「お互いこの歳まで、よくやってたなっていう」
「それは田村さんが思っていることですよね」

2008年の大晦日に行われた、田村潔司対桜庭和志、煽りVの一節。
「田村さんがいくつまでやるって決めたのかわからないですけど、僕の気持ち的には、100歳までやりたいと思う。ほんとあれですよ、ほんと死ぬまでやりたいですよ」
と続くのだが、この一節が、この元日にPASSPO☆を見ていて、唐突に思い浮かんだ。

この時の桜庭のように、クルーたちに、僕たちの半端な感傷を否定してほしいな、そう思う。
お互いに、よくここまでやってきたな。いや、それはあんたが勝手に思っていることだろ?
きっと、簡単に否定してくれることと思う。
逆にクルーがそんなことを言った時には、否定したい。そう思う。



元日。
実家に帰っていた。
お節、刺身、煮豚、雑煮、酒。
通り一遍の正月メニューを腹に入れ、毎年恒例の元日決戦・ニューイヤー駅伝を横目に見ながら、家を出て、元日決戦の地・TOKYO DOME CITY HALLへと赴いた。

・PASSPO☆「新年だよ!5周年とすこし便~全曲忘れず踊れるかな~」@TOKYO DOME CITY HALL

小雪が降っていた。

物販に並ぶ人、卒業を祝うために奮闘する人、特に所在なくたたずむ人。
三番目の輪に加わった。
知り合いに会うと、当然に「あけましておめでとうございます」と声を掛け合う。
誰も明けたなんて、思っていないのに。

会場の壁面がガラス張りになっていて、そこに張り出される、クルーたちのこの日の目標を記した書き初め。
「5年半の感謝を込めて」この日の主役。
「最後まで神経とがらせる。」我らが槙田紗子。
言葉の選び方、スペース足らなくなって「とがらせる。」がやたら小さくなっていること、どこをとっても実に、らしい、出来具合。

しばし時間をつぶし、いつも通り時間が押して、入場。
全国ツアーで撮りためた、パッセンの終演後コメントが流れていた。

客の入場完了を待たず、OA、はっちゃけ隊。
OAということもあり、最近のはっちゃけ隊単独出演ライブの様子として聞いていたような狂熱はなく。

客にスポットライトが当たるのはどうにも好きになれないので、僕ははっちゃけ隊はこれからも見に行かないと思う。
客の存在など、客席の「私」の存在など、どうでもいいと思う。
ステージが単に興味を惹かない、というのもある。
もちろん、すべていい悪いでなく、僕のただの趣味の話だ。

本編は僕たちの砂で積み上げた金字塔、永遠に続く十字架、少女飛行から。
まず、壇上に槙田紗子がいることに安心し、胸を撫で下ろす。
そんな2014年だったから。
その終わりに立ち会えなかったら、きっと一生残る傷になってしまうだろうと思ったから。
その危機に杏ちゃんが晒されていたことは、終演後の本人の独白にて知ることとなる。

最初のMCで、鏡割り。
酒樽をステージ中央に置いて、全員で。
思った以上に酒が跳ね上がり、かかったかかったと騒ぐクルー。
槙田さん、袖にタオルを取りに行き、神経質に何度も身体の各所を拭いては、不機嫌そうな顔。

With、バックのモニターに、緑色の誘導灯が振られる画が浮かんでいたとのこと。
もちろんあの人を匂わせてのことで、にくい演出だが、僕自身はあんまり覚えていないので特段の感慨はない。
でも、まこしゃまもあの人になるんだね、これから。
昨日の新体制初対バンではあんまり、不在を感じなかった。これから半年、一年、かけて、ゆっくり感じていくのだろうと思う。

ユニット曲で小休止、その後はフルサイズではないにしろ、20曲連続(!)でメドレー。
Final Visionも演出加えたバージョンだったっけね。
今年はまた少しずつ演出加えていくのかな、まあやりたいことはいくつもとは言っていたし、楽しみにはしている。

RUINは上がったねえ、かつての初にして唯一の披露だった赤坂以来、かな。
あの時はこれを披露するって聞いたから、当日券購入してかけつけたんだもんねえ。
まあ、あの時と同じく、振りらしい振りは手だけで、なかなかどうしていいかわからんようなもんだったけど。
ちゃんとかっちり振りつけて再生してやれば、使えないことはないんじゃないかねえ、この曲も。

やっぱり夢パスポートはM&Msだったねえ。全員じゃなかった。
Mになってしまうのだし、復活させるとしたら全員なのか、それともお蔵入りなのか。

メドレーやりきって、達成感あふれるMCしていたけれど、そこまで息が切れるわけでもなく。
勢いが出る構成にはしてなかったからさらりと20曲が過ぎていった、PO☆側としても、たたみかけるというよりはただの時間の制約その他の問題でこうしただけ、という感じではあったから、なのだけれど。
けっこうすごいことやってるとは思うんだよなあ。

なんか最近、そんなにすごいんだぞすごいんだぞと言わないけれど、そこそこに大変なことをやっている、というのが多いような。
そういうのですごいんだぞと胸を張るには年数を重ね過ぎたのかどうか。そんなところをセールスポイントにしたくはないんだろうな、なんて思いながら。

定番曲でフルサイズに復帰して、転換し、バンド編成へ。

1曲目、Perfect Sky。
をたく人生で緊張した現場1位タイの噴水広場を思い出す。
そのときほどではないにしても、少しばかりまだ緊張しながら、さこがギターを構える下手へ。

イントロ、さこが一音飛ばす。
どうなる事かと思ったけれど、その後はギターガン見のいつものフォームながら、間奏のソロ含めて、特に破綻なくやり過ごす。
これで落ち着いたのかな。

BREAK OUTなんかも、ホントにリフ、一生懸命に弾いていて。
キャンディールームも今回はちゃんと音が聞こえたかな。
袖に向かって、音量を上げてと人差し指を上へ上へ動かしてるのも、なんか、ああ、ギタリストさんやあ、そんな思いで。

まあ、こうやって、上手くなったなあと涙ぐむのだから、まだまだ全然安心できる域には来ていないし、まだまだ(そんなに良くない意味での)「アイドル」なんだろなあ、と。
それはかつての、片山さんの舞台を見るときの心境と一緒で。
丁度、この日のさこに対する感じは、はーちゃんでいうと「ACT泉鏡花」初日の、噛むなよ噛むなよと念じながら緊張しながら見て、やり終えた瞬間にふうっとため息をついた、あの時の感覚。

だから、いまのはーちゃんの舞台を見るときみたいに、全幅の信頼を置いて、今日はどんなもんを見せてくれるんだろうなと純粋に楽しめる、その域に到達する日を楽しみにしています。
面会で「少しは上手くなっていてくれよ」なんてプレッシャーかけたら「やめてよ」なんて言っていたけれど、この日は確実に成長していることを感じて、本当に嬉しかった。

杏ちゃんがちょっとリズム遅れ加減だったのは体調のせいか、リズムキープ裏担当のなっちゃんが離れた位置にいたせいか。
みおのベースが聞こえた(笑)。いや、どこでだったかな、渋公だったかな、それとも噴水広場だったかな、聞こえなかったんだよね、でもこの日はバッキバキ鳴っていた。

グラウンドクルーとのじゃれあいを映した転換VTRで小休止、その後はグラウンドクルー体制に。
後任ベースのスパイクさん、見るの初めてだったねえ。ホントに見つかってよかった。

考えてみたら、2014年中に口火を切る曲として重用されたベビジャンから始まって、22曲もこの体制でやってるのね。
このブロックからかな、さすがにさこの動き、だいぶ鈍重に。
かつての野音などで見たような鼻の穴広げてふらっふら、ということはなかったけれど、それでも流石に疲労の色濃く、MCじゃぼんやり。
まあ、MCでぼんやりなんてね、いつもと同じっちゃ同じなのだけれど。
逆に言えば、ここまではかなりしゃきしゃきやっており、ほんと、頑張ったなあと。
何度もあれだけれど。ほんと、ちゃんとした槙田紗子、大一番で、多くの人に見せられて、よかったなあと。

無題では玉井の杏奈さんが泣いて歌えなくなってたってねえ。
玉井さんが泣くってのもまた、鉄仮面の槙田さん以上に記憶がないのだけれど。
この日はどうだろうね、自分が弱ってたってのもあるだろうし、まあそうでなくたって、泣く日だよなあ。

ビーストはエアポートカルテット加えてのフルバージョン。
この曲が一番この構成、映えるんだろうねえ。

おねがいはみおちゃん演説でのスタートだったかね。あれ、演説したの向日葵だっけ。
おいて行かれた人はねえ、おいて行かれた約束はねえ…
生きていくしかねえよなあ、うん。

そんなみおちゃん、向日葵では師のベース抱えて、泣きながら、またバッキバキ鳴らしてたねえ。
みんな、泣いてたねえ。
この曲もまた、バックグラウンドまで考えれば、2014年を代表する曲の1つだったんだよなあ。

「I」、いつも通りさこが何か言ってたけど、まあ長くなかったってことくらいしか覚えておらん。
当然この曲でもまこが主役だったのだけれど、それにしても、さこ、しっかりしたよなあ。
最初の、折れそうに、今にも止まりそうになりながら、絞り出すように歌いだしたさこの声、忘れんだろうなあ。
この日はこうやって、ずっと過去と今とをクロスオーバーさせてたよなあ。
壇上の連中だって、きっと…いや、それどころじゃなかっただろうよね。でも、泣いたりなんだりってのはそういうことなんだろうとは思うのだよね。

TRACKS前にはまこしゃまが一人一人指名しながら、この人にはこういうことで感謝してるとか、こういう人だとか言っていたけれど、半分くらい、何言っていいかわか らないとかなんかいっぱいいっぱいになりながら、それでも一人ずつに声をかけていて、なんかもう、めちゃくちゃかわいいというか。
さこ、いろいろあるけれど、本当は強い人だと思うの、だってね。
強い人であってほしいとは思う。

アンコール、まこしゃまのための滑走路、あれは何ライトっていうんだろうね、長いケーブルに青い電灯がたくさんついたものを、2本、ステージから続くように後方へ引っ張って。
それがよく見えるように、ペンライト類は1階は下げてもらって。
綺麗に滑走路、引けていたわなぁ。
れりごーで締めたのもまこしゃまっぽかったわなあ。

れりごーの時、やたら泣けてきたんだよね。
唐突に、あ、これでまこしゃまがPO☆で歌って踊るの、最後なんだなあ、それが急に現実味を帯びて、迫ってきて。

ダブルアンコールはまた少女飛行、今度は新録バージョンだったのかな、それで終わり。

その前だったかな、ねぎのロングMC。
少女飛行の栄光とその後の挫折、というPO☆の歴史についてのMC、そして、その中で葛藤し続けた5年間についての言及。
PASSPO☆は私たちで本当にでよかったのかと思った時期もあった、と。
みんな、泣いてた、かな。

PASSPO☆がこの子たちでなくても、僕個人としては同じタイミングで見ていたら、はまっていたかもしれないね、そんなのはわからない。
けれど。僕が今好きなのはこのPASSPO☆なんだよね。それ以上でも以下でもなく。

何度も何度も語られた乱気流の歴史。
十字架が重すぎて、ずっとそれからを苦闘として語ってしまう。
たまに、不憫だなと、思ってしまうことが、最近はある。
同情なんて、欲しくはないだろうけど。

終演後は別の書き初め、今年の目標なんて貼ってあったけど、ねぎちゃん、「もう立ち止まらない」と。
まこが去って、もうとにかくこれからいろいろ大変で、本当にいろいろ大変な中で、それでも、これからは苦闘として語られるものでなければいいなと、それだけ思う。

自然体で、のびのびとできればいいな、と。
それなりにのびのびとはやってきたのだけれど、それにしても、2013年の終わりなんかは悔しさを露わにしたり、とかくそんなに幸福でなさそうな道ではあった気がする。
これからは、幸せに、のびのび出来れば、その上でPASSPO☆をさらに形作っていければ、歴史を重ねていければ、と。
いろんなプレッシャーはこれからもあり、なかなか難しいのだろうけれど。

ダブルアンコール、少女飛行の衣装だったんだよね。まこが選んだって。
パニエは新しくみおちゃんが拵えたものだったけれど、上着は、デニム素材の、すっかり色あせて白っぽくなった、当時のもの。
彼女たちの栄光と十字架、僕らの原罪を象徴する衣装。
耐えきれなかったね、泣いた。

少女飛行がなければここまで来られなかったのかもしれない。
少女飛行がなければここまで苦しまなかったのかもしれない。
少女飛行がなければもっと幸福な歴史を刻んでいたのかもしれない。
少女飛行が未だに一番の栄光だ。もうあれから3年半以上が経っている。

大きすぎる栄光を背負わされてずっと歩いて来て、それでもやっとここまで来た。
TDCホール、3,000人のキャパシティ、ソールドアウトして、6時間半もフライトして、ちゃんとステージに立ち続けて。
年数を重ねただけのものは身についたと思うし、それなりのものを出来ていると思うし。

成長の余地はいくらでもあると思うのだけれど、無限に成長できるというのもまた錯覚で。
年を重ねれば重ねるほど、今度は身体が動かなくなってきたり、クルーによっては既に満身創痍、いつか身体が悲鳴を上げることもあるのだろうし。

それでもまだ、上、見たいな、と。
まだまだ良くなると思っていたいな、と。
通常仕様、バンド、グラクル含めてのフル仕様。三兎をすべて追って、もっと素晴らしいフライトを夢みて。

最後は明るく笑って、にっこりと可愛く笑って、猫背のエースは退場して行った。
ひとつの時代の終わり。新しい時代の始まり。
とうに終わりは始まっているのかもしれないけれど。始まっていたっていい、ゆっくりと終わっていくのならそれもまたいい。
上を夢見ていたいなと思えたから、2015年もお世話になるなあ、見ていたいなあと思えたから。

今日、たまたま、年末に発売されたMARQUEEのインタビュー、読んだんだよね。
ここから始まると思ってもらいたいだかなんだか、文章としては忘れてしまったけれど、そんなことを書いてあった、ような。
少なくとも、僕は彼女たちが求めた通りに思っている。
始まって5年経って、見始めて4年経って、まだ夢、見てるから。

八人八色のマジックボックス、3通りをすべて追いかけて、荒波に抗い続けて。
まだまだ、きっと、頑張ってる途中だから。
終わるか、飽きるか、するまで、もう少し、見ていようかな、そう思えた、2014年の終わり。

やっと、年が明けた。

フライトが終わって、パッセン同士で口々に。
「明けましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします」



前述の、終演後に貼りだされたもう一つの書き初め。
さこ、「余裕のある人になる」。
らしいなと、思った。

2015年がいい年になりますように。