とある弁護士先生から大手銀行の不動産仮差押申立てを受けました。

仮差押えというのは,債務者(ここではお金の借り手と考えてください)から任意にお金を返してもらえない場合に、民事裁判の判決による強制執行を確実にするために財産を保全しておく手続きを言います。


大手銀行から融資を受けていた債務者がお金を返さない。いや返せない。このご時世よくある話です。

そこで債務者の不動産を差し押さえて競売に付して売れたお金から回収して少しでも不良債権の目減りを図るわけですが、裁判をしてっていう手続きを踏むとどんなに早くとも1ヶ月~2ヶ月程度かかってしまいます。この間に不動産を売却されようものならみすみす債権回収の途が絶たれてしまうわけです。

民事裁判を起こした場合、当然相手方にも裁判に関する通知が行きます。うかうかしていると強制執行を逃れようと財産を処分されてしまうことが多々あるのです。

このような財産の散逸を防ぐべく保全手続きがあるのです。おおむね書面審査のみで迅速に裁判がなされ、不動産の処分が禁止されます。相手方には知られずに。


さて,今回の申立て。

委任状によると3月上旬に委任を受けているにもかかわらず、寝ぼけた時分の申立て。さぞやお忙しいでしょうね、士業。

不動産の登記簿謄本、固定資産評価証明書はそれぞれ3月下旬にとってあったようです。4月に入って再度、登記簿を取り直したようです。これは裁判所からできるだけ申立日直近の登記簿を取るように指導されるからでしょう。というのは,あまりにも申立日から離れている登記簿ですと、その時点では債務者名義であったにもかかわらず、いざ仮差押えの登記を法務局にお願いしてみると、名義がすでにうつされていたということが往々にしてありうるからです。

まさに本件がそのケースでした。


登記簿を確認してみると、3月末にすでに他人名義にうつっていました。3月下旬での登記簿にはまた債務者名義だったようで、この弁護士先生は取り直した登記簿の確認を怠ったようですね。非常に初歩的なミスです。


このままでは申立てを受けたとしても、仮差押えはできません。他人名義ですから。申立書を持って帰ってもらったことはいうまでもありません。

また別の手立てを考えてもらうしかありませんね。うーん、大手銀行がクライアントで、しかも不動産価格も固定資産評価額でいいお値段だったので後から大目玉かもしれませんね。