今日はプラス思考で考えてみようってことをお話したいと思います。

はじめに断っておきますが、今日お話しすることは一個人としての物言いであって、裁判所書記官をはじめとする裁判所職員ひいては裁判所全体がこのようなものの考えをもっているわけではありませんので誤解なきよう。


いよいよ迫ってきた裁判員裁判。先日NHKの番組でも取り上げられていました。

今でも多くの方々が国民参加型の裁判のあり方に疑問が投げかけているようです。なかなか理解が得られないのは事実です。たしかに制度を担う法曹三者によるアピールに足りない部分があったかと思いますし、今後とも情報を発信していかなければなりません。


ただ、何事も消極的に捉えてしまうとうまくいきませんし、楽しくありません。楽観的に、とは言いません。ただもう少し物事をプラス思考で考えてもいいのではないかなあとワタシは思うのです。


ワタシは裁判事務に携わる端くれで裁判のことをちょこっとかじっているからこんなことを平気で言えてしまうのかもしれません。

裁判のサの字も知らなかった人が、いきなり刑事裁判に参加して、人を裁くことになる・・・たしかに非常に不安に苛まれる心中は察します。以前、一般市民が裁判員になって凄惨な事件現場をも証拠で見て心的ストレスを受けかねないなどの記事も目にしました。

かくゆうワタシも刑事事件に携わっていた頃、証拠を見て目を背けたくなるものがいくつもありました。


皆さんが想像する以上に裁判員になることは体力的、精神的、金銭的、時間的に大変な負担を強いることになるでしょう。ただ、それだけにやりがいはどの仕事にもましてあることでしょう。


もうすでに眼前に迫っているのです。逃れようがありません。嫌だ嫌だの大合唱でなんとかなるのでしょうか。

廃止するには相当の労力と時間が必要です。裁判員に出るくらいなら罰金(正確には過料と言いますが)を払ってでも出たくないと言う人がいますが、それってあまりにも後ろ向きなのではないでしょうか。なぜ、高いお金を払わなくてはならないのでしょう。


メディアはとかく殺人、殺人、死刑判決に一般市民が巻き込まれるなどと断片的なことしか言わないのですが、殺人事件しか裁かないわけではありません。

まして死刑判決なんていうものは年間何件も出るものではありません。確率的に裁判員になることも難しいのにさらに死刑判決に関わるのはもっと難しいのです。

仮に死刑判決に関わることがあってもそれは9人の判断者の判断であって一個人が抱え込まなければならないものではありませんし、判決がそのまま確定するわけでもありません。

日本の裁判システムは不服が二回言えるわけで上級の裁判所でさらに審理されることが往々にしてあります。判断がくつがえることもありますし、そのまま上級の裁判所で確定することもあります。皆さんが下した死刑判決が維持されたとしても、それはさらに複数の職業裁判官が判断した結果です。


不安があって当然です。そして逃れたいと思うのも当然の思いだと思います。

だとしても嫌だな~って思い続けても前に進まないのではないでしょうか。

ワタシは目の前に壁があるとしたら、どうしたらこの嫌なことを少しでも楽に過ごせるかなあって思ったりします。ワタシがな~んも考えない楽観論者だからなのかもしれませんが、少しでもものはためしだって思うと救われるのでないでしょうか。


裁判員として裁判をする、判決を下す。これは司法権を行使していることに他ならないのです。

皆さん、社会科の授業でならった三権。これを行使している場面を想像できましたか。行使している実感が沸いたことがありますか。選挙に行って、投票した党や議員にテレビで当確のお知らせが出たときぐらいじゃないですか。これでは実感があるのかないのかわかりません。

これが直接行使する場面に遭遇するのです。ゾクゾクしてきませんか。

係わり合いのなかった事件に裁判所なんて一生行かないと思っていたくら~い建物の中で見ず知らずの人と議論を重ねてひとつの結論に至る・・・こんな経験をこれまでしてきましたか、そしてこれから先できますか。

係わり合いがない事件でもあなたが住んでいる地域で起きた、あなたの地域の人が犯した(必ずしもこの限りではありませんが)のです。地域のことは地域で解決する。その一翼を担うことになる。社会とのつながりが生まれる。それをどうして批判できましょう。

何事も他人任せにしていませんか。税金を払いさえすればいいとか、ワタシはこれだけのことをやっているのだから人からなにか義務を課せられるべきじゃないという。今の自分、自分さえ危ういのだから他人のことなんてかまっていられない、自分のことさえなんとやらという考えを見直すきっかけになるんじゃないかと思うのです。


我々のアピールが足りないというご意見はごもっともな批判だと思うのです。この制度自体、根本的に反対なのだという意見があることも承知していますが、知られていないから批判されている部分もあるかと思うのです。

少しでも興味を持たれたなら最寄の裁判所へ問いかけていただければメディアに比べればはるかに有益な情報を得ることができると思います。そしてもう少し裁判員裁判について興味を持ってもらえると思います。