ウイニングポスト9 2022 競走馬の異名から名馬たちについてぼちぼち語る。
初回はエンシェントタイトル:Ancient Title(エンシェントタイトル、エインシェントタイトルとも、)について
異名は西海岸の鉄人!SP74のサブパラ83、遠征で絶対に出会いたくない怪物ですね…
(Thoroughbred Racing Commentaryより)
エンシャントタイトルは1970.4.19生まれの黒鹿毛の牡馬でした。アメリカはカリフォルニア州スリーリングスランチ牧場において、ウィリアム・カークランド氏と妻のエセル・カークランド夫人により生産されます。
本馬が2歳の時にウィリアム氏が死去、エセル夫人名義で競走馬になるも激しい気性のため早々に去勢されました、厩舎はキース・ストゥッキ調教師所属です。ウイニングポスト10では仔出し5と中々の設定です…
馬名の由来は「カークランド夫人の祖父が独国の貴族だった事から連想して名付けられた」そうですが古すぎて断言はできないそうです
父ガンモはカリフォルニア州産の実績馬、種牡馬としても優秀なナスルーラ系です。母ハイリトルギャルは繫殖牝馬としていまいちでしたが、牝系からGⅠウィナーのバードタウン・バードストーン姉弟などが出ています
母父バルルデュは第二次世界大戦後の快速馬ユアホストの全弟だからという理由で種牡馬入りした馬でぱっとしませんでした。おじのユアホストの気性の悪さと高い精神面が彼に引き継がれたようです
セン馬の活躍は遅いイメージですが彼は2歳シーズンからその才能を発揮します
カリフォルニア州における2歳馬最強決定戦のカリフォルニアブリーダーズCSで2着に4馬身差以上つけ圧勝、8戦5勝の時点でカリフォルニア現役最強馬として位置付けられました
3歳となってサンタアニタで5戦1勝、サンタアニタダービーでシャムに8馬身差4着に敗れると、敗戦が痛かったのか?陣営に出走の欲がなかったのか?わからないままですが彼はアメリカ三冠ロードを歩むことはありませんでした
なおシャムは三冠ロードを歩み、ケンタッキーダービー・プリークネスS2着もタイトルには届きませんでした…この年はセクレタリアト時代だったのです…ベルモントSはセクレタリアトに競りかかるも殿負けでした
セクレタリアトは芝でも大暴れし生涯でレコード勝ち6回を記録しました…陣営はセクレタリアトの実力を考慮していたのかも
エンシェントタイトルは地元の西海岸にとどまりました。半年の休養もあって活躍できず3歳シーズンは8戦2勝でした
4歳になるとチャールズHストラブSを快勝しGⅠ初制覇!この年はGⅠ2着3回と好成績でした
9戦5勝という内容には、マリブS・サンフェルナンドS・チャールズHストラブSを制することで達成されるストラブシリーズ完全制覇がありました。これは史上3頭目の快挙でした。これを受けてカリフォルニア州年度代表馬となっています
5歳時は、3歳時にやめていた東海岸への遠征を決行しました。GⅠカリフォルニアンSとハリウッド金杯優勝で自信を持ったのだと考えられます
底力で初戦のホイットニーHをクビ差優勝!しましたが、ガヴァナーSで初めての59kgハンデを背負わされ3着でした
このレースでは同期にして知名度や戦績が上にみられることの多いセン馬フォアゴーが参戦しましたがエンシェントタイトルよりさらに重いハンデと厳しい状況。ベルモントS勝ち馬にしてラフィアンが散ったマッチレースで知られるフーリッシュプレジャーが顔をそろえました。
しかし勝ったのはGⅠ2連勝中のワジマでした。その時のハンデはなんと52kg、あまりのハンディの酷さにファンが怒った…のかはわかっていませんがガヴァナーSはこの年で廃止となりました
いくらハンデ戦の好きなアメリカといえども「これはひどい」となったんでしょうね
続くマールボロC招待Hも前走ほどではないものの、ハンデもあってワジマの3着でした。フォアゴーが頭差2着、エンシェントタイトルは7馬身離された3着だったので「米国最強古馬の称号はフォアゴー」という結果に終わりました
西海岸に戻るも遠征の疲れが出たままで7着惨敗で5歳シーズンを終えます、10戦4勝でしたが健闘を評価され2年連続のカリフォルニア州年度代表馬となっています
6歳時にはアタマ差でカリフォルニアンS連覇を成し遂げるも、その後はいまいちの7戦2勝
悲しいことに、オーナーのカークランド夫人が死去、カークランドステーブル名義に変更されました
7歳になってGⅠサンアントニオSを優勝しました
しかしここで強敵が現れます。ハリウッドダービーの勝ち馬クリスタルウォーターでした。サンタアニタHでクリスタルウォーターの11着に敗れると3連覇が期待されるカリフォルニアンSは3着でした
ベルエアHを優勝し立地直ったと思ったら、ハリウッド金杯でクリスタルウォーターに3度目の敗戦を味わわされました
デルマーHをレコード勝ちし年末の芝GⅠオークツリー招待Sに出走したが、クリスタルウォーターの僅差3着…この年は11戦4勝でした
8歳初戦をレコード勝ちしましたが、続くサンアントニオSはヴィガーズの馬身差2着でした。なおクリスタルウォーターは7着でありようやく先着が叶いました
一般競走を勝った後挑んだサンディエゴHにて競走中止に。命に別状は無かったもののこれによりクリスタルウォーターの競走人生に幕が下りました
通算57戦24勝、GⅠ5勝、獲得賞金1,252,791ドルはカリフォルニア州産馬最高でした
勝つことはできなかったものの芝のレースや12ハロンをタフにこなしたエンシェントタイトでしたが、得意だったのはダートの 7ハロン戦で、7戦無敗でした
カリフォルニア州のリオビスタファームで引退後の生活を送りましたが1981年8月に疝痛を発症し、懸命の治療の甲斐なく9月1日に12歳という若さでこの世を去りました
前述の通り同期のセン馬フォアゴーには敵いませんでした。アメリカのセン馬列伝においてもエクスターミネーターやケルソ、ジョンヘンリー、ワイズダン、ゲームオンデュードといった馬に戦績や華々しさでは正直勝てません
しかし、カリフォルニア産サラブレッドが「カリブレッド」(田舎者という揶揄)と呼ばれ西海岸のホースマンが対抗心を燃やす中で現れた「西海岸の鉄人」エンシェントタイトルはシービスケット以来の英雄的な存在でした
その執念がのちの大物カリフォルニアクロームとして現れるわけです
ウイニングポストで私はエンシェントタイトルを初めて知りました。競馬ファンのみなさんでもあまり知らない馬だと思いますが、フォアゴーやクリスタルウォーターら大物時代を生き抜き、アメリカ競馬の黄金時代へと盛り立てていったエンシェントタイトルはもっと知られていいと思います。なので是非ともウイニングポスト10ではセクレタリアトやフォアゴーをDLC所有して遠征先のエンシェントタイトルとバチバチやってほしいです(笑)
なお1990年に重賞エインシェントタイトルブリーダーズカップハンデキャップが作られ、2012年までその名が使われていたそうです
アメリカでは長らく彼の戦績が評価され続け、2008年に米国競馬の殿堂入りを果たしています。ストゥッキ調教師は当時89歳の存命で、「もっと早くに選ばれても良かった」と漏らしながらもとても喜んだそうです
そして2016年にストゥッキ調教師は96歳の大往生を遂げられました。エンシェントタイトルの死去から35年後のことでした
またいつか異名シリーズの続きするかもです。その時はよろしくどうぞ