表題の括弧書き部は加えるつもりはなかった。青天の霹靂である。
本来、ステイヤーの僕である。競馬で言えば、3,000メートル以上でなければ結果を残せない、種牡馬としては絶対に生き残れないタイプ。1年推してようやくエンジンがかかる僕である。
1か月で二兎は追えない。しかたがない。
これは僕の覚書である。
きっと彼女(たち)に当ブログで言及するのは、少なくとも転校少女歌撃団なるアイドルの彼女たちに言及するのは、おそらくこれが最初で最後だろう。粘っこく最終戦前と戦後を丹念に描いたりしない。執拗に描くほど彼女たちへの理解も進んでいない。
二兎は追えない。
栗田恵美は追えない。
僕は賽の目をそう決めた。
栗田恵美はいい玩具だと思った。
いうなれば、そういう感想だった。
はっきり言って本人も言うようにトロく、ダンスなどは見ていられるものではなく、ただ、明確な企みと意思を持って行われる、前のめりな接触、綴られる強靭で独特のセンスを感じる文章と、なにより僕の30馬身以上前を行く、写真への造詣の深さ。
実に面白い玩具だと思った。
1か月、まず別の方角へ走ってみて、その後、なおも彼女に思うことがあれば、行ってみよう、そう思っていた。
全く彼女からしてみれば失礼な話である。
未来に期待している。どんな形かは知らないがここで終わる彼女ではまったくもってあるまい。僕がその時にやる気さえ出せば、容易に会う機会はある。
いや、活動の形次第では、ないかもしれない。それはそれでよい。彼女の何かに触れる機会はきっとあるだろう。
やれやれ。
松本香穂という人。
友人のせいでここへ来た。「ここ」は松本香穂ではない。転校少女歌撃団(僕のPCの予測変換では未だに転校少女歌劇団だ)というハコ自体である。
10年近く親交のある悪友。古森結衣の推しだった、と書くと過去形みたいだ。現在進行形である。
来る前から栗田恵美が気になっていた。丸顔は好きなのだ。
僕を走らせるほどではなく、ただ、興味を全く持たないわけではなく。
そして僕が気づいた時には栗田ちゃんは既に体調不良だった。
「ショコラの独白」リリースイベント、実によく休んでいた。僕も大して行っているわけでもなかったから、そんなにお目にかかる機会もなかった。
だいたいカメラを構えていたけれど、だからといって彼女をロックオンしていたわけでもなく、その日の気分次第で実に適当に撮って、いうなればただのライブ撮影の練習で。
だから彼女がいようといまいと、そんなに大勢に影響はなかった。一抹の寂しさはあったし、推し(?)が体調不良で欠席、というシチュエーションに懐かしさは抱いていたけれど。
ある曇り空のリリイベ。
その日の前からも、豪快に腕と足を振りぬく踊り、少し気はひかれていた。
松本香穂という人。
なんの曲だったのだろう。
この写真の時のような気も、そうでないような気もするけれど、笑。
とにかく、逝ってしまったような陶酔すら浮かばせるその面に、妙にひかれたのでありました。
と、書いてしまえば良くも悪くもこれだけ。
豪快に振り回せる身体、なにか憑かれたような表情。総じて、魂を入れられるようなパフォーマンス。
こういうわけで、香穂ちゃん…香穂ちゃんでええんだろうか、まあ香穂ちゃんにひかれたわけでありました。
ちゃんと魂を入れたパフォーマンスができる奴は好きで。
そのパフォーマンスにそいつの名前が書いてある奴は好きで。
そんな奴は僕が見た限りではそんなにいるわけではなくて。
だからこんな軽さでも、それなりに彼女に惚れこんでいるわけで。
それは僕の本筋の、好きになりかたなわけで。
こういう、三白眼っていうんだろうか、人を屠りそうな眼をしている人って、10年以上前の片山はーちゃん以来、僕は弱いわけで。
(本当にそうなのかはよくわからないけれど)豆腐メンタルで、寂しがりやで、かまってちゃんで、壇上じゃあクールっぽくも見えるけれどまったく年相応のメンタルで、地黒なのを気にしていて、美白に見える写真が好きで、いや写真自体が結構好きな普通の女の子。
まあ普通の女の子。スポットライトに当たってしまった、その喜びに触れてしまった普通の女の子。
でも僕がそのパフォーマンスを見て久々に震えてしまった女の子。
そしてよく泣く女の子。全く年相応に青春反抗期真っただ中のLJK。
ラスト1か月というシチュエーションに僕が恋をしているのもまた確かなのだろう。
だから軽い気持ちで走ってみようとした。走ってみた。
彼女(もちろん香穂ちゃんである)にも、そういうチャレンジなのだよと伝えた。
選ばなかった賽の目も同じくしてもう選べなくなるのだよと今日知った。
いかにさびを落とし、いかにコール厨として息を吹き返し、いかに上半身振りコピ厨として順応し、そしていかに1か月で松本香穂という人の人となりを理解し、僕なりの松本香穂像を作り上げるか。
その塑像はもちろん彼女本来の形からは遠く離れているだろう。そこまで僕は短距離は早くないし、元来完全にコミュ障の部類に入る人間だ。
それでも賽の目を決めた。靴を履いた。スタート地点についた。走り出した。
10年以上も現場で跳梁跋扈するヲタクをやっていれば、1か月くらいそんな鮮やかで軽率な時間があったってよいだろう。
よもや目を付けたものを2人も一気に喪うとは思ってもみなかったが。
やはり書くことはたいしてない。
あとは栗田さんにもうまく一言くらいは伝えつつ、香穂ちゃんとうまく表面上の長いお別れができればなあと、いうなればちょいと駆け抜けてみたいと、ただそれだけなのです。