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ビジネススキル向上のための書評ブログ

日々の読書で感じたITやテクノロジー、経済などビジネスに関する様々なジャンルの書物を独自の観点で評価していく書評ブログです。

第83回となる今回は、マッキンゼーの採用マネージャーを長年務めた著者が明かすマッキンゼーが求める人材にフォーカスしたこちら


採用基準/ダイヤモンド社
¥1,575
Amazon.co.jp

ぼくの評価☆☆☆☆☆☆
(マッキンゼーが求める人材とは?今の時代が求める優秀な人材とはなにか?に迫る一冊)


本書は世界でも有数のコンサルティングファーム、マッキンゼー・アンド・カンパニーにて12年間にわたり採用マネージャーとして関わった著者が、人材育成、マッキンゼーが求める人材像、優秀な人材の定義をまとめた一冊である。

MBAホルダーや高学歴者を多数抱え、入社までの道のりは狭き門と言われるマッキンゼー

マッキンゼーに関わらず外資系コンサルティングファームはどの企業も入口は狭く、求められる資質は高度なものが要求される。
英語力、コミュニケーション能力、分析力、課題解決能力、地頭力、リーダーシップ・・・挙げていけばキリがないほどだ。

マッキンゼーや外資系コンサルティングファームを目指す学生は当然本書に興味を示すと思うが、内容を理解するには少しハードルが高いということを理解して読んで欲しい。

しかしその分読み応えは十分にあり、将来のキャリア形成のアドバイスとなるだろう。
理解できないところは大人に聞いて、意欲さえあれば第一志望の企業へのトビラも大きく開かれるかもしれない。

mckinsey3


本書が説く論点として3つあげよう。

1.リーダーシップ
2.日本社会におけるリーダーシップの認識欠如
3.日本企業で考えられていた優秀な人材と著者が考える優秀な人材の認識のズレ

この3つに集約される。
特に「リーダーシップ」という言葉は繰り返し本書内で登場する。
それほど日本社会におけるリーダーシップ欠如の問題意識を感じているのだと思う。

前半はマッキンゼーの面接での経験談を通して、どういった人材に興味を示しているのかといったことが具体的に書かれている。
後半は日本社会に問うリーダーシップの欠如やそれがもたらす問題点についてあらゆる角度から論じている。



第1章では採用基準に関する誤解を紐解いている。

誤解その1:ケース面接に関する誤解
事前に結果を詰め込んで知識で望むのはNG。ケース面接ではその人がどれだけ考えることが好きかのプロセスを見ている。

誤解その2:”地頭信仰”が招く誤解
①経営課題の相談を受ける→信頼性を構築する能力(相談したくなる人物)
②問題の解決方法を見つける→地頭
③問題を解決する→リーダーシップなどの総合的スキル(ここが最も重要)
よって②くらいでしか発揮されない。
思考スキル+思考意欲+思考体力。
とにかく考えることが好きで、かつ何時間も考え続けられる思考体力が必要。

誤解その3:分析が得意な人を求めているという誤解
分析力=現状を把握する能力は確かに大事だがそれよりも大事なのは「ではいかにして解決するか」を考え、実践できること。そこで必要になるのは仮説構築能力。

誤解その4:優等生を求めているという誤解
日本社会では平均的にレベルが高いことが優秀な人材だと思われているが、マッキンゼーではなにか一つに突出して高い能力を持っている人が高く評価される。あとはチームワーク。よって採用しているのはかなりとんがった、バランスの悪い人だったりする。

誤解その5:優秀な日本人を求めているという誤解
マッキンゼーが求めているのは、
リーダーシップがあること
地頭がいいこと
③英語ができること
④日本語ができること(現地語)
採用基準に国籍は関係ないので、上記4つを満たす人材であれば採用する。
近年は日本人よりも中国を始めとする留学生のほうが条件を満たす人材が豊富にいる傾向があり、このままでは日本支社の日本人割合が低下する可能性がある。
特に日本人の場合①の欠如が顕著。



第2章以降はリーダーシップに関する間違った認識とリーダーシップがいかに重要かが書かれている。

特に何度も語られているのが、日本社会が優秀な人材の定義にリーダーシップという項目が圧倒的に欠けているという問題意識だ。

リーダーシップとはリーダーだけが備えるスキルではなく、全員に求められるスキルであり、全員が備えることで全体のパフォーマンスが圧倒的に上がるという。

これは第77回の「意思決定をシンプルに」という項目につながるかもしれない。

意思決定やオペレーションなどのパフォーマンスを徹底的に高めるためには、リーダーシップがあり、高度な専門性を備えた人材にどんどん権限を移譲してプロジェクトを任せ、チームを動かしていく必要がある。

さらに優秀な組織であれば、意思決定自体をシンプルに削ぎ落していく哲学とシステム化を構築し、クラウドを駆使した情報共有や自動化(リーン・スタートアップのアンドンなど)を構築しているかもしれない。



ぼくが日本社会にリーダーシップの必要性が認識されていない理由は歴史にあるのではないかと思っている。

日本には武士の時代が長く続いた時期がある。
武士の時代は身分が上の者に絶対逆らうことができなかった。
切腹という言葉が残っているように、逆らったり間違いを犯すと死ぬことも運命づけられるほど強烈な縦社会のトラウマがDNAに少なからず刻み込まれているのではないだろうか。

これは世界的に見ても稀な社会で、日本人はそれをどこか誇りに思ってきたという歴史もあるのだ。

ダイバーシティがもたらす成果の裏付けや全員がリーダーシップを持った組織の方がパフォーマンスが高いことについては、まだあまり知られていないこともあると思うが、そういった歴史や日本人特有のDNAが一部影響していることも否定できないと思う。

これは難しい問題だ。
本書をはじめとした社会に問いかける側の姿勢とそれを理解しようとする社会の土壌が必要だからだ。

しかしいずれ、さらに日本企業の業績が世界から取り残されるようなことが次々起こるようなことがあれば、問題意識が危機意識へと変わり、全員がリーダーシップを持った組織の必要性と共に、ダイバーシティが浸透した社会が来ることも想像できなくはない。

あとは世代交代、時代の移り変わり、日本人が持つポテンシャルを信じるしかないと思っている。




なぜそこまでリーダーシップの必要性を説くのか。

恐らくコンサルティングは、ある事業が誤った方向や思いもしない方向に進んでいるのを軌道修正する仕事であり、大きく舵を切るには強いリーダーシップが求められることを長い経験から骨身にしみて実感しているからだと思う。

コンサルティングといっても行なっていることは本質的に経営者となんら変わりはない。

コンサルティングで最も重要なことは「あの人に任せればどんな問題でも解決してくれる」ということに尽きる。
それしかない。
「あの人に聞けばなんでも知っている」や「あの人に聞けば問題を見つけてくれる」では何の意味も成さないということではないだろうか。

これはアントレプレナーにも当てはまる。
どんなに素晴らしいアイデアがあったとしてもそれを実現できなければなんの意味も成さないことと一緒だ。
その点ではコンサルタントもアントレプレナーも一緒である。

ビジネスの世界において、プロセスばかりを語るのは三流、実現して二流、高い成果を出して一流だと思う。





本書はタイトルからもリクルーティングに関する本だと思われがちだが、読んでみると幅広いビジネスパーソンに参考になる内容だ。

なにより長年マッキンゼーで採用マネージャーをしてきた著者が、伝えたいことを凝縮して書き記した内容なのだから、その濃さも十分に感じ取ることができる良書である。





最後となるが、
2012年も最後まで本ブログにお付き合いいただいたことに感謝を申し上げたい。

2013年はどんな年になるだろう。
師走に政局が動き、株価は1万円台にのった。
2013年は今年よりも飛躍できる年になるだろうか。

みなさんのビジネスに幸多きことを願って大晦日にこのブログを締めくくりたいと思う。
よいお年を。


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第82回となる今回は、プリンタ、スキャナが3D化した未来が生み出す産業革命について書かれたこちら


MAKERS―21世紀の産業革命が始まる/NHK出版
¥1,995
Amazon.co.jp

ぼくの評価☆☆☆☆☆☆☆☆☆
(ビットからアトムへ。今後20年で製造業に起こるムーブメントを予測した一冊)


本書は、最近WIRED編集長を辞任したことでも話題になったクリス・アンダーソンの新書である。

本書の話に入る前にクリス・アンダーソンWIREDを辞任した理由を知っておく必要があるだろう。
クリス・アンダーソンWIRED編集長をしながら、2009年にラジコン飛行機製作会社の3Dロボティクスを共同創業している。

DIYドローンズ in 3Dロボティクス
http://store.diydrones.com/

3Dロボティクスはまさに本書でいう21世紀型製造業のメイカーであるが、いよいよCEOとしてキャリアチェンジするというのだ。(詳細はリンクを参照)
メイカームーブメントに自らのキャリアを投じたのである。
これを踏まえて本書を読むと何倍もの説得力をもって楽しめる。


クリス・アンダーソンWIRED編集長を通じて、インターネットの未来を予見する先見性や分析力には定評があるビジョナリーでもある。
彼はロングテールという有名なネット上の概念を生み出した人物としても知られ、数々のベストセラーを生み出している有名作家だ。

前書『FREE』フリーミアムという概念および無料経済のビジネスモデルを深く掘り下げ、アプリやネットビジネスの収益モデルの奥深さを知ることができた。

ぼくが彼の書物に対する信頼は厚く、内容を見ずとも購入したくなる数少ない作家の一人である。


本書はモノ×ITの話である。
これはぼくだけでなく誰もが一度は考えたことがある世界だろう。
本書ではネット上の仮想空間をビット、現実世界のモノをアトムと表現している。

過去10年。
我々はビットの潜在力をこれでもかと思い知らされてきた。
ビットの世界は時にもてはやされバブルを生み、我々のライフスタイルを変化させてきた。

しかしあくまで我々は物理的な存在だし、所有しているモノも物理的なアトムである。
なにかとビットが取り上げられることが多いが、物質的なアトムの経済はビットの経済の5倍はある巨大な経済圏だ。

過去10年はビットによるイノベーションが加速した時代だったが、今後10年はビットがアトムの世界に流れだし、製造業のあり方を変え、やがて世界を変えていくというのが本書のテーマである。



ショッピングを例にメイカームーブメントを考えてみよう。

クリス・アンダーソンが言うように、ショッピングサイトで需要が少ないロングテール商品を購入することができるようになったのは大きな変革だった。
インターネットの進歩は経済のパラダイムシフトを生み、ショッピングの需要構造は変わった。
これは大きな変化だ。

しかしメイカームーブメントは購入した後にある。
我が子へのクリスマスプレゼントにロボットフィギュアをネット購入するとしよう。

購入する商品を決定し、購入ボタンを押すとフィギュアの仕様書が3Dプリンタに転送され、印刷される。
印刷が開始されると3Dプリンタがプラスチックを成形し塗装して瞬時に手に入れることができる。
まるで商品がテレポーテーションしてきたかのように。
これだけでも3Dプリンタの可能性がお分かりいただけるのではないだろうか。

もしこれが可能になれば、物流が根底から変わることになる。
これはとてつもない変化だ。

現在、3Dプリンタは低価格化への一途をたどり一般家庭でも手の届く価格へと向かいつつあるという。
これはかつてコンピュータからパーソナルコンピュータが生まれ、やがて各家庭に普及していった歴史に類似しているという。



製造業に目を向けてみよう。

これまで製造業は大きな工場を建て、少品種大量生産が当たり前であった。
しかも一度巨大工場を作ってしまうと止まることができない。
巨大工場は20世紀型製造業では大きなアドバンテージだったが、21世紀型製造業では欠点でもあるという。
大量生産し続けて需要もおおよそ変化しない製品であればリスクは少ないかもしれないがそんな商品は限られているだろう。
商品によっては短期間で製品がコモディティ化する21世紀の製造業においては刻々と変化する市場に対応する柔軟性や機動力が強さを発揮する。


そこでもう一度登場するのが、3Dプリンタと3Dスキャナである。
これらを用いると、多品種中量生産が可能になるという。
1個作るコストと1000個作るコストがほぼイコールになったらどうなるか。

CADで製品をデザインし、3Dプリンタで出力する。
これは顧客ごとの要望に応じたカスタマイズをも可能し、高機能な3Dプリンタであれば工場さながらのスピードで個別にカスタマイズしながらプリントすることが可能だという。
こういった大量生産に見合わずしかし数種類のパターン化されたモノやカスタマイズされた商品には高い重要がある。
これを本書ではメイカーズプレミアムと呼んでいる。
3Dプリンタや3Dスキャナはビットのロングテールからアトムのロングテールを促す。

本書にこれらに関する詳しい記述がある。
紹介しよう。


-本書112P1行目より-
商業用の3Dプリンタで使える素材はいまのところ数十種類しかなく、ほとんどは金属かプラスチックの一種だが、そのほかのさまざまな素材も試されている。研究者は、木材パルプからカーボンナノチューブまで、めずらしい素材を実験していて、このことからも、3Dプリンタの可能性の大きさがわかる。電子回路を作れる3Dプリンタもあり、ゼロから複雑な電子機器を生み出すこともできる。液状の食品、たとえば溶けたチョコレートや砂糖などを押し出して、3Dプリンタでカップケーキを装飾する人もいる。
 大規模なものでは、たとえば3Dプリンタでコンクリートを出力し、多層階のビルを作ることもできる。いまのところは、ビルと同じ大きさの3Dプリンタが必要になるが、そのうちセメントトラックに3Dプリンタが組み込まれ、建築家が描いたCAD設計図を読み込み、それに従って、位置情報を認識しながら、どの場所にどれだけのコンクリートを置くかを自動的に判断するようになるだろう。
 一方で、その対局に向けて研究を進めているエンジニアたちもいる。分子レベルでの3D印刷だ。現在では、3Dで印刷された不活性素材を足場として、その上に患者自身の細胞の層を重ねる「バイオプリンタ」が存在する。細胞が配置されると、それらが組織に成長する。すでに、研究室の中では膀胱や腎臓などを使った実験が行われている。幹細胞を使って「プリント」すると、その組織から動脈と内部構造が形成されるようになる。
 3D印刷の未来像は、とてつもなく壮大なものだ。3DのCADソフト大手の一社、オートデスクのCEO、カール・バスは、コンピュータ制御によるもの作りの普及は、これまでの大量生産と同じ規模の変革をもたらすだろうと言う。3D印刷は従来の消費者向け商品の製造方法を変えるだけではなく、どんなサイズにも対応できる。生物学分野の極小なものから、家や橋のような大きなものまで作ることができるのだ。
 バスは、ワシントンポスト紙に投稿したエッセイの中で、この新しいもの作りの手法の、なにがそれほど従来と違うのかを説明している。

 高品質な品物を少量だけ生産し、手頃な価格でそれを販売できるようになれば、経済は破壊的な影響を受ける。そしてここに、アメリカの製造業の未来がある。
 3D印刷のようなコンピュータ化されたもの作りのプロセスは、コストをかけずに複雑さと品質を実現してくれる...これまでの紙のプリンタは、ただの円もモナ・リザも、同じく簡単に印刷できた。3Dプリンタにも同じことがいえる。

 デザインの立場から見ると、これは革命的だ。デザイナーは製造過程について気にする必要もなければ、知る必要もない。コンピュータが勝手に機械を動かしてくれるからだ。同じデザインを、金属でも、プラスチックでも、段ボールでも、砂糖でも、カタチにすることができる。(役に立たない素材もあるだろうが、とにかく選択肢はある)。「歴史上はじめて、製品デザインは製造から切り離された。それは、製品を作り出すのに必要な情報がすべてデザインに組み込まれているからだ」バスはそう語った。
 その上、3Dプリンタが普及し、特注品やカスタム品の少量生産に利用されるようになれば、もの作りの方法もよりサステイナブルになる。ローカル生産が増えれば、輸送コストが非常に安くなるか、ただになる。必要な量しか材料を使わなくて済むため、廃棄物がほとんどなくなる。カスタム品なら、それに価値を認め、なるべく長く使おうという気になる。自分のためだけに作られた品物は、使い捨てになりにくい。それぞれに思い入れがあるからだ。
 フォーブス誌の発行人、リッチ・カールガードは、3D印刷は「2015年から2025年のあいだに世界を変えるテクノロジーになるかもしれない」と言う。

 3D印刷は、もの作りの経済を、大量生産から、3Dプリンタを使った小さなデザインショップによる職人モデルへと回帰させる可能性を秘めている。言い換えると、もの作り、リアルなもの作りが、資本集約型の産業から、芸術とソフトウェアのようなものへと移行するかもしれないということだ。そして、この流れは、創造性に優れたアメリカに味方するに違いない。

とはいえ、3D印刷やその他のデジタル製造技術には、できないこともある。規模の経済が働かないことだ。1000個作るのも、1個作るのも単位あたりのコストに違いはない。だが、逆にそこが利点でもある。ひとつひとつ違うものを作っても、同じものを数個だけ作ってもコストが変わらないのだ。
 それは、反復と標準化が有利に働く大量生産とは正反対だ。3D印刷は、個別化とカスタマイズ化に味方する。デジタル生産時代のなにがいいかといえば、大量生産とカスタム生産の2つの選択肢を持てることだ。お金をかけた手作り品しかない、という状況に陥らずに済む。マスとカスタマイズのどちらも自動化され、生産手段として現実に使えるようになったのだ。


(中略)

デジタル生産は、これまでのもの作りの経済をひっくり返すものだ。大量生産の場合、コストの大半は機械への初期投資で、商品が複雑になればなるほど、また変更が多ければ多いほど、コストが膨らむ。デジタル生産は、その逆だ。従来のもの作りではコストのかかるものが、無料になる。

1.多様性はフリーになる
ひとつひとつ違うものを作っても、全部同じものを作るのとコストは変わらない

2.複雑さはフリーになる
手間のかかる小さな部品がたくさんついた、精巧な細工が必要な品物も、3Dプリンタなら、平らなプラスチックの塊と同じコストで作ることができる。コンピュータはただで何度でも計算してくれる。

3.柔軟性はフリーになる
生産が始まったあとで商品に変更を加えようと思ったら、指示コードを変えるだけでいい。同じ機械でそれができる。


3Dプリンタの可能性がお分かりいただけただろうか。



ここからはメイカームーブメントとクラウドファンディングのシナジーについて触れよう。

クラウドファンディングはメイカーを目指す起業家には、切り離すことのできない資金調達ツールであるが、メリットは資金調達だけに留まらない。

メイカーにとってのクラウドファンディングは、新しい製品アイデアを試すマーケティングの機能も果たす。
製造の必要額を入力し、一定額まで到達すれば資金だけでなく購入者も集まるので一石三鳥である。

仮に目標額まで集まらなくても落ち込む必要はない。
それだけの需要がなかったというだけだ。
製造する前に需要がわかるから失敗を避けることができる。
資金調達、購入者だけでなくマーケティングも瞬時に行え、まさにリーンスタートアップがいう構築―計測―学習のフィードバックループを高速回転すれば、驚くような製品を生み出すことも夢ではないのだ。

クラウドファンディングはメイカーを後押しする強力な武器になる。



本書の最後に今話題のスクエアの話があった。
スクエアはスターバックスへの導入も決定するなど、短期間で数十億ドル企業へと成長したシリコンバレー界隈で注目のスタートアップである。

スクエア
https://squareup.com/

ツイッターを生んだジャック・ドーシーが歩んできた簡単な歴史とともに、彼がソフトウェアとハードウェアを組み合わせたモバイル決済事業を立ち上げた経緯などが読み取れる。

メイカーとの接点は、クレジットカードを決済する端末にある。

スクエアを共に立ち上げたかつての上司であるジム・マッケルビーは、2009年初頭にメンローパークにあるテックショップで小さなプラスチックの塊をあれこれといじっていた。
彼はスクエアの立ち上げで意見が対立していたドーシーを説得するため、試作機を製作していたのだ。
当時ドーシーはスマートフォンのカメラでクレジットカードの数字を読み取り決済することを考えていたが、マッケルビーはハードを使わなければダメだと意見が対立していたという。

マッケルビーはドーシーを説得するためだけでなく、この小さな決済端末は事業の成否を分ける重要なものだと考えていた。
テックショップに通い、手作りで50個は作ったという。

いよいよ大量生産しようと地元のセントルイス周辺の射出成形業者を当たったが、数量と価格で折り合わなかった。
そこで彼は中国に飛ぶ。
広東省の工場で最終的なデザインをCADで仕上げ、ついに大量生産への道を開いたのだった。



メイカーがビットとアトムの交差点に力を与え、世界を切り開いていく時代はまさにこれからの20年にある。
同時にネットワーク技術も日進月歩で進化し今では考えられないような技術も今後生み出され、よりアトムへの影響を大きくしていくだろう。

本書を読むと、そんな潮流がぼくたちの想像以上の速さで進んでいることを思い知らされる。

クリス・アンダーソンが自らのキャリアをメイカーに投じたこと。
そうした企業が勃興しつつある事実。
現時点では実現できなくとも、近い将来訪れるであろう製造業の姿。

これらを本書を通じて考えていくことは、起業家はもちろん製造業に携わっていないあらゆる人たちに多いに学んで欲しい。

なぜならば、それだけ多くの人たちの生活に影響を与えるムーブメントなのだから。



関連リンク
NHK出版公式 http://pr.nhk-book.co.jp/makers/book
CNET記事 http://japan.cnet.com/news/society/35024053/
WIRED Conference 2012 クリス・アンダーソン基調講演 in 六本木ヒルズ
http://wired.jp/conference/streaming01.html
(2013年1月11日まで閲覧可能)




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第81回となる今回は、羽生善治氏の決断力に迫るこちら

決断力 (角川oneテーマ21)/角川書店
¥720
Amazon.co.jp

ぼくの評価☆☆☆☆☆
(一流棋士の目線から見た思考から選択、決断に至るプロセスがわかる一冊。情報に踊らされている、迷ってなかなか選べないなど、頭を一度整理したいと感じている人におすすめ)


羽生善治。職業「棋士」。
将棋のプロである。

本書は羽生善治氏の棋士としてのスタイルを通じて、限られた時間で集中する力、考えぬく力、決断する力に迫った一冊である。

将棋の知恵と創造の戦いは仕事にも通じる。
これはウェブ進化論でも有名な梅田望夫氏も提唱している考えである。

将棋とビジネスの接点や、棋士がどのように盤面と向き合っているかや決断に至る思考プロセスが本人によってリアルに描かれている貴重な一冊である。



本書を読む上で意識すべきは将棋における知略がビジネスに通じているところである。

将棋は歩から王までの20個の駒を交互に指していくシンプルなルールだ。
成駒といったルールもあるが、交互に一手一手指していく姿は実にシンプルでわかりやすく、そして奥が深い。

その交互のやりとりはビジネスのやりとりや交渉などに似ており、一手指すごとに相手は次の一手を考え、先の展開を読んでいくのである。

手駒と9×9の盤面、決められた時間という限られた同じ条件下で相手を追い詰めていく。
こうした将棋独特のルールと戦法をビジネスの世界に当てはめて考えることができる一冊なのである。


まず紹介したいのは目次だ。
これを読めば将棋界史上最強とまでいわれた羽生善治氏が本書を通じて言わんとしていることがわかるだろう。

第一章 勝機は誰にもある
1 勝負の土壇場では、精神力が勝敗を分ける
2 勝負どころではごちゃごちゃ考えるな。単純に、簡単に考えろ!
3 知識は、「知恵」に変えてこそ自分の力になる
4 経験は、時としてネガティブな選択のもとにもなる
5 勝負では、自分から危険なところに踏み込む勇気が必要である
6 勝負では、「これでよし」と消極的になることが一番怖い
7 勝負には周りからの信用が大切だ。期待の風が後押ししてくれる

第二章 直感の七割は正しい
1 プロの棋士でも、十手先の局面を想定することはできない
2 データや前例に頼ると、自分の力で必死に閃こうとしなくなる
3 一回一回の対局には、新たな航海に乗り出す充実感と新しい発見がある
4 決断は、怖くても前に進もうという勇気が試される
5 最先端の将棋は、集中から拡散へと進歩している
6 常識を疑うことから、新しい考え方やアイデアが生まれる
7 事前の研究が万全な人は、私にとって手強い人だ

第三章 勝負に生かす「集中力」
1 深い集中力は、海に深く潜るステップと同じように得られる
2 集中力を発揮するには、頭の中に空白の時間をつくることも必要である
3 人間はどんなに訓練を積んでもミスは避けられない
4 私が対戦する相手はいつも絶好調で、やる気を引き出してくれる
5 プロの将棋は、一手の差が逆転できる想定の範囲内である
6 感情のコントロールができることが、実力につながる
7 わき上がる闘争心があるかぎりは、私は現役を続けたい

第四章 「選ぶ」情報、「捨てる」情報
1 パソコンで勉強したからといって、将棋は強くなれない
2 最先端の将棋を避けると、勝負から逃げることになってしまう
3 私は、敢えて相手の得意な戦型に挑戦したいと思っている
4 創意工夫からこそ、現状打破の道は見えてくる
5 将棋は駒を通しての対話である。お互いの一手一手に嘘はない
6 将棋上達法――近道思考で手に入れたものはメッキが剥げやすい
7 スポーツ観戦の七割は趣味だが、三割は将棋に役立つ
8 コンピュータの強さは、人間の強さとは異質なものだ

第五章 才能とは、継続できる情熱である
1 才能とは、同じ情熱、気力、モチベーションを維持することである
2 子どもは「できた!」という喜びが、次の目標のエネルギー源となる
3 「真似」から「理解する」へのステップが創造力を培う
4 「これでいい」という勉強法も、時代の進歩によって通用しなくなる
5 プロらしさとは、力を瞬間的にではなく、持続できることだ
6 将棋の歴史には、日本が世界に誇れる知恵の遺産がある


※第二章の直感については本ブログの第57回でも取り上げたことがあるが、主張している内容は共通している部分が多い。


本書にたびたび登場する羽生善治氏の先輩棋士に印象的だった人物がいる。
米長邦雄棋士である。

エピソードをひとつ紹介しようと思う。

-本書40P10行目より-
先生の名人への思いは人一倍強いものであった。
1993年(平成5)、米長先生は名人挑戦者になり、中原誠先生に挑んだ。お二人は、実績、実力ともにほぼ互角だったが、名人戦にかぎっては、米長先生は中原先生にどうしても勝てなかった。名人に六度挑み、ことごとく敗れたのである。
 当時、米長先生は50歳を目前にしていた。周りからは、年齢的にも名人になるための最後の機会と思われていた。
 その最後と思われていた機会に米長先生は勝ち、名人位を獲得したのだ。
 名人戦は素晴らしい内容であった。年齢を感じさせない将棋で、力強く勝負強い将棋は一貫している。当時、実際に名人になった瞬間、米長先生がどんな表情をするか、ファンとして興味があった。
 名人になった先生がその就任式で、私を、
「来年春の名人戦の対局相手として、待っている」
 と名指しで話したというのを聞いて、驚き、うれしく思ったのを思い出す。その年に名人に挑戦できるA級に上がったばかりで、翌年にまさか先生に挑戦することになろうとは考えてもいなかった。
 先生は、名人への夢を実現するためにとんでもないことをした。
 名人を獲得する4、5年前に、自分の将棋を一新させたのだ。今まで培ってきたものをすべて捨て、まさに一から変えた。「泥沼流」といわれたのが先生の将棋であった。その将棋を捨て、若手に教えをこうて、最先端の将棋を一から学び直したのだ。フルモデルチェンジ。こんなことが50歳に近づいた人のできることだろうか。
 だが、米長先生はそれに成功した。



目的を達成するために年齢に関係なく、プライドや固定概念を捨てられる。
これはあらゆる分野のプロと言われる人でもできる人は少ないのではないかと思う。
年齢を重ねるほどプライドが邪魔をしてしまうからだ。
これができるのはプロの中でも相手を素直に認め、貪欲に学びたいという純粋な思いから実際に行動に移すことができる人たちだ。



本書が書かれたのは2005年。
現在でも売れ続け、ぼくが購入したのは35刷。
すでに50万部を突破している名書だ。

本書のように長期間で売れ続け、重版を重ねている書物はハズレが少なく学べることが多い。
ビジネス書にまだ馴染みのない方は最初そういった本を探して購入することをおすすめする。

本書は文庫本で気軽に読破できる上に、内容が深い。
深く集中する方法や決断に至る思考プロセス、直感やリスク、継続する大切さなどを将棋の世界を通じて学ぶことができる。

将棋界の歴史400年。
史上初の七冠制覇。
将棋界の歴史を塗り替えた男、羽生善治氏のすごさを改めて知ってほしい。




埋め込みが無効になっているため、YouTubeからどうぞ。
http://youtu.be/oKTpJRlTBOc



※告知※
これまでタイトルに「Googleを愛してやまない」と表記するなどブログ開設時からGoogle好きを公言しておりましたが、本ブログをさらに公的な存在へと昇華させる意味も込めまして削除することにしました。

それでもぼくのGoogle愛は変わりませんし、ブログの趣旨にも変更はありません。
Google愛はぼくの心の中だけにそっと閉まっておこうと思います。

何卒ご理解の上、これからも変わらぬご愛顧のほどお願いいたします。

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