裁判所の競売物件で転売詐欺容疑、7人を逮捕、千葉県警
新潟地裁の競売で落札した土地の代金を支払わないまま転売し、購入者から現金約2200万円をだまし取ったとして、千葉県警生活経済課などは6日、不動産業岩井清高容疑者(65)=神奈川県鎌倉市梶原4丁目=ら計7人を詐欺容疑で逮捕した。
岩井容疑者は調べに対し「販売はしたが詐欺ではない」と容疑を否認。他の6人は認めているという。
県警の調べでは、岩井容疑者らは04年10月、新潟地裁新発田支部の競売で新潟県胎内市の土地約4万平方メートルを約4600万円で落札。期限までに代金を支払わぬまま、土地を宅地として勝手に整備し、広告用のチラシを作製。現地販売所も設置して、同市内の男性会社員(65)ら10人に「裁判所の競売物件なので安い」などと販売、現金計約2200万円をだまし取った疑い。
県警によると、岩井容疑者らは03年2月から05年11月にかけ、千葉や京都など26府県の裁判所で競売の土地約130件を落札。このうち約半数の物件を代金未納のまま約400人に総額約9億8000万円で転売していたという。
2006年07月06日20時59分 asahi.com
被疑者は詐欺容疑を否認しているようだ。
被疑者の言い分を察するに,土地建物代金の一部を支払っているため(裁判所の競売に参加するためには前もって少なくない保証金を積む必要がある。落札できればこれは代金の一部に充当される)を,残金を支払っていないのは支払いが滞っているだけで後日支払いをする意思があって,ちゃんと代金を支払った上で転売するつもりだったので詐欺ではない,といったところか。
代金を支払う意思はおろか,その支払い能力すらない者がよくこのような否認をする。
はじめから支払う意思もないのに支払いをしないことは詐欺に当たるけれども,支払いがまだされていないというだけでは詐欺には当たらない。
これは民法上の責任を負うけれども刑法上の責任を負わない。
民法上,相手方は契約を解除するか,支払いが怠ったことによる損害の賠償を請求して解決しろということになるのだ。
ただ,今回のケース。
落札後,一定の期間内に残金を支払わなければ買主となる資格を失い,さらに保証金も没収されてしまう。
つまり,土地建物の正規の所有者ではないのにかかわらず,他人の物を転売したことになる。
それが詐欺行為にあたるのではないかということで逮捕されたことになるが,ただ他人の物を転売したことが詐欺になるというわけではない。
実は法律上,他人の物を売買することは認められているのだ。これは罪ではない。
他人の物を売ったとしても,将来,他人から自己が買い受けることができれば,結果,自分の物を転売したことになるので何の問題もないからだ。
今回の件で問題となるのは,残金を支払わずに買い受ける権利を失った場合,もはやその権利を取得することはありえないので(落札者の中で落札価格が次順位の者に買い受けるか,再度,競売が行われ他人が買い受けることになる),自己に権利がうつることがないにもかかわらずで転売した行為か否か,ということになる。転売先としては他人の物を買わされるわけだから所有権を正規に取得できず損害をこうむる訳だ。
ところで,被疑者は落札した物件の大半を代金未納のまま転売したというが,そうすると裁判所に没収された額はバカにはならないのではないかと思うのだが,それでも転売したい利益のほうが大きかったんでしょうねえ。
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