの人もいた。2組もいた。

明確に覚えていないが、もうこのくらいからうち1組は呑んでいただろうか。アサヒ・スーパードライ。

ガキの頃、親父が19時前に帰ってくると(おそらくけっこう定時に出られる職場だったのだろう。うらやましい限りだ)毎日、夕飯を食べながらこれを呑んでいた気がする。だから、僕にとっては(味の好みはとにかく)ビールと言えばこの銘柄だ。

 

・藍坊主

この日唯一見たいバンドだった。何気に初めてだった。

わかっていたけれど、それなりに年数重ねたバンドなのに青い音楽が鳴っていた。だからこそ藍坊主なのだろう。

藍坊主の屋外はよく雨が降るという。それが似合うバンドで、この日の小雨がなんともドラマティックだった。

なんの変哲もない青い音楽なのにとてもよかった。青い音楽だったからだろう。

 

・夜の本気ダンス

若いもんには人気出る風貌だねえって思った。

フランツフェルディナンドが聞きたくなった。躍らせるってだけだね、共通点。

嫌いじゃない。

 

帰ってきたら呑んでいたんだろうか、1組。よく覚えていないけれど。

夜の本気ダンスはLiliumoveの蓮本の勧めで見た。もう1組、おすすめがあったのだけれど、夜の本気ダンスの最中くらいから雨が大変に強くなってきて、それで「本拠地」に戻ったのちにはすっかり出る気が失せてしまった。

 

蓮本はしっかりお目当てを見に行っていた。

そんなただの観客モード、頬が紅潮してただ普段着というかこのグループのTシャツにパンツといういでたちの彼女、ただのかわいい女子大生全開でとてもかわいくて、隣のブースでなぜか腕相撲の対戦相手を募集してたからけしかけて手を上げさせたら選ばれて、それをこの日出番のないはずのほかの子が撮影していたという。あれ、その間相方は?どこか別のバンドを見に行っていたのだっけ?

きっと地下アイドルのこういう不相応な大舞台って、こういうのが楽しいのだなと。そもそもこの2組は出ないのだけれど。

 

・MerryCute

出ないはずなのに「本拠地」でゲリラライブと銘打ってライブを始めた。

5人組なはずなのに2人組だった。そりゃ2人組なのだから2人組以外ではありえない。つまりそういうことだった。

「本拠地」のテントの前に、ちょっとした人だかりができていた。

 

その中で2人は小さなライブをした。

ここのTシャツを着ていたヲタクがいた。

きっと泣いていただろう。ヲタクが?アイドルが?

大して真面目に見ていない僕にはわからないし、泣いたってこれだけ降りしきる雨の中ではわからない。

ひとつ、絵になる光景だった。

 

その間、今日の主役たちは酷く緊張していた。

 

・malika

ただの若者が集まるロックフェスだったこの日、唯一アイドルに与えられたステージ。

客を呼べると目されて選ばれた3組の先陣を切る、祭り上げられた1組。

 

大雨だった。

後に控えるアイドルのヲタクは優しく、容易に客席の中央を開けてくれた。

とはいえ、そもそもmalikaの名前も知らない客が圧倒的大勢。多勢に無勢。

いや、一番燃えるやん、そのシチュエーション。

 

いつも通りのステージをやるだけだった、なんて大嘘で、当たり前だけれど3人ともテンションが上がり切っていた。

…かどうかは僕にはわからない。Ayumiの記憶はない。ただ、さすがにテンションは上がっていただろう。

あとの2人はまあいい顔をしていた。

Ramは本当にいい顔をしていた。見たこともないくらいいい顔だったかどうか断言はしないが、いい顔をしていた。

とても僕は嬉しかった。

 

をたくも異様なテンションだった。

をたくの中にをたくじゃなかった人と、をたくだった人がいた。この日は多分に1人のキッズだったLiliumove。

特に楠、チェック(だったっけ)のレインコートに身を包み、最前にしっかり切り込んで、声を響かせていた。

面目躍如。

をたくが祭り上げた神輿、あまりに楽しい祭り。

周りから見ていてどうだったのだろう。

 

終わった後に撮影した写真。

奇跡的に雨がやんでいた。

Liliumove・蓮本萌絵。

この格好のはすもん、ほんと好き。

malika・Ram。

最高にいい面してたよね。

 

・SYACHI FES 2018

誰よりもこのフェスを楽しみにしている泣き虫がいた。

スタダDDらしい。前にも当ブログで書いたけれど、本当にスタダDDらしい。

そしてこれが決まった瞬間の、異様なTwitterでのはしゃぎよう。

発表前からはしゃいでいたし、発表時には10リットル泣いたと自称していたし、発表後にはそれが気がついたら12リットルに増えていた。

そしてその後のステージのMCでそれについて触れるたびに涙していた。

1週間前の接触時にはには「わんうぃーく、わんうぃーく」とうるさかったし、3日前には指を3本立ててうるさかった。

つまり、泣いているか、うるさいかしていた。

 

翌日は軽く雨が降った時間もあったが、間もなく、あほみたいに晴れていた。

をたくがエナジードリンクと酒を用いてあほみたいなものを作っていた。

僕はあほみたいにスーパードライを呑んで、それからウイスキーを呑んでいた。

暑かった。

あほみたいに幸福な空間だった。

 

・Liliumove

昨日とは打って変わって、おめかしした衣装。

何故か、楠お手製のスケスケ衣装だった。

 

いつもより1.5倍増しで煽る楠。

どうしてもやっている曲からして、お日様の当たるフェス向け、ゲリラ向けではないのだが、その中できっちり戦闘スタイルをとって、できる限りのことをしていた。

柵もなく何もないから、頑張りすぎるをたくがでてしまうのはご愛敬だろう。

天候が左右するものなのだろうか、前日のMerryCuteのライブと比べ、笑顔に満ちたものであった気がした。

 

特典会その1。

さすがに前日酒を呑んでた連中も呑むこともなく。

アストロは当たり前ながらそれなりに緊張してたような、そうでもないような、すくなくとも誰よりもこの日を待ち望んでいたもっちゃんはそれなりに緊張していたような。

 

ねねちゃとほとんどはじめてに近いくらい、1対1でちょっとしゃべったけれど。

この人はこの人で、当たり前だけれど一人の人間として周りをそれも冷徹に見ているのだなあとなんとなく感心した。だからといってばぶなのはばぶなのだが。

 

・ASTROMATE

くそみたいに太陽がさんさん輝いていて、くそみたいに暑いステージで、なぜかその前には全国のケーブルテレビ局の社員が集められた(ご苦労様です)集団が歌って踊っていて、あ、そういう緩い地域のお祭りなんだと錯覚して。

 

大勝負だと銘打って出てきた連中、待望の大舞台、客数はその期待を満たすものであったかどうかはわからないが、とにかくいい面をしていた。

ロックを基調とした正統派集団アイドルだから、モチベーションがそのまま出来に反映されてくるし、この日のこの人たちは本当に良かったんじゃないかと思うのだよね。

本田のなっちゃんのギラついた顔見て、こっちも舌なめずりして。

いや、あとでアップされた動画見たら、僕、どう見てもただのアル中患者みたいな動きしていたのだけれど、笑。

 

最後の曲のASTRO、手を伸ばす振りの時、手を伸ばしたら太陽の周りに虹が見えたんだってさ。

 

直後の接触。

全握に行ったら、もっちゃんが泣きだした。

つられて泣いてしまった。

誰よりも子供で誰よりも純粋というキャラの望月さあや、でもこの人の涙は信じられるというか嘘がないというか、そんな気がした。

アイドルと客として憧れていた舞台に、アイドルとアイドルとして立ったのだ。

この日は紛れもなくこの人のためにあったのだ。

 

総じて全員、当たり前だが満足そうだった。

本田のなっちゃんはこのグループについて満足しているということを話してくれたし、ちゅろさんは元気そうだった。こんな舞台があるのならアイドルを続けられる(大意)と言っていた。

もっちゃんはとにかく希望に満ち溢れていた。それはそうだろう。

 

アストロのステージが終わった後、一人、「本拠地」の裏で泣いている人がいた。

もちろんこちらは悔し涙だろう。

もっちゃんの涙とこちらの涙、あまりにも残酷なコントラスト。これ以上言うのはやめておこう。

この2つを対比して、夏だなあと思った。つまり甲子園、高校球児に通じる清々しさ、美しさ、つまりそれは冷房の効いた実家で、そうめんをすすりたくなる類のもの。

当人から、わけてもその一人からすれば、なにをのんきなことを言っているんだ、ぶん殴るぞと、そんな話だろうが、所詮アイドルに関して僕は高々傍観者でしかなく、であればせいぜい僕はそうめんをすすりたい気になって、良い夏だと、良い思い出だと高みの見物を決め込むしかないわけである。

 

・チームしゃちほこ

最後まで見てくれともっちゃんに懇願されるものだから、最後のステージを見た。

見たというより、それを視界に収めながら、ぼーっとしていた、という表現のほうが正しい。

 

壇上を見て、客席を見て。

なぜか泣けてきて。

かつてこのレベルまでいった人たちを見ていたよなあと、なぜか悔しくなってしまって。

一緒に夢を追う、見たいな推し方はもうやめたはずなのだが、それでも疼いてしまって。

この日、なっちゃんにも言ったのだけれど、なんかもう一度、そんな夢をほんのり見たいな、なんて確かに思ってしまって。

 

撮影した写真。

ASTROMATE・結川まひろ。

美人なのでもっと見つかるといいよね。

Liliumove・楠りさ。

何もかもわかるからこそ続ける暴走、僕は支持したいです。

ASTROMATE・桐島杏。

何かと傷つきやすく殻に閉じこもりやすいガラスのエース、だけれど歌唱面のエース。うまくセルフコントロールして、君臨し続けてほしい。

ASTROMATE・望月さあや。

この日の主役。チームしゃちほこのキャラクター着ぐるみと。撮りたいというから、ね。

どこまでも天真爛漫全力投球、元気の押し売りでいてほしい。

 

その翌週、対バンがあって。

この大舞台を終えての、いわば日常に戻ったライブ、気が抜けていてもいいはずなのだけれど。

この日のテンションは望むべくもなかったが、それでもその倦怠感に必死に抗うかのごとく、気合も入れ、少なすぎ凍てついている客を全力で煽り、良いステージを展開していた。

 

それなりのステージも経験しているきゅりが全体をきっちり引き締めていたらしい。大舞台の後は客もそういう目で見てくる、だからきっちりやらねばならぬのだと。

それをきっちりできるメンバーも含めて、良いグループだと思った。

どんなにきな臭い話があろうとも、それでも少々の夢を戯れ程度には抱きたくなる、そんなグループだと思った。

夢を抱くのにきな臭い話は関係ない。どうだって勝手に崩壊するときは崩壊するし、それはをたくには何の関係もない、関知する必要のない話なのだ。