【シンギュラリティ後の世界〜加速する2045年問題---vol.164


『チャットGPTで株価高まる世界のAI企業懸念される「巨大リスク」とは』


世界のIT産業ではAI分野に関心がシフトしている。▶︎言語型AIなどと呼ばれる「チャットGPT」を用いてマイクロソフトは検索市場のシェアを、王者・グーグルから奪取しようとしている。▶︎AIが果たす役割は日常生活から企業の事業運営、社会インフラなどの管理、さらには防衛(安全保障)まで増えている。▶︎🇺🇸米国は🇨🇳中国が台頭する状況に懸念を強め、さまざまな対策を講じている。▶︎🇺🇸米中対立のはざまで揺れるAI業界の成長性をどのように見極めればいいのだろうか。

◆🇺🇸🇨🇳米中対立のはざまで揺れるAI業界

最近、世界のIT先端分野の中心は、急速に変化している。▶︎主な兆候は、AI(人工知能)を使った文章や画像の生成などへの期待の高まりだ。▶︎🇺🇸米オープンAIの「GPT-3.5(チャットGPTを支えるAI)」、グーグルの「Bard」、中国バイドゥの「文心一言(アーニーボット)」などが注目を集めている。▶︎こうした先端分野の企業に期待する投資家が増え、足元で🇺🇸米ナスダック総合指数も底堅い展開になっている。▶︎🇺🇸米国のバイデン政権は、🇨🇳中国の華為技術(ファーウェイ)に対する全面禁輸を検討している。▶︎🇺🇸米議会では超党派議員によって、動画投稿アプリ「TikTok」の一般利用を禁止する法案成立も視野に入っている。▶︎なお、🇦🇺オーストラリアでは、AIを搭載した🇨🇳中国製の監視カメラの排除が進みつつあるようだ。▶︎日用品などの分野で🇺🇸🇨🇳米中の相互依存度が高まっている一方、先端分野での🇺🇸🇨🇳米中対立はさらに熱を帯びている。▶︎それは、世界経済にとって無視できないマイナスの要因になる。▶︎世界経済は🇺🇦ウクライナ紛争をはじめとする不安要因を抱え、インフレなどに苦しんでいる。▶︎🇺🇸米国や🇪🇺欧州では、想定以上に金融引き締めが長引く可能性が高い。▶︎世界経済の成長に大きなインパクトを与えるAIなどの先端分野において、🇺🇸🇨🇳米中対立が一段と激化すると、実体経済と金融市場にマイナス影響が及ぶことは避けられないだろう。

世界のAI企業で期待の星は?

世界のIT先端分野ではサブスクリプションや広告などのビジネスモデルから、より急速にAI関連分野に関心がシフトしている。▶︎きっかけの一つが、マイクロソフトとオープンAIとの連携強化だ。▶︎従来のAI利用方法といえば、機器の使い方の説明やアラームの設定などがメインだった。▶︎しかし、言語型AIなどと呼ばれる「チャットGPT」は、自ら情報を生成する力を発揮し始めた。▶︎それを用いてマイクロソフトは検索市場のシェアを、王者・グーグルから奪取しようとしている。▶︎AIは既存の産業構造にかなりのインパクトを与えるとの見方は増えた。▶︎AI利用の範囲は検索にとどまらない。▶︎112日の🇺🇸米国株式市場では、企業、政府、安全保障関連で意思決定などをサポートするAI開発を行う企業であるビッグ・ベアAIBigBear.ai Holdings,Inc)の株価が前営業日の引け値から260%(株価は3.6倍)超上昇した。▶︎材料視されたのは、同社が🇺🇸米空軍から数量未確定の契約を(期間10年、総額9億ドル、およそ1215億円)を結んだことだった。▶︎日常生活から企業の事業運営、社会インフラなどの管理、さらには防衛(安全保障)まで、AIが果たす役割は増えている。▶︎AI利用には、深層学習を支えるチップの性能向上が欠かせない。▶︎AI需要の増加期待を背景に、2023年初から3月初旬まで、🇺🇸米国の株式市場では、フィラデルフィア半導体株指数の上昇が顕著だった。▶︎🇨🇳中国でもAI関連企業が注目されている。▶︎代表例はファーウェイだ。▶︎🇺🇸米トランプ前政権下での半導体禁輸措置などによって一時、ファーウェイの経営体力は大きく低下した。▶︎そのため同社は「オナー」ブランドのスマホ事業を売却して生き残りを図りつつ、AI分野に経営資源を急速に再配分した。▶︎その成果として、世界の港湾別コンテナ取扱個数ランキングで上位の天津港で、ファーウェイのAIを用いた港湾の運行システムを稼働し始めた。▶︎🇨🇳中国では寒武紀科技(カンブリコン・テクノロジーズ)など、AI関連新興企業に対する成長期待も高まっている。▶︎習国家主席の肝いりで創設された「科創板市場」に上場するカンブリコンの株価は、3月上旬までの年初来で約70%上昇した。

🇺🇸🇨🇳米中対立がAI分野で先鋭化

🇺🇸米国は🇨🇳中国が台頭する状況に懸念を強めている。▶︎ファーウェイの全面禁輸に加え、TikTokなど外国企業のITサービスの利用を禁じる権限を🇺🇸米国政府に付与する法案成立も目指している。▶︎なお、🇪🇺欧州委員会、🇨🇦カナダ、わが国でも政府職員の業務用端末でのTikTok利用が禁止された。▶︎🇨🇦カナダでは、「2019年と2021年の連邦議会選挙に🇨🇳中国が介入した」との報道もある。▶︎また、🇺🇸米国では港湾で稼働しているクレーンが、「🇨🇳中国によるデータ抜き取りの手段になる」といった懸念が浮上し始めている。▶︎そうしたリスクに対応するために、🇺🇸米国は🇯🇵🇰🇷🇹🇼日韓台との連携を強化し、半導体など先端分野での対🇨🇳中包囲網をさらに強固にする意向だ。▶︎また、アップルなどは生産拠点を🇨🇳中国から🇮🇳インドに移管しており、🇮🇳インドともAIなど先端分野での連携を強化しようとしている。▶︎一方、🇨🇳中国共産党政権は、🇺🇸米国などの圧力に対抗し、AI利用を加速させようとしている。▶︎象徴的なのが、35日から始まった全人代と同じタイミングで実施された、全人代代表の改選だ。▶︎経済分野の代表としてAI開発企業である科大訊飛(アイフライテック)トップの劉慶峰氏が再選された。▶︎一方、テンセントの馬化騰(ポニー・マー)氏は代表から退いた。▶︎習政権は、産業補助金の積み増しなどによってAI開発、ロジック半導体の微細化などの製造技術向上を加速するはずだ。▶︎また、2月下旬から3月上旬に🇪🇸スペイン・バルセロナで開催された世界最大規模の移動体通信展示会「モバイル・ワールド・コングレス」にて、ファーウェイは、政府や大企業だけでなく、中小企業向けの事業を強化すると発表した。▶︎シェアは低下したものの依然としてファーウェイは世界トップの通信基地局メーカーだ。▶︎その地位を生かし、同社がAIなどを用いたIoTサービスを新興国の中小事業者に提供するもようだ。

明確な絵が描けないAIの可能性・成長性

現時点でチャットGPTなど生成AIの設計、開発などに関して、🇺🇸米国は🇨🇳中国をリードしている。▶︎🇺🇸米国は🇨🇳中国の半導体関連企業への禁輸措置をさらに強化するなどし、ファーウェイをはじめとするIT先端企業の成長をより強く抑え込もうとするだろう。▶︎それによって、先端分野における🇨🇳中国の取り組みが鈍化する可能性がある。▶︎翻って🇺🇸米国をはじめ主要先進国のAI利用には、克服されるべき課題も多い。▶︎チャットGPTに関して、誤った検索結果の提示や、子どもの教育への配慮などの懸念が多く指摘されている。▶︎一例としてアップルはチャットGPTを用いて過去のメールを検索し、自動で文書を作成するアプリ、「ブルーメール」のアップデートをしなかった。▶︎AIを用いることで定型化された業務の効率化などは期待されているものの、現時点では🇺🇸🇨🇳米中対立の先鋭化、人権への配慮、さらには人類の学ぶ意欲への悪影響など、AI利用がどのように進捗(しんちょく)するか不確定な要素は多い。▶︎そう考えると、年初来のAI関連株の上昇は、「行き過ぎ」に見える。▶︎加えて、主要先進国は当面の間、インフレ沈静化のために金融を引き締めなければならない。▶︎🇺🇸米国を中心に世界的に金利はさらに上昇し、株価は下落しやすくなる。▶︎特に、期待先行で株価が上昇したAI関連銘柄への売り圧力は相対的に大きくなりやすい。▶︎懸念されるのは、世界的に株価が下落するタイミングで、先端分野での🇺🇸🇨🇳米中対立の先鋭化が本格化する展開だ。▶︎AI、半導体、さらには人権の分野で🇺🇸🇨🇳米中対立が一段と熱を帯びれば、サプライチェーンの混乱が再燃する。▶︎🇹🇼台湾侵攻の緊迫感も高まり、🇨🇳中国ではなく他国に生産拠点をシフトさせる動きも激化するだろう。▶︎そうなると、これまで以上に在庫を積み増そうとする企業は増えるに違いない。▶︎それに伴い、各国企業のコストは増加し、世界経済と金融市場の不安定感が追加的に高まると予想される。▶︎現在、AI関連企業を物色する投資家は多いが、チャットGPTなどの利用は一筋縄にはいかないだろう[*DIAMOND online 2023.03.14付記事抜粋/文:真壁昭夫氏・多摩大学特別招聘教授]

『大規模言語モデル(LLMLarge Language Model)とは?』


1:大規模言語モデル(LLM)のイメージ]

大規模言語モデルLLMLarge Language Models)とは、大量のテキストデータを使ってトレーニングされた自然言語処理のモデルのことである。▶︎一般的には大規模言語モデルをファインチューニングなどすることによって、テキスト分類や感情分析、情報抽出、文章要約、テキスト生成、質問応答といった、さまざまな自然言語処理(NLPNatural Language Processingタスクに適応できる(図1)。▶︎大規模言語モデルの代表例としては、2018年にGoogleが発表した「BERTBidirectional Encoder Representations from TransformersTransformerによる双方向のエンコード表現)」や、2020年にOpenAIが発表した「GPT-3」などが挙げられる。202212月に発表された「ChatGPT」は、2022年初頭にトレーニングした「GPT-3.5シリーズ」をチャット(対話)向けにファインチューニングFine-tuning微調整)したものであり、大規模言語モデルの応用例の一つだ。▶︎大規模言語モデルの「大規模」に明確な基準はないが、BERTGPT-3を参考値として示しておく。▶︎BERTは、28億語のWikipediaデータと8億語のGoogle BookCorpusデータで合計33億語のデータからトレーニングされている。▶︎GPT-3は、語数は不明だが45TB(テラバイト)のデータからトレーニングされている。▶︎GPT-3.5のデータセットについては筆者が調べた限り発表されていない。▶︎大規模言語モデルは、その内部のニューラルネットワークに含まれるパラメーターの数も非常に多い。▶︎BERT34千万、GPT-31750億、GPT-3.53550億ものパラメーターを持っている。▶︎ちなみに、GPT-3GPT-3.5基盤モデル(Foundation Modelであり、かつ大規模言語モデルでもある。▶︎ただし、「テキスト以外のデータ」(例えば画像データ)を使ってトレーニングした基盤モデルは、当然ながら「大規模言語モデル」とは言えないことに注意してほしい。▶︎つまり、必ずしも「基盤モデル  大規模言語モデル」ではない[*ITmedia news 2023.03.13付記事抜粋]

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【掲載日】2023.03.14(火)