彼との出会いは梅雨だというのに暑い6月の中頃。
私が意気消沈していた時にふと彼に目が止まったの。
彼の周りには男女関係なくいつも人がいて、
私は近づくことすらできなかった。
それ以来、彼が目の端に映ると
つい目で追ってしまう自分がいて。。。
いつの間にか彼に恋してた。
いつものように和やかに話していた彼を
遠目から眺めてある日、
「用事思い出したわ、じゃあな」
みんなにひらひらと手を振ると、人の輪が崩れて。
ぼんやり眺めていたら、ふと彼が足を止めて、
「お前なぁ....まぁ、いいわ......来る?」
「えっ?」
真っ赤になって俯いていると、
私にだけ聞こえる声で
「公園で待ってる。10分後にな。」
彼の周りにいた人達がざわざわと
「えっなにぃ?」
「なんでもねぇよ、虫がついてたからさ」
「なーんだ、そーだよねー。
優しいもんねー。じゃあまた明日ねー」
「おぅ、また明日なー」
ブランコの柵に腰掛けている彼。
目を合わせることもできず、
立ち止まっていると、
ゆっくりと立ち上がって歩いてくる。
頭をそっとひと撫でして
「覚悟は決まった?」
「.....」
「オレの家、そこ。
先に帰るから、覚悟が決まったらおいで。
鍵はかけてない」
すっと離れていく彼。
ひと撫でされた彼の温もりが風と共に流れて、
彼から香る爽やかな匂いと共に去っていった。
俯きながら目で彼を追っていると、
ガチャっと鍵を開ける音と
そっと閉めるドアの音までもが
聞こえた気がした。
強引に連れて行ってくれた方が
良かったのかも知れない。
ここで帰ることもできる。
動けずにその場に蹲って膝を抱えた。
彼の真意はわからない。
誰にでも優しい人だから。。。
どのくらい時間が経ったのだろう。
辺りが薄暗くなって街灯が影をつくっていた。
足は自然に彼の家に向かっていた。
控えめにドアをノックする。
ガチャとドアが開き
「どうぞ」
ラフな格好をした彼が身を引いて
空間を作ってくれる。
「お邪魔します...」
案内された部屋は、
モノトーンで統一された
あまり生活感のない清楚なリビング。
「そこに座って。紅茶でいい?
何も入れなくていいよね?」
「えっ、なんで?」
「だって君、
いつも何も入れずに
ストレートで紅茶飲んでるでしょ。知ってるよ」
「!?」
「オレ、君のこと見てたよ。
君がオレのことを見てるずっと前から」
「えっ」
「気付かなかった?
オレ、探偵になれるかもね」
クスッと笑って誇らしげな顔をした彼。
そこから後のことは覚えていない。
彼が家に招いてくれたのはあの時だけ。
3ヶ月経った今でも彼はいつも人に囲まれて楽しそうに話をしている。
目を合わせることも、話しかけてくれることもない。
あの時、彼は何を思っていたのだろう。
彼の真意はやっぱりわからない。
でも間違いなく私は彼に恋してる。
彼の名は【200A】
完







