20、レスター・R・ブラウンの論考(1) | NPO法人生涯青春の会

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 エタノール生産の恐ろしいデータを記述したい。

12005年度年、エタノール生産の原料となるトウモロコシは5,500万トン。これは米国のトウモロコシ生産量(32000万トン)の6分の1近くを占める。

25500万トンのトウモロコシで作られるエタノール生産量は160億リットルである。

3、しかし、自動車用燃料としては全体の3%に過ぎない。

10に記述した通り日本は世界最大のトウモロコシ輸入国 なのである。
http://ameblo.jp/syogai1/entry-10276494464.html

日本のトウモロコシの消費量は1600万トンでアメリカから95%輸入している。

レスター・R・ブラウンの論考(1)

穀物争奪戦:スーパーマーケットとガソリンスタンドの戦い
http://www.earth-policy.org/Updates/2006/Update55.htm
レスター・R・ブラウン

穀物利用の現状

2006
年、世界の穀物消費量の増加の大半を占めるのは、人間ではなく、おそらく自動車である。米国農務省(The U.S. Department of Agriculture)は、2006年の世界の穀物利用量が2,000万トン増加すると予測している。このうち、1,400万トンが米国の自動車用燃料の生産に使われ、世界の増え続ける食糧需要を満たすために残されるのは、たったの600万トンである。

農産物を作る側の自動車用燃料に対する意欲は、世界的に止まるところを知らない。SUV車(スポーツタイプ多目的車)の約100リットルの燃料タンクを、エタノールで満タンにするのに必要な穀物。これは1年間に1人の人を養う量だ。2週間ごとに満タンにし、これを1年間続けると、26人が養えることになる。

投資家は収益性の高いバイオ燃料にいち早く目をつけており、世界のどこかで、エタノール蒸留所やバイオディーゼル精製所に関するニュースを聞かない日はないくらいだ。米国のエタノール蒸留所で使用されるトウモロコシは、2001年の1,800万トンから2006年の推定5,500万トンへと、5年間で3倍に増えた。

小麦やトウモロコシ、コメ、大豆、サトウキビなど、私たちが口にするものはほとんどすべて、自動車用燃料に転換できる。そのため、食糧市場とエネルギー市場との境界線が次第に失われつつある。これまで、農産物の買い手といえば、スー
パーマーケットで販売するために農産物を加工する、食品加工業者や家畜生産者だけだった。それが今では、別の買い手が存在する。彼らが購入した農産物は、エタノール蒸留所やバイオディーゼル精製所に販売され、その後ガソリンスタンドへと供給される。

原油価格の上昇につれ、農産物を、エタノールやバイオディーゼルなどの自動車用燃料に転換することによる利益は、ますます大きくなる。原油価格が事実上、農産物の支持価格になっている。農産物の食品としての価値が、燃料としての価値を下回れば、市場では農産物を燃料に転換する動きが出てくるものである。

各国・地域のバイオ燃料生産の現状

現在、農産物を由来とする燃料生産の中心は、ブラジル、米国、西欧諸国である。
(詳細なデータはwww.earthpolicy.org/Updates/2006/Update55_data.htm. を
参照。)

1.ブラジル

エタノール生産の原料はサトウキビ。ブラジルは世界最大の砂糖生産・輸出国であるが、ここに来て、砂糖生産の半分が燃料用エタノールの生産へと切り替わっている。ブラジルの2005年のエタノール生産量は160億リットルを超えた。世界の砂糖生産量のちょうど1割がエタノールにシフトしているため、砂糖価格は倍増。もはや安価な砂糖は過去のものかもしれない。

2.米国

エタノール生産の原料は穀物(ほとんどがトウモロコシ)。2005年のエタノール生産量は160億リットルを超え、ブラジルを抜いた。今年、エタノール生産の原料となるトウモロコシは5,500万トン。これは米国のトウモロコシ生産量の6分の1近くを占めるが、自動車用燃料としては全体の3%に過ぎない。

コーンベルトと呼ばれる米国中西部に広がるトウモロコシ地帯にある一部の州では、トウモロコシの供給がエタノール蒸留所に奪われつつある。アイオワ州では、稼働・計画中のエタノールプラントが実に55もある。アイオワ州立大学(IowaState University)のエコノミストであるボブ・ウィズナー氏(Bob Wisner)は、「これらの蒸留所がすべて建設されたら、アイオワ産のトウモロコシは残らず利用し尽くされると言ってもいい」と述べている。トウモロコシ生産量上位10位に入るサウスダコタ州ではすでに、トウモロコシ収穫量の半分以上がエタノール蒸留所で使用されている。2005年5月、米国では100カ所目のエタノール蒸留所が生産を開始、現在拡張中の蒸留所は7、建設中のものはおよそ34、計画段階のものは数知れない。

あまりにも多くの蒸留所が建設される中、家畜生産者や養鶏業者は、肉や牛乳、卵の生産に必要なトウモロコシが不足するのではないかと心配している。また、米国は世界のトウモロコシ輸出量の7割を供給しているため、トウモロコシ輸入国はその供給量について懸念している。

3.欧州

欧州では、バイオディーゼルの生産が主流である。2005年、欧州連合(EU)のバイオ燃料生産量は約64億リットル。このうち、約34億リットルが植物油を原料とするバイオディーゼル(主要生産国はドイツ・フランス)、約29億リットルが、
主に穀物を原料とするエタノール(主要生産国はフランス、スペイン、ドイツ)である。マーガリン製造業者は、補助金を受けているバイオディーゼル精製所との競合に苦戦を強いられており、欧州議会に対し支援を求めている。

4.アジア

アジアでは、中国とインドでエタノール蒸留所の建設が進められている。2005年、中国はおよそ200万トンの穀物(大部分はトウモロコシだが一部小麦やコメも使用)をエタノールに転換した。インドのエタノール生産の主原料はサトウキビが
大半を占めるが、タイではキャッサバが中心。また、マレーシアとインドネシアでは、パーム油プランテーションの増設やバイオディーゼル精製所の建設に多額の資金を投じている。マレーシア政府は、昨年あたりから32のバイオディーゼル
精製所を承認しているが、このところ追加の承認を保留し、パーム油の供給量が適切かどうかの評価を行っている。

穀物争奪戦がもたらすもの 

農産物を由来とする燃料生産の収益性は、とてつもなく大きな投資を生み出してきた。1ガロン(約4リットル)51セントの米国のエタノール補助金が2010年まで続き、原油価格が1バレル(159リットル)70ドルで推移した場合、トウモロコシからアルコール燃料を蒸留することは、この先何年もの間、巨額な利益を約束する。

米国のバイオ燃料生産への投資は、急騰する原油価格への対応策として行われている。しかしそれは今や手が付けられないほどに拡大し、肉類や牛乳、卵の生産から穀物を奪う恐れが出ている。そして、何にもまして重大なことは、莫大な数の蒸留所によって、人間が直接消費できる穀物が減ってしまう危険性が増すとい
うことだ。

穀物由来の燃料に対する需要は、うなぎのぼりに増えている。世界の穀物備蓄量が過去34年間で最低水準にあり、かつ毎年7,600万人が生まれているこのときに、である。言ってみれば、世界8億人の裕福な自動車所有者と食糧の消費者とが、
真っ向から対立する局面へと向かっている。自動車が絶えず燃料を必要とすることを考えれば、穀物価格の上昇は避けられないであろう。

唯一わからないのは「いつ、どの程度、食糧価格が上昇するか」だ。実際、ここ数カ月間で小麦とトウモロコシの価格は20%上昇している。世界で最も貧しい20億の人々。彼らの多くは所得の半分以上を食べ物に費やす。そんな彼らにとって、穀物価格の上昇はすぐさま、生きるか死ぬかの問題になり得る。食糧価格が上昇すると、インドネシアやエジプト、ナイジェリア、メキシコなどの低所得の穀物輸入国で飢餓がまん延し、政情不安が広がる危険性が高まる。そしてこの不安定さは、世界全体の経済発展の崩壊へとつながる恐れがある。

エタノール蒸留所での穀物需要が爆発的な増加を続け、穀物価格が危険水域まで上昇すれば、米国政府は、裕福な自動車所有者と低所得消費者との間で繰り広げられる、食糧をめぐる世界的な対立に介入せざるを得なくなるかもしれない。

争奪戦回避の選択肢

農産物に由来する燃料を利用する以外に、いくつかの選択肢がある。例えば、自動車の燃費基準を20%引き上げる。これだけで、自動車燃料へのエタノール供給で得られる3%相当の利益を、繰り返ししかも何分の1かのコストで上げることができる。また、公共交通機関に資金を投じれば、車への依存度を全体的に下げ
ることも可能だ。

ほかの燃料を選択するという道もある。人間にとって、食糧に代わるものはほかにはない。しかし、自動車の場合は、代わりになり得る燃料源がある。例えば、ガソリンと電気モーターを組み合わせた、燃費のよいプラグイン・ハイブリッド車(訳注:蓄電池を搭載し、家庭用電源で電池を充電することによって走行できるハイブリッド車)に切り替えれば、毎日の通勤などの短距離移動を電気で賄うことができる。また、米国や中国、欧州諸国などの風に恵まれた国がウィンドファームへの投資に力を注ぎ、安価な電力を送電網に供給できるようにすれば、主に風力エネルギーで、しかもガソリンに換算すると1リットル当たり25セントにも満たないコストで車を走らせることが可能になる。


データおよび他の情報はhttp://www.earthpolicy.org を参照。

さらに詳細な情報については、以下のサイトより『プランB 2.0』の第2章およ
び第10章を参照。http://www.earthpolicy.org/Books/PB2/Contents.htm


(小野寺春香)

(参考にしたURL)
●http://www.earth-policy.org/Updates/2006/Update55_data.htm
●http://www.earth-policy.org/Books/PB2/PB2ch2_ss5.htm
プラグ・インハイブリッド車について
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/WORD/20060705/118889/

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