
シンプル族の反乱/三浦 展

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ぼくの評価





(消費に意欲的ではない若者が増え、消費に対する価値観が今までにない変化を見せている。そんなことを示唆する一冊)
本書を読んで思ったのですが、
ぼくもシンプル族の価値観に非常に近い感覚を持っていると思いました。
ちなみにシンプル族とはシンプルなデザインを好むという意味ではありません。(一部そういう意味もあるようですが)
これは新しく台頭してきた消費に対する価値観の新しいトレンドを総称して本書ではシンプル族と呼んでいます。
主に団塊ジュニアより若い世代(20~29歳)から、団塊ジュニア世代(30~34歳)にシンプル族が多いようで、その背景には戦後の高度経済成長やバブル期を知らずに育った世代で、さらに今回の金融危機もあり、「モノは慎重に買うものだ」という意識が根底に根付いている世代といえるのかもしれません。
本書に出てくる世代を分類すると、
団塊ジュニアより若い世代(20~29歳)主にシンプル族
団塊ジュニア世代(30~34歳)ややシンプル族
新人類世代(40~44歳)
団塊の世代(55~59歳)
昭和ヒトケタ世代(70歳以上)
正直ぼくは、ベンツやセルシオ、高級マンションや別荘、アルマーニのスーツやロレックスなどの類にあまり興味がありません。
もちろん実際に視界に入ると、あぁ~やっぱり欲しいなあ
なんて頭をよぎることもありますが、そんな熱もすぐに冷めてしまいます。その一番の根本的な理由は、そういったモノを所有してもかっこいいとは思わないからです。
仮に所有していたとしても、それを見せびらかすようにする行為自体がかっこ悪いと思ってしまいます。
本書にも紹介されていますが、そういったブランド品の所有欲が比較的高いバブリー族と呼ばれる人たちは40代以上、特に働き盛りにバブル絶頂期を過ごした50代は特に高い傾向があるといいます。しかし我々20~35歳の世代は幼少期にバブルを終え、社会に出た頃にはすでに日本は世界でもトップレベルの経済大国となっていました。
生きてきた時代背景が違うため、そもそもの価値観が違うのは当然のことのように思えますね

では、ここでシンプル族の価値観を紹介しましょう。
シンプル族の生活原理
1.物をあまり消費しない。ためない。
2.手仕事を重んじる。
3.基本的な生活を愛する。
シンプル族の志向性
1.エコ志向
2.ナチュラル志向
3.レトロ志向・和志向
4.オムニボア志向(オムニボアとは雑食という意味)
5.ソーシャル・キャピタル志向
ボボスとの類似性
1.生活必需品にだけ金を使う
2.粗い肌触りを好む
3.モダンな物、新しい物よりも古い物、貧しい物を好む
4.貧富の差を逆転する
5.消費者ではなくキュレーター
以上がシンプル族の価値観です。
これを裏付ける出来事の一つにユニクロの躍進があります。
本書によるとユニクロの躍進は周知の通りですが、無印良品も10年連続売上を伸ばしているのはこのシンプル族の拡大が大きいといいます。これは単に現在の不景気が影響しているとも言い切れず、景気が回復してもシンプル族の価値観が大きく変わることはないのだといいます。
さらにもう一つ影響を与えている統計として、少子高齢化が考えられます。
もちろん国民全員が意識しているとは必ずしも言えませんが、ニュースなどで少子化!高齢化!と叫ばれている中においては、生産年齢人口が減少し、将来的には納税額が現在よりも次第に増えていくのではないかという懸念が自然と刷り込まれている可能性はあります。
特にこれを裏付ける最近のニュースはキリンとサントリーの統合[音声がでます]が一番大きかったのではないでしょうか。
ただ単にグローバル化が進んでいるというだけではなく、内需だけでは企業の成長はもう見込めないというメッセージにも受け取れますし、外需に頼る方向へ進まなければ企業は生き残っていけないということを如実に表しているニュースだとぼくは感じました。
最後にインターネット利用頻度の高まりとWebリテラシー向上も見過ごせません。
ネットブックなどPCの価格も値下がりを続け、低所得者でも気軽にPCを買える時代になってきました。
今までネットに触れていなかった人たちもやっとネットに触れ、検索エンジンや比較サイトなどで同じ商品でもより安い商品を探し、ネットでモノを買う。
こういったスマートコンシューマーと言われる人たちが増えており、今まで10000円で購入していたものをネットで3000円で買うなどといった賢い消費者が増えていることもこうした消費抑制を後押ししているといえます。
特に今回の不景気でコンシューマーは消費行動がより慎重になりました。今まで衝動買いしていたものを自宅に帰って一度考え直すようになり、NBではなくPBを買う人が増えました。商品をより慎重に吟味するようになったシンプル族はネットで吟味する時間が増え、相対的にWebリテラシーが高まっていくのです。
こういった時代背景を鑑みると、確かに日本は豊かになり、モノは溢れ、便利な国になりました。
しかし便利な国と暮らしやすい国は違うのではないか、というのがシンプル族の価値観が表すメッセージのように感じます。
仕事で使う大きなエネルギーを癒すために、せめてプライベートだけでも充実させたい。
こだわりたい。
ココロを豊かにしたい。
そんな消費者が若年層を中心に増え続けているというのが本書が問う、シンプル族の本質なのかもしれません。

