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読書むすめ

本ばかり読んでる星華(シンファ)です・・・

グロいシーンも満載なのに、どうしても心の何処かに居座っていて忘れられない小説をご紹介します。

平井和正さんのウルフガイ・シリーズで、第1巻が、「狼の紋章」。第2巻が「狼の怨歌」で、1冊ずつ、そして第3巻が「狼のレクイエム」。これは第一部・第二部の2冊になっています。

とりあえず、順を追った方がいいので、第1巻目の「狼の紋章」を紹介します。

物語は、「悪徳学園」とまで呼ばれるくらいに荒れている中学校、博徳学園に、転校生がやってくることから開幕します。
転校生の名前は、犬神明。
野性的な雰囲気を持った少年は、さっそく不良グループに目をつけられ、殴る蹴るどころかバットでぶちのめされるナイフで刺されるなどのリンチにあいますが、闘おうともしません。冷たい笑いを浮かべて相手にしないのです。

「おれは狼だ。だから、おまえたちのような性悪なひねた野犬どもには牙をむかない。その気になれないんだよ。おまえたちには、資格がない……わかったか?」

少年犬神明は、不良グループたちだけではなく、クラスの誰とも心を通わせようともしません。学校を改革しよう、協力団結して不良グループを一掃しようと持ちかける生徒会のみんなに、むしろ怒りをぶつけます。

「あまったれるな! おい、ほんとにあまったれるんじゃないぜ!」

「自分の始末は自分でつける。だれの力も借りない。他人の救けをあてにしたりしない。他人だけが頼りのおまえらにいったいなにができる。思いあがるのもいい加減にしろっ。腰抜けの羊どもが!」

そして、少年は孤立しますが、唯一、クラスを担任する若い女教師、青鹿晶子は不可解な彼の過去や秘密をさらに突き止めようとします。なぜなら、少年が転校してくる少し前に、青鹿は新宿で少年が不良学生たちに絡まれて腹部をナイフで刺されたのに、平然としていて、傷口もなくなっている謎に直面していたからです。

いったい、少年犬神明は何者なのか・・・

少年が一人暮らししているアパートを訪れた青鹿は、少年に素気なく追い返された夜道で、痴漢に襲われます。今にもレイプされてしまうところを、電光の素速さを持った犬?によって助けられます。しかし、現場に落ちていたのは犬の毛ではなく、狼の毛だと後で知らされます。日本にはもう狼はいないはず。人間が、狼は害獣だと決めつけて、絶滅させてしまったからです。

いつしか、青鹿は少年犬神明に強く引きつけられていきます。そして、何度冷たく追い返しても、真剣に彼を心配してくる青鹿に、少年も拒みきれないものを感じ始めますが、少年はだれも信じず、愛さないことに決めていたのです。なぜなら、肉親でさえ、彼の正体を知ったとき、嫌悪と恐怖の眼が彼を見たのだから・・・

少年犬神明は、ウルフガイ、人狼、平たくいえば狼男なのでした。満月を挟む3日間は、完全な不死身となり、たとえ銃で撃たれてもすぐに回復してしまうのです。ただし、満月が欠けるにつれてその能力は失われていき、新月期には、普通の人間並みになってしまうのです。

不良グループの頂点に立つ、父親が暴力団の幹部である羽黒獰は、いくら挑発しても抵抗しようとしない少年を闘う気にさせるために、青鹿晶子を拉致します。
青鹿の危機を知った少年犬神明は・・・

青鹿がなんだというんだ。あいつがおれになんの関係がある……
「おれの知ったことか。おれには関係ない」

この「おれには関係ない」というセリフは、この「狼の紋章」の中で、少年が何度も口にしているセリフです。

「青鹿がどんな目にあわされようと、おれは平気だ。あいつが死のうと生きようと、おれの胸は痛まない」

「おれは一匹狼だ! おれが死のうと生きようと、世の中のやつらはだれひとり気にかけやしない。だから、おれは思いきりふてぶてしく生きてやるんだ! だれの力も借りず、救けも求めない。それで貸し借りなしだ。おれはだれも救けない。おれは拒絶する。おれはだれとも無関係なんだ!」

「先生、おれはあんたを救けないぜ! おれには関係ないんだ。あんたがどうなろうと、それは先生の自業自得だ。そうだろ?」

けれど、心の声が、少年にむかって、それは真実ではない、本心ではない、と告げるのです。
それなら、なぜ、痴漢に襲われていた青鹿をたすけたのだ、と。何の関係もない青鹿を、なぜ救ったのだ、と。

本当は、羽黒と闘うことを恐れているんじゃないのか……いま闘えば、羽黒はおまえを殺すことができる……おまえは死ぬのがこわいのだ……タフなウルフ! 不死身の狼男!
おまえがイキがっているのは、月が丸いうちだけか……月が欠けるにしたがって、おまえの勇気は空気の抜けた風船みたいにしぼむのか……臆病などぶねずみになりさがるのか……不死身で苦痛を感じないときだけは威勢がいいんだな、狼男。おまえの本性は、意気地なしのねずみ野郎なんだ……みじめったらしいどぶねずみ、それがおまえの正体だ……カッコつけるな、ねずみ野郎! 一匹狼だなんて、笑わせるなよ……

自分の心の声に促されるように、ついに、少年は・・・

青鹿晶子は、羽黒に何度も何度も犯されてしまっていました。そんな彼女を救うため、新月で並みの人間でしかない少年犬神明は、暴力団員が山ほどいる羽黒の豪邸に向かいます。刺され、撃たれ、弓で貫かれ、血みどろになり、体中の半分以上もの血を流しながら、ついに少年犬神明は囚われた青鹿の元にたどりつきます。
ここでの、青鹿との心の結ぼれ合いは胸をうたれます。

けれど、そこには羽黒が日本刀を手にして待ちかまえていました。
少年犬神明は、右手の指を切り落とされ、左手首を切り落とされ、背中に日本刀を突き立てられます。羽黒によってずたずたに切り裂かれて、血が噴出します。

そして・・・

物語の結末は、ここでは伏せます。

青鹿先生が痴漢に襲われたり、羽黒に強姦されたり、エロな場面がいろいろあります。いま書いたように、グロいシーンだらけです。

けれど、少年犬神明の心の葛藤や、青鹿晶子との交情の場面など、不思議なくらいに静かで、心うたれる感じがします。エロい場面もグロい場面もどこかにいってしまって、読み終わったときには、悲しく、せつなく、心が澄明になった感じがしてきます。

もうひとつだけ。
この小説には、少年犬神明以外に、もう1人ウルフガイが登場しています。その人が、エンディング近くで言うセリフがあります。

「ぼくのやったことは、犬神明のしたこととおなじです。狼からの贈り物なんです。暗い夜に、悲しい泣き声が聞こえれば、黙ってはいられない。それが狼の魂なんです。人間には聞こえない泣き声でも、狼には聞こえるんです。人間だってその気になれば聞こえるんだが……しかし、人間はみずから耳をとざしてしまっている……」

暗い夜に・・・悲しい泣き声が聞こえてきたら・・・

だから私は、狼少女になりたいのです・・・


※いま本屋さんで見かけることはできないようなのですが、いろんな出版社さんから出ているようです。出版社さんによってカバーイラストが全然違ってて、つまり印象がぜんぜん違いますね\(◎o◎)/!

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