【🇯🇵日本人の選択肢〜ジャパンクライシスに備え今考えるヒント vol.60】
■『モーリーが断言!…人の価値や評価を「コスパの良し悪し」で決める社会はヤバい!!』
国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソン氏が、"コスパのいい人間"という評価軸がはらむ危険性を指摘する。▶︎大した生産性もなく社会の"お荷物"になる人間は退場してもらったほうがいい――こうした感覚は、思いのほか広がっているのかもしれません。▶︎イェール大学助教・成田悠輔さんの"高齢者集団切腹"発言の騒動にしても、単なる個人の舌禍事件ではなく、あのような表現に共感する人、「一定程度の真理を含んでいる」と受け入れたり、NOを突きつけずに受け流したりする人が相当数いたことの結果です。▶︎第1次産業革命が進行していた18世紀後半~19世紀初頭、🇬🇧イギリスの経済学者トマス・ロバート・マルサスは、ロンドンを中心に爆発的に増える人口に危機感を募らせました。▶︎このまま進めば食料生産が追いつかず社会の貧困化が深刻になるとして、「人口抑制」の必要性を説いたのです。▶︎環境に適合した者が生存し、適合できない弱者は淘汰(とうた)され、社会全体が"最適化"されていく――この学説に影響を受け、人間だけでなくすべての動物に当てはまると考えたとされるのが、あのチャールズ・ダーウィンの「進化論」です。▶︎ダーウィン自身には弱者排除の思想はなく、人種差別や奴隷制度にも反対の立場だったといわれています。▶︎しかし、彼が唱えた進化論はその後、悪い方向へと拡大解釈され、人間社会の進化においても自然淘汰は働くという「社会ダーウィニズム」が、やがてナチスの優生思想につながっていった。
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【用語解説】
◉『社会ダーウィニズム』=「人口増加→生存競争→適者生存→進歩」というプロセスで社会の変 化をとらえる考え方である。 日本では、19世紀の第四四半期から20世紀初頭にかけて流行 した。
◉『優生思想』=身体的、精神的に秀でた能力を有する者の遺伝子を保護し、逆にこれらの能力に劣っている者の遺伝子を排除して、優秀な人類を後世に遺そうという思想。人種差別や障害者差別を理論的に正当化することになったといわれる。
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ナチスはユダヤ人に対する苛烈な迫害がよく知られていますが、その矛先はロマ(中東欧に居住する移住民族)や障害者などにも向けられました。▶︎根底にあるのは、社会の負担となる者はいなくなるべきであるという発想です。▶︎第2次世界大戦を通じて否定されたその思想は、人類の負の遺産として語り継がれてきました。▶︎しかし過去の記憶が薄れつつある中、世界各地で軽々しい形で再生産されようとしている息吹を感じます。▶︎🇯🇵日本においても、検索上位に表示されることを絶対視するSEO的な発想で"コスパのいい人間"かどうかが大きな評価軸となり、"コスパの悪い人間"は何もしないでいたほうがマシだというような言説が(冗談やお笑いのレベルも含めて)当たり前になりつつある。▶︎効率よく最適化された存在が輝ける社会こそが全体にとっての幸せである。▶︎それが資本主義、経済合理性というものである......。▶︎したり顔でそう諭してくる人に対して、「いや、それはヤバいよ」ととっさに思えなくなっている人が多いのだとしたら、われわれの社会はすでに坂を転げ落ち始めているのかもしれません。▶︎「社会不適合かどうか」のラインを恣意的に引こうとする人々は、決まって自分たちを"望ましい側"に位置づけ、美化します。▶︎大英帝国時代であれば「白人男性、高所得者、高学歴、クリスチャン」という風に。▶︎ところがこのラインの引き方は時代によって変遷していきます。▶︎現在は🇮🇳インド系、🇨🇳中国系なども含む「バイリンガル以上、ITを中心にした高度スキル、創造力、体力、美貌を併せ持つひと握りの人材」が頂点に位置しています(例えばGAFAのトップマネジメントなど)。▶︎天賦の才をマルチに持ち併せた存在以外は、いくらでも代わりがきく消耗品だ――人間社会をそう定義した場合、ほとんどの人はそう遠くない未来に"姥捨山(うばすてやま)"の対象になる。▶︎しかも、その「望ましいライン」の条件が年齢などの属性にまで踏み込まれるなら、現在の既得権者のほとんどにも、いつかしっぺ返しが来るわけです。▶︎「社会保障費を軽減する」というもっともらしい建前で近視眼的に優生思想まがいの視点を持ち込むのは、長期的に見れば全方位において危険な試みであるという懸念は強調しておいてもいいのではないでしょうか。▶︎それと、今回の件について認識しておくべきなのは、気に入らない人間や不適切な発言をした人を社会(みんなの目に見える範囲)から排除したからといって、問題が解決されるわけではないということです。▶︎「イヤだから見ない」では済まない。▶︎むしろイヤだからこそ、民主的に議論することが重要です。▶︎そうした考えはなぜ受け入れられたのか、あるいは反対されず受け流されたのか。▶︎社会の空気がその構造を生んだのか、その構造があるから空気が醸成されたのか。▶︎そして、果たして自分はその構造や空気に加担していないと自信を持って言えるのか。▶︎そういったことが問われているのだと思います[*週プレNEWS 2023.03.20付記事抜粋/文:モーリー・ロバートソン氏・国際ジャーナリスト、ミュージシャン]
■『「減るニッポン」から「ヘルニッポン」へ、そしてニッポン終了...』
かつて2015年頃「ヘル朝鮮」(ヘル=Hell=地獄)という言葉が🇯🇵日本のメディアを賑わせたことがある。▶︎若者の「🇰🇷韓国社会の生きづらさ」を封建体制の李氏朝鮮になぞらえて自嘲的にして表現したものらしい。▶︎これに先立って🇯🇵日本では、『嫌韓流』で有名な山野車輪氏は、『「若者奴隷」時代』を著し、社会保障制度を通じて若者たちがあたかも奴隷の如く高齢者にお金や労働を搾取されている状況を「若肉老食」社会としてリアルに描き出した。▶︎しかし、現状は山野氏が描いた内容よりさらに深刻となっている。▶︎政府が推進している全世代型社会保障は、高齢世代に寛大で現役世代に冷淡な世界で最も深刻な世代間格差を温存したまま、現役世代への給付を拡充することで世代間格差の是正を狙っているせいだ。▶︎「給付あるところ負担あり」なので、いずれ若者や現役世代だけでなく、高齢世代も「全世代の扶け合い」と称して現役世代並みの負担を求められる社会がやってくるのは不可避だ。▶︎実際、窓口負担や保険料の引き上げなど不十分ながらも高齢者の負担増加策も次第に増えてきている。▶︎現在は山野氏が喝破したような若者が高齢者の「奴隷」であるとして、将来的には若者も高齢者も社会保障制度の「奴隷」となるのは間違いない。▶︎実際、岸田総理は3月17日の会見で異次元の少子化対策の目的の一つに、「社会保障の維持」を挙げている。▶︎やはり、社会保障制度を維持するために全世代の負担と子どもを増やすのだ。▶︎社会保障制度政策の失敗を隠蔽するために産み増やされるわたしたちの子や孫たちはたまったものではない。▶︎このように、岸田総理が進める「異次元の少子化対策」は、主に若者にとってのヘル朝鮮以上の全世代にとってのヘルニッポンをもたらすだろう。▶︎「異次元の少子化対策」を講じ、その効果が現れるまでは、これまでの社会保障政策の失敗を認めなくてもよく、したがって、ネズミ講的な現在の社会保障制度や外国人労働者受け入れに関する抜本的な改革に手をつける必要がないと強弁できるからだ。▶︎そしてそうして時間稼ぎしている間に改革のタイムリミットが過ぎ、当時の政策責任者も「若肉老食」した高齢者もすでにこの世にはいない。▶︎では、なぜ、社会保障や外国人労働者受け入れの抜本改革を遅らせることが、ヘルニッポンにつながるのだろうか。▶︎まず、「異次元の少子化対策」では、女性人口減少には歯止めがかからない。▶︎少子化対策をいくら強化したところで、子どもを生む女性の数が減り続けているので、出生増に限界がある。▶︎例えば、いまから2030年にかけて20から49歳までの女性人口は11%減るので、出生率が不変でも出生数は減る。▶︎それを避けるには、機械的に計算すれば、直近では▼6.8%減少している出生率を11%以上、つまり18ポイント程度引き上げなければならない。▶︎果たしてそんな大幅な出生率の引き上げは現実的だろうか。▶︎さらに、現在132.5兆円(社会保険料収入73.5兆円+税負担59.0兆円)の社会保障負担にさらに「異次元の少子化対策」の負担が上乗せされるので、家計や企業の社会保障負担の増加に拍車がかかる。▶︎いまから2045年にかけて現役世代が26%減り、高齢世代が9.6%増えるるので、その他の条件が一定だとすれば、現役世代の社会保険料負担は36%程度上昇せざるを得ない。▶︎これは現役世代の可処分所得を引き下げるので、当然出生率を引き下げ、少子化を加速させる。▶︎また企業負担の増加は企業の海外脱出を加速し、🇯🇵日本国内の空洞化が止まらなくなる。▶︎そして中長期的に若者人口が減り続けるので、異次元の高齢化で増え続ける要介護者の面倒を見る介護人員の確保がいっそう困難となる。
おそらく団塊の世代の介護については、現状維持でも就職氷河期世代とオーバーラップする団塊ジュニア世代が人員的にかろうじて面倒を見られるものの、いまから大体25年後に団塊ジュニア世代が後期高齢者となり要介護状態になりやすくなったとき、その後に続く世代でその面倒を見ようにも、製造業や介護産業以外のサービス業から労働者を引き剥がしてこない限り人員的に面倒を見るのは不可能だ。▶︎本質的に新たな付加価値を生み出さない産業に貴重な生産資源を振り向ければ、🇯🇵日本経済は成長できずに没落の一途を辿る。▶︎成長が期待できず労働者の確保もままならないので企業は🇯🇵日本を去るし、したがって働き先がないので若者たちは海外に雇用を求めざるを得ない。▶︎こうして、ハイスペックな若者や富裕層たちはもちろん、単純労働者、企業も、没落する🇯🇵日本から、より良い経済環境、労働条件、生活環境を求めて海外に脱出・流出する一方、🇯🇵日本脱出が難しい高齢者は🇯🇵日本に置き去りにされる。▶︎しかし、🇯🇵日本国内はめぼしい労働者の姿はなく、したがって産業もないため、地方だけではなく都市部も荒廃し、スラム化が進む、ディストピアとなる。▶︎これをヘルニッポンと呼ばずしてなんと呼べばよいだろうか。▶︎社会保障の既得権者が増え、その表裏一体で負担が増え、出生数が減り、若者が減り、労働者が減る「減るニッポン」が、産業が消え、経済が衰退し、荒れ放題の社会が残る「ヘルニッポン」に転化してしまうのに時間はそうかからないだろう。▶︎以上のシナリオはあまりに悲観的過ぎると思われるかもしれないが、常に頭の片隅に置くべきシナリオだと筆者は考えている。▶︎もちろん将来ある若者たちはヘルニッポンと心中する必要は全くない。▶︎いつでも海外に脱出できるよう準備を怠らないのが肝心だ[*文:島澤諭氏・関東学院大学経済学部教授…2023.03.20付記事抜粋]
■『🇯🇵日本はなぜダメなのか?…欧州最高の“知の巨人”ジャック・アタリ氏が提言する「🇯🇵日本復活への3条件」』
「世界最高の知性」の一人と言われるジャック・アタリ氏。▶︎「ソ連崩壊」から「ドナルド・トランプ誕生」まで数々の歴史的出来事を予言してきた彼は、国際競争力が落ちる🇯🇵日本に“今こそ必要なものが3つある”と言います。▶︎岐路に立つ🇯🇵日本は、いったいどこへ向かうべきなのか。▶︎『2035年の世界地図――失われる民主主義 破裂する資本主義』に収録されたアタリ氏の新たな予言を特別に公開する。
◆テクノロジーよりも、人間への「教育」
――ソーシャルメディアやデジタル・プラットフォームが、特にパンデミックや🇷🇺ロシアの🇺🇦ウクライナ侵攻の際に果たした役割をどうお考えですか。▶︎民主主義への影響について、あなたは楽観的でしょうか。▶︎あるいは悲観的な考えをお持ちでしょうか。
ジャック・アタリ氏:私は、楽観的です。▶︎もちろんフェイクニュースが沢山あって、誹謗中傷も多く、私も多くの公人と同様に被害者になることが非常によくあります。▶︎でも、私はかなり楽観的です。▶︎なぜなら「透明性が勝つ」と思うからです。▶︎イランで起きたことを見てください。▶︎🇷🇺ロシアで起きたことを見てください。▶︎たとえ独裁者がしばらくの間勝利したとしても、新しいテクノロジーによってもたらされる透明性は、より自由で、より民主的な方向へと推進してくれるのです。▶︎もちろん、もしテクノロジーの悪い側面に勝利させたら、大惨事になります。▶︎たしかに悪い側面はあります。悪い点とは、私たちが読書ではなく、画面に長時間向かうことです。▶︎若者は勉強よりもビデオゲームに時間を費やしており、これは危険です。▶︎テクノロジーには、良い使い方と悪い使い方があります。▶︎だからこそ、教育が重要なのです。▶︎近く🇫🇷フランスで出版する私の本は、教育がテーマです。▶︎教育こそが未来の鍵であり、新しいテクノロジーの最良の部分を使うことで、メディアや教育を含めた世界全体が大きく変わり、私たちは勝利することができる。▶︎一方で、テクノロジーは「最良」だけでなく「最悪」の結果ももたらしうるものです。
◆今後、教育システムは崩壊する可能性がある
――実際にAIやロボティクスはどんどん普及していくなど、デジタル技術で社会が変容し、混乱も生じる中で、教育や教育システムに一番欠けているのは何だと思いますか。
ジャック・アタリ氏:私たちは今後、教育システムが崩壊しかねない危険に直面することになると思います。▶︎若者はすべてがオンライン上で学べると感じ、若者が教師の言うことに興味を持たなくなる。▶︎さらにアフリカや🇮🇳インドなど、多くの国では教育システム自体が、若者たちに何も教えられなくなるでしょう。▶︎若い人口が急激に増えているからです。▶︎さらに、システムを利用する人が多すぎるという場合ではなくとも、テクノロジーをより活用することにより、一種のセルフ教育を行う、つまりデジタル機器だけを相手に、一人で学習するといったことも起きてきます。▶︎今後はホログラムやメタバースを通して、さらに後にはバイオテクノロジーなどを通じて、より重要な問題を一人で学んでいくことになるでしょう。▶︎最終的に、人々が能力に応じて選別される傾向が極端に強まる。これは悪夢ですが、将来現実のものとなるおそれはあります。▶︎そうならないために、私たちが変えなければならないのは、既存のシステムの長所を生かし、人々が学校でも、家庭でも学ぶ努力をし続けることです。▶︎私たちは、人生を通じて学ばなければなりません。▶︎教育は若い人だけのものではありません。▶︎私たち一人ひとりが生涯を通じて学ばなければなりません。▶︎物事は急速に変化しているからです。▶︎私たちは皆、生涯学び続けることになるのです。▶︎しかし、若い人たちは、異なる種類の価値に基づいて学ばなければならないでしょう。▶︎今日、私たちが学んでいる多くのことは、もう必要なくなります。▶︎読み書きや計算も学ぶ必要はありません。▶︎なぜなら、それは機械がやってくれるからです。▶︎しかし、大変多くの他のことを学ばなければなりません。▶︎既存のシステムの中からベストを選ぶとしたら、世界で最高の2つは、🇫🇮フィンランドと🇰🇷韓国だと思います。▶︎いい面を持っています。
◆🇯🇵日本がデジタル技術企業の創出で遅れをとる理由
ジャック・アタリ氏:そして、さらにより踏み込んで新しいテクノロジーを、一部は学校で、一部は家庭で活用する必要があります。▶︎そして、内容よりも価値観を学ぶことです。▶︎内容は常に変化しますから。▶︎例えば「人は非暴力的であるべきだ」という価値観を学ばなければなりません。▶︎暴力を避ける方法を教える学校を見たことがありませんが、これは将来において間違いなく根本的に重要なことです。
――🇯🇵日本は国際競争力のあるデジタル技術企業の創出において遅れをとっていると思われます。▶︎なぜだと思いますか。▶︎また、今後🇯🇵日本が追いつくための方法はあるのでしょうか。
ジャック・アタリ氏:それは、研究にもっとお金をかけることでしょう。▶︎そして、若者の創造性です。▶︎そして、最も大切なのは、異論を称えることです。▶︎大勢順応を称えるのではなく、異論を称え、前例のないことに挑戦することを称えるのです。▶︎グローバルな軍隊の一員ではないことを、「自分らしくありたいこと」を、称えるのです。▶︎スタートアップ企業やデジタルの成功は、ルールに従って行動しなければならない、と信じていない人たちによってもたらされています。▶︎つまり、彼ら彼女らは、「ルールを破らなければならないこと」を理解し始めています。▶︎ここにはおそらく、🇯🇵日本社会の文化的要素があるのかもしれません。▶︎🇯🇵日本社会が基づいているのは、ルールに反したら称賛されるのではなく、ルールに従って振る舞うということですから[*東洋経済ONLINE 2023.03.21付記事抜粋/文:ジャック・アタリ氏・経済学者/思想家]
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【掲載日】2023年03月21日(火)



