6、学ぶことが多い企業のツイッター活用 | NPO法人生涯青春の会

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                   2010年2月12日  日経ネット

 ミニブログ「Twitter(ツイッター)」のユーザーであるソフトバンクの孫正義社長や楽天の三木谷浩史社長は、他社サービスにも関わらず社員などに利用を勧めているという。ツイッターを始めとするソーシャルメディアは、頭で理解するだけでなく、実際に触れてみないと有効活用が難しいという特徴を持つ。マーケティングやコミュニケーションのツールとして存在感が高まるなか、IT業界を代表するトップが率先する意味は大きい。(藤代裕之)

 2月2日に開かれたソフトバンクの2009年4~12月期決算説明会。孫社長(ツイッターアカウント@masason)は「つぶやいた直後に、韓国語や中国語や英語でコメントが瞬時に戻ってくる。コミュニケーションの輪が距離を越えて、時間を越えて、国境まで、言葉の壁を越えて、人々がつながりあえる喜びがこんなにすばらしい」と自身の利用経験を踏まえてツイッターを絶賛して、決算発表をスタートさせた。


■フォローは孫社長約11万、三木谷社長約5万

ソフトバンクは2009年4~12月期決算説明会を「Ustream(ユーストリーム)」で中継した

 孫社長は、ツイッター上で積極的にユーザーとやり取りを行なっている。障害者向けの通話プランがほしいという要望を受けて約1週間で実行した。投資したばかりのインターネットの動画中継サービス「Ustream(ユーストリーム)」のスタジオ設置を約束もした。

 一方、楽天の三木谷社長(@hmikitani)も、ツイッターに寄せられたユーザーからのサービス改善を担当者に伝えている。ただ、サービス改善や企業アピールといった企業の都合ばかりつぶやいていてはユーザーもついてこない。つぶやきから人間的な魅力が浮かび上がるのがツイッターの面白さだ。

 孫社長約11万、三木谷社長約5万。これは両社長をフォローしているユーザーの数だ。その差の1つに孫社長のエモーショナルなつぶやきがある。大ファンと公言するNHKの大河ドラマ「龍馬伝」が放送される日曜日は「あと8時間」「始まるぞーっ!わしに続けーっ!!」「今日から素振りしよーっと」などと書き込み、テレビドラマを同時体験しているような気にさせてくれる。

 対する三木谷社長は、硬く真面目な印象だ。ソーシャルメディアで大事になるのは個人が見えることと発信者と読者の共感だ(ただし、孫社長もツイッター熱がどこまで続くかは微妙だ。オーマイニュースに出資した際も「市民記者」として記事を書いたがその後続かなかった。伸びなければすぐに「撤退」する)。

■多くの企業にとって無視できない存在に

 ツイッターはつぶやけば即座に反応がある。そのどれに答えを返すかを自分の考えで取捨選択していかなければならず、どこまでつぶやくかをいちいち上司に報告していては追いつかない。情報発信する個人の責任と決断が求められるため、スピード感が乏しく個人が表に出ることを望まない日本型組織には馴染まないメディア特性を持つ。だから、トップダウン型の両社長のつぶやきは特別なのだ、というわけにもいかなくなっている。

 ここ数年、ブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、ツイッターに動画中継と、マスメディアを経ずに多くの人々と直接コミュニケーションできるメディアが次々と登場している。メディアやIT企業だけでなく、一般企業や公共団体でもマーケティングやパブリック・リレーション(PR)に活用する場面が増えており、なにか活動を行なうにあたってソーシャルメディアを無視できなくなっている。

 その際にありがちなのは、これまでのマスコミュニケーションやマスマーケティングとは手法が根本的に異なっているにもかかわらず従来手法で取り組んでしまうというパターンだ。そのせいで、効果的な結果が得られなかったり、最悪の場合トラブルに巻き込まれたりする。

UCC上島珈琲がツイッター上で展開したキャンペーン活動の一覧ページ。プログラムでメッセージを自動的に送る「ボット」という手法を使った

 ブログマーケティングの初期にも企業側の都合を押し付けて批判が集中した「炎上」事例があったが、ツイッターも同様だ。2月初めにはUCC上島珈琲のツイッターを使ったキャンペーン活動がユーザーの一部から批判を浴び、即日お詫びするという騒動になった。UCCは午前10時に活動をスタートしたがお昼に中止し、午後3時すぎには同社のウェブサイトにお詫びを掲載した。このお詫びには、経緯やUCC側が考える問題点、対応策も記されており、迅速な対応で批判は収束に向かった。

 一方、ツイッター上では、UCCが今回ツイッターで採った手法をどこの広告代理店が提案したのかという「犯人探し」が盛り上がった。これについては、ブログ「life is so…」が「UCCに学ぶコト-中のヒトのリテラシー向上の重要性」(http://channel5.cc/?p=242 )というエントリーにおいて、代理店からのさまざまな提案があるなか、事業者側が自分を守るためにも中の人(担当者)のソーシャルメディアに対するリテラシーが必要と指摘している。

 UCCは翌週にメディア向け説明会を行っているが、ネットメディアの記事によるとこの指摘の通り、UCC側にはブログやSNSの活用経験がある担当者がおらずプランニングが行なわれ、実行されてしまったという。

 今回の問題でUCCは自社のツイッターアカウントをすぐに削除した。ただ幸いだったのは、グループ会社のユーシーシーフードサービスシステムズが運用しているアカウント「上島珈琲店なう(@ueshimacoffee)」が存在したことだ。騒動前から地道な活動で1000人近くにフォローされていた上島珈琲店なうを通じてツイッター上でも謝罪を行い、ユーザーとコミュニケーションを続けたことで激励のコメントも相次いだ。ソーシャルメディアを理解できる担当者がグループ内にいたことが危機を乗り切る大きな要因となった。

■失敗から学ぶことが大きな資産に
 ソーシャルメディアは新しいだけに、いまのところ体験することでしか学ぶことができないのが実態だ。マスメディアも含め多くの失敗をしているが、従来の手法が通じないからと見限ってしまえば先はない。失敗から学んでいけるかが重要になる。ソフトバンクと楽天社員のツイッター利用は、初期にはトラブルもあるだろうが、失敗から学ぶことで大きな資産となっていくはずだ。

 今後、ソーシャルメディアの存在感が大きくなるにつれて失敗は難しくなっていくだろう。新たなメディアを横目で見たり、批評したりするだけの企業、もしくはソーシャルメディアを経験している個人を生かさない企業は、時代への対応が一層遅れることとなる。


                   2010年2月12日  日経ネット
 ミニブログ「Twitter(ツイッター)」のユーザーであるソフトバンクの孫正義社長や楽天の三木谷浩史社長は、他社サービスにも関わらず社員などに利用を勧めているという。ツイッターを始めとするソーシャルメディアは、頭で理解するだけでなく、実際に触れてみないと有効活用が難しいという特徴を持つ。マーケティングやコミュニケーションのツールとして存在感が高まるなか、IT業界を代表するトップが率先する意味は大きい。(藤代裕之)

 2月2日に開かれたソフトバンクの2009年4~12月期決算説明会。孫社長(ツイッターアカウント@masason)は「つぶやいた直後に、韓国語や中国語や英語でコメントが瞬時に戻ってくる。コミュニケーションの輪が距離を越えて、時間を越えて、国境まで、言葉の壁を越えて、人々がつながりあえる喜びがこんなにすばらしい」と自身の利用経験を踏まえてツイッターを絶賛して、決算発表をスタートさせた。


■フォローは孫社長約11万、三木谷社長約5万

ソフトバンクは2009年4~12月期決算説明会を「Ustream(ユーストリーム)」で中継した

 孫社長は、ツイッター上で積極的にユーザーとやり取りを行なっている。障害者向けの通話プランがほしいという要望を受けて約1週間で実行した。投資したばかりのインターネットの動画中継サービス「Ustream(ユーストリーム)」のスタジオ設置を約束もした。

 一方、楽天の三木谷社長(@hmikitani)も、ツイッターに寄せられたユーザーからのサービス改善を担当者に伝えている。ただ、サービス改善や企業アピールといった企業の都合ばかりつぶやいていてはユーザーもついてこない。つぶやきから人間的な魅力が浮かび上がるのがツイッターの面白さだ。

 孫社長約11万、三木谷社長約5万。これは両社長をフォローしているユーザーの数だ。その差の1つに孫社長のエモーショナルなつぶやきがある。大ファンと公言するNHKの大河ドラマ「龍馬伝」が放送される日曜日は「あと8時間」「始まるぞーっ!わしに続けーっ!!」「今日から素振りしよーっと」などと書き込み、テレビドラマを同時体験しているような気にさせてくれる。

 対する三木谷社長は、硬く真面目な印象だ。ソーシャルメディアで大事になるのは個人が見えることと発信者と読者の共感だ(ただし、孫社長もツイッター熱がどこまで続くかは微妙だ。オーマイニュースに出資した際も「市民記者」として記事を書いたがその後続かなかった。伸びなければすぐに「撤退」する)。

■多くの企業にとって無視できない存在に

 ツイッターはつぶやけば即座に反応がある。そのどれに答えを返すかを自分の考えで取捨選択していかなければならず、どこまでつぶやくかをいちいち上司に報告していては追いつかない。情報発信する個人の責任と決断が求められるため、スピード感が乏しく個人が表に出ることを望まない日本型組織には馴染まないメディア特性を持つ。だから、トップダウン型の両社長のつぶやきは特別なのだ、というわけにもいかなくなっている。

 ここ数年、ブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、ツイッターに動画中継と、マスメディアを経ずに多くの人々と直接コミュニケーションできるメディアが次々と登場している。メディアやIT企業だけでなく、一般企業や公共団体でもマーケティングやパブリック・リレーション(PR)に活用する場面が増えており、なにか活動を行なうにあたってソーシャルメディアを無視できなくなっている。

 その際にありがちなのは、これまでのマスコミュニケーションやマスマーケティングとは手法が根本的に異なっているにもかかわらず従来手法で取り組んでしまうというパターンだ。そのせいで、効果的な結果が得られなかったり、最悪の場合トラブルに巻き込まれたりする。

UCC上島珈琲がツイッター上で展開したキャンペーン活動の一覧ページ。プログラムでメッセージを自動的に送る「ボット」という手法を使った

 ブログマーケティングの初期にも企業側の都合を押し付けて批判が集中した「炎上」事例があったが、ツイッターも同様だ。2月初めにはUCC上島珈琲のツイッターを使ったキャンペーン活動がユーザーの一部から批判を浴び、即日お詫びするという騒動になった。UCCは午前10時に活動をスタートしたがお昼に中止し、午後3時すぎには同社のウェブサイトにお詫びを掲載した。このお詫びには、経緯やUCC側が考える問題点、対応策も記されており、迅速な対応で批判は収束に向かった。

 一方、ツイッター上では、UCCが今回ツイッターで採った手法をどこの広告代理店が提案したのかという「犯人探し」が盛り上がった。これについては、ブログ「life is so…」が「UCCに学ぶコト-中のヒトのリテラシー向上の重要性」(http://channel5.cc/?p=242 )というエントリーにおいて、代理店からのさまざまな提案があるなか、事業者側が自分を守るためにも中の人(担当者)のソーシャルメディアに対するリテラシーが必要と指摘している。

 UCCは翌週にメディア向け説明会を行っているが、ネットメディアの記事によるとこの指摘の通り、UCC側にはブログやSNSの活用経験がある担当者がおらずプランニングが行なわれ、実行されてしまったという。

 今回の問題でUCCは自社のツイッターアカウントをすぐに削除した。ただ幸いだったのは、グループ会社のユーシーシーフードサービスシステムズが運用しているアカウント「上島珈琲店なう(@ueshimacoffee)」が存在したことだ。騒動前から地道な活動で1000人近くにフォローされていた上島珈琲店なうを通じてツイッター上でも謝罪を行い、ユーザーとコミュニケーションを続けたことで激励のコメントも相次いだ。ソーシャルメディアを理解できる担当者がグループ内にいたことが危機を乗り切る大きな要因となった。

■失敗から学ぶことが大きな資産に
 ソーシャルメディアは新しいだけに、いまのところ体験することでしか学ぶことができないのが実態だ。マスメディアも含め多くの失敗をしているが、従来の手法が通じないからと見限ってしまえば先はない。失敗から学んでいけるかが重要になる。ソフトバンクと楽天社員のツイッター利用は、初期にはトラブルもあるだろうが、失敗から学ぶことで大きな資産となっていくはずだ。

 今後、ソーシャルメディアの存在感が大きくなるにつれて失敗は難しくなっていくだろう。新たなメディアを横目で見たり、批評したりするだけの企業、もしくはソーシャルメディアを経験している個人を生かさない企業は、時代への対応が一層遅れることとなる。