へっぽこママと武学一家  山田洋次三部作「隠し剣 鬼の爪」を観た! vol.2 | リッツの漫画ブログ

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続きです

 

来客の主は左門でした。 只ならぬ雰囲気。

 

左門「遂に来るぞ・・・・。 弥一郎が唐丸籠に乗って、明日の昼にここへ着く。」

 

宗蔵「な! 弥一郎が・・・・、唐丸籠だって??」

 

宗蔵が驚くのも無理はありません。

 

唐丸籠に乗って地元に戻ってくるということは、重罪人として護送されてくるという事。

 

↑罪人を運ぶ唐丸籠(とうまるかご)

 

しかも、幕府には知られないよう、秘密裏に処されることを意味します。

 

左門「江戸で革新派が動いていると、家老の堀殿に密告されて、

 

謀反を企てたとして、多くの人間が切腹させられた。

 

弥一郎は切腹も許されず、投獄され極刑に処せられるそうだ・・・・。」

 

武士としての矜持も、自分の一族を守る事も許されません。

 

三年前の宗蔵の胸騒ぎが、はからずとも当たってしまったのです。

 

↑実際に撮影に使われていた牢

 

冬もあけて間もない、まだ寒い北国。

 

雨をしのげる吹きっさらしの牢屋に、弥一郎は重罪人として放り込まれました。

 

無論、絶えず見張りが付き、誰も会いに行くことは出来ません。

 

朝晩一杯の粥が与えられるだけで、出るときは死体になった時です。

 

 

海坂藩にきな臭い匂いが漂い始めます。

 

ひとり身である宗蔵に見合いの話を持ってきた左門は、

 

見合いどうこうよりも、きえの事をちゃんとしてやれと宗蔵に忠告します。

 

いつまでも、きえとこのままで居れるわけはない・・・・・。

 

宗蔵にもわかっていたことでした。

 

↑仲の良い若夫婦にしか見えない

 

宗蔵「きえ、何処か行きたいところはないか?」

 

きえ「行きたいところ? 海を、見たいです! 見たことがないので・・・・・・!」

 

突然のデートの申し出に喜ぶきえ。

 

宗蔵はきえと直太を連れて、天気の良い日に海に行きました。

 

↑仲睦まじい姿

 

きえが用意してくれたお弁当を食べながら、宗蔵はきえに実家に帰る話を切り出します。

 

せめて宗蔵が嫁をもらうまででもいいので、自分を置いてくれときえは頼みます。

 

きえ「わたすがお嫌になってしまったんですか?」

 

宗蔵「きえを嫌だなんて思ったことは一度もねぇ。 だけど、おめぇは若くて美しい。

 

良い旦那をもらい、結婚して幸せにならねばならん。 俺の女中で一生を終わってはいかんのだ!」

 

ホロホロときえは涙を流します。

 

きえ「それは、旦那はんの、ご命令でがんすか?」

 

 

宗蔵「そうだ・・・! 俺の命令だ! 長え間、世話になったのぅ。」

 

気立てが良くて優しい娘であるきえは、宗蔵の初恋の相手でもあったのでした。

 

大切だからこそ別れを切り出さねばならなかった宗蔵。

 

宗蔵の心中を知ってか、何も言わずにしたがったきえ。

 

身分の差が二人を裂きます。

 

 

きえと別れてほどなくして、宗蔵はまたしても大目付甲田から呼び出されます。

 

甲田「実はな・・・・、狭間弥一郎が脱獄した。」

 

宗蔵「・・・・ええ!!」

 

極刑に処せられた上に脱獄。

 

こうなると、弥一郎に残された道は、藩によって粛正される他ありません。

 

 

甲田「そこでだ・・・・、お前は狭間と同じくらいの一刀流の使い手。

 

お前が、狭間を打ってはくれぬか?」

 

宗蔵「わ、私にかつての友を殺せと仰せられるのですか?」

 

甲田「そうだ! これは藩命である! 逆らえばお主も狭間の仲間とみなす。 意味は分かるな?」

 

甲田は弥一郎を打たねば、宗蔵もその家族(左門や志乃)も罰するというのです。

 

宗蔵「・・・・・・・藩命、お受けいたします。」

 

 

藩命を受けたその足で、宗蔵はある人の元に向かいます。

 

自分や弥一郎の剣の師匠であった、戸田寛斎でした。

 

戸田寛斎は、先の藩主の時に禄を返上し、農民になり静かに暮らしていました。

 

寛斎「片桐宗蔵、お前、何かにおびえているな?」

 

藩命により、弥一郎と果し合いをせねばならなくなった旨を伝えます。

 

寛斎「狭間弥一郎と、お前は、何時かこのようなことになる気がしていた・・・・・。」

 

↑戸田寛斎役に、田中泯さん

 

寛斎は何も言わず、木刀を振り始めます。

 

寛斎「お前に技を授ける。 前に伝授した戸田家秘伝の鬼の爪ではない。」

 

宗蔵に稽古をつけてくれるのです。

 

寛斎「剣を握れば誰だって恐れを抱く。 体は強張り動くことが出来なくなる。

 

だがそれも、切り合いながら解せば良い。 だが、心は何時だって前を向いている。

 

それが勝敗を分ける!」←常に冷静を心掛けろってことかな?

 

いつしか寛斎に腹を切られていた宗蔵。

 

寛斎「もう一度だ!!」

 

 

夜、明日の果し合いの事を思い、寛斎との稽古を思い出していた宗蔵。

 

宗蔵「あのような恐ろしい技・・・・、ワシに出来るかのぅ・・・・・。」

 

その時、誰かが玄関先で声をかけてきました。

 

それは、かつて弥一郎を見送った時に会った、弥一郎の新造(嫁)でした。

 

桂「人目をはばかる身で申し訳ありませんが、明日、狭間を逃がしてはもらえませんか?

 

私の身体を好きにして構いませんので・・・・・・。」

 

桂は、自分の身を犠牲にしてまで、弥一郎を救ってくれと言うのです。

 

 

宗蔵「ご新造は、何ということを言うのです! もしかしたら明日、私と狭間は切り合いになり、

 

どちらかが死ぬかもしれません! 私は何も聞かなかったことにしますので、もう帰りなせえ!」

 

桂「・・・・・・片桐様は、夫が言ってた通りのお人ですね・・・・・。 

 

私は今から、ご家老堀様の屋敷に向かいます。」

 

宗蔵「駄目だ!! 堀殿は、貴女が思っているような人ではねぇ! 行ってはならねぇ!」

 

宗蔵の言葉を背中に受けつつ、桂は夜の闇に消えていきました。

 

↑弥一郎がたてこもった農家

 

弥一郎は抜け出した牢の近くの農家で、娘に刃物を突き付けて人質にし、

 

立てこもっているというのです。

 

現場近くまで来た宗蔵は、既に鉄砲隊が来ているのに不穏な気配を感じました。

 

鉄砲隊隊長「私達は何時出動すればよいですか? 

 

ご家老からは農家の者もろとも撃ち殺してよいと言われていますが。」

 

堀将監、クソみたいな男ですね!!

 

↑ボロボロの弥一郎

 

宗蔵「いや、まずは私が狭間と会います。 夕刻までに私が戻らなければ、

 

ご家老のご命令を遂行してください。」

 

宗蔵「狭間、俺だ! 話がしたい。」

 

宗蔵を見ると建物に入り、娘を開放する弥一郎。

 

弥一郎「片桐、お前が追手だか・・・・。 家老堀の差し金か。」

 

↑剣の腕では弥一郎が勝っている

 

宗蔵「狭間、武士として、ここで腹を切れ!」

 

弥一郎に説得を促すも、聞き入れようとしない弥一郎。

 

弥一郎「俺が何故逆賊なのだ! 切られねばならんのは、私腹を肥やす堀ではないか!」

 

宗蔵「鉄砲隊が来ている。 絶対に助からねぇ。 腹を切れば武士としての面目は保てるんだ!」

 

宗蔵の説得も空しく、自暴自棄になっている弥一郎。

 

弥一郎「お前を切ってから逃げてやる! 片桐! 抜け!!」

 

 

屋外へ飛び出す宗蔵と弥一郎。

 

弥一郎「お前は人を切ったことがあるか? 俺は江戸で辻切をして何人も切ったぞ!」

 

宗蔵は人を切ったことはありません。

 

切りたいと思ったこともありませんでした。

 

 

切り結びながらも、弥一郎に踏み込めない宗蔵。

 

このままではやられてしまいます。

 

呼吸を整え弥一郎に向き合う宗蔵。

 

間合いを詰め、また引いて・・・・・。

 

そして、弥一郎が上段構えをしたとき、弥一郎から目をそらした宗蔵!

 

 

弥一郎が切り込んできたときに、宗蔵は背を回して腹に一線!!

 

一瞬何が起こったのか分からなかった弥一郎。

 

弥一郎「な、何だ? 今の手は・・・・。」

 

自分の腹から大量の血が・・・・・。 勝負はつきました。

 

戸田寛斎から伝授された「龍尾返し」でした。

 

 

弥一郎「卑怯な手を・・・・! 許さねぇ!」

 

振りかぶってきた弥一郎の右腕が、銃声と共に吹き飛びます!

 

片桐の命を待たず、鉄砲隊が弥一郎の粛正を始めたのでした。

 

宗蔵「やめろ! やめろ~~~~~!!」

 

 

勝負はついていたのに!!

 

次々と弥一郎に銃弾が撃ち込まれ・・・・・。

 

弥一郎は静かに倒れます。

 

宗蔵「すまん、すまんかった! 鉄砲で死ぬなんて、悔しかろうのぅ、狭間!」

 

泣きながら弥一郎の目を閉じさす宗蔵。

 

↑死んだ弥一郎の傍から離れなれない宗蔵

 

武士としての正義を信じ、大志を抱くも阻止され、

 

誇りも家族も何もかもを奪われ、そして武士として死ぬことも出来なかった弥一郎。

 

剣で弥一郎を送ってやれなかった自分の不甲斐なさと、

 

自分や弥一郎の在り方にやり切れなさを隠せない宗蔵。

 

そこに、桂がやって来ます。

 

 

桂「堀様は、片桐様に果し合いをやめるよう、言わなかったのですか?」

 

宗蔵「夕べ貴女は、ご家老に頼みに行ったのですか?

 

ご家老は貴女に約束をされたんですね?

 

私は何も聞いていません。 貴女は騙されたのです!」

 

フラフラと弥一郎の死体に近づく桂。

 

言いようのない気持ちが、宗蔵の胸中を占めます。