【シンギュラリティ後の世界〜加速する2045年問題---vol.128


『チャットGPTは、🇺🇸アメリカ社会をどう変えるか?』


20221130日に、サンフランシスコに本拠を置くベンチャー企業 Open AI は、AI(人工知能)が人間と対話する「チャットポット」をインターネットのパブリックな空間でリリースしました。▶︎UI(ユーザーインターフェース)は簡単で、ユーザーが文章でポットに質問を投げかけると、文章で回答を返してくるというスタイルです。▶︎これが現在、世界中で話題になっているチャットGPT の始まりでした。▶︎私が、その存在と効果を知ったのはリリースから約1カ月弱後の12月後半でした。▶︎その時は英文のネイティブチェック的な使い方を、テック技術者のアシストで経験したのですが、その精度に驚嘆したのを覚えています。▶︎それから1カ月経過した2023年の1月末には、かなり広範な社会現象になり、2月に入るとユーザーが3億人を超えたとして一般のメディアでも話題にされるようになりました。▶︎その後、サーバの容量不足でサービスを受けるのに時間がかかる時期もありましたが、本稿の時点では容量の追加や、日々のアップデートなどがされているらしく、接続については、やや改善されています。▶︎運営サイドも、213日には「初期リリース」から「安定的リリース」にフェーズを進めています。▶︎また、混雑時に優先して使用ができる有料サービスの「PLUS」も始まっていますが、本稿の時点ではキャパを超えているらしく、登録しようとすると「ウェイトリスト」に入れられます。▶︎ちなみに、現時点では日本語のデータ蓄積量はまだまだ少ないようで、事実を問うような質問ではどんどん誤情報が返ってくるのが現状です。▶︎試しに、今現在「旬」である芸能人3人について入力してみたところ、1名は「知らない」と言われ、残りの2名については全く間違った情報が返ってきました。▶︎ビジネスレターの様式などはある程度は習得しているようですが、日本語特有のニュアンスの表現に関しては、まだまだ実用レベルにはなっていません。

英語の膨大な言語データ

ですが、英語の世界では違います。▶︎そもそも Open AI が英語圏の企業ということもありますが、恐らく膨大な言語データを有しているものと思われ、まず文章の作成や添削の能力としては、ハッキリ申し上げて実用レベルに達していると思います。▶︎現時点では、🇺🇸アメリカ社会もその実力を認め、その上で様々な分野で議論が始まっているところです。▶︎今回は4つの分野についてお話したいと思います。1つ目は、教育の分野です。▶︎情報を検索するということでは、既にネットに多くのツールがありますが、チャットGPT を使うと正確な英文が簡単に書けてしまう、これは画期的なことです。▶︎まず、高校や大学では宿題のエッセイを書くのに、学生が使い始めており、早速論争になっています。▶︎例えば、調査と作文を一括で処理させるような行為が横行するようだと、学生の学習体験にならず学力が向上しないという指摘がされています。▶︎このため原則禁止にする学区もあり、学校貸与のデバイスでは接続を遮断するケースも見られます。▶︎一部の大学では、チャットGPT が出力してくる英文の「クセ」を見抜くソフトを導入して「不正行為」の摘発に乗り出すとしているケースもあります。▶︎深刻な問題は、大学入試の小論文(エッセイ)試験です。▶︎🇺🇸アメリカの場合は、在宅受験であり、しかも教員や親などから英語の「言葉遣い」のチェックを受けることは特に禁止されていません。▶︎ですが、最初からAIに書かせたエッセイが横行すると入試制度が混乱してしまう懸念があります。▶︎2023年の入試(原則として2022年の12月末締め切り)では、表面だった問題にはなっていませんが、次年度へ向けては各大学が対応に追われることと思います。▶︎一方で、修士レベル以上では、文章作成というのが「論文執筆の後工程」に過ぎないという考え方を取るならば、チャットGPT というのは論文の生産性を劇的に高めるのは事実です。▶︎また、英語力が発展途上の留学生に取っては、論文執筆の心強い味方になります。▶︎もちろん出力された英文が自分の論旨に外れていないかを確認する工程を省略することはできませんし、ある程度はオリジナルな表現を入れるべきですが、こうした使用法は否定できないという意見はあります。

<知的労働がAIに取って代わられる?>

2つ目は、生活の分野です。▶︎医者にちょっと複雑な相談をテキストで行う、小売店などが消費者への注意事項を告知する文書を用意する、保護者が教師に対して子どもの様子を報告する、などといった生活の中で「かなり丁寧で、正確性が求められる」レターを書くという局面はあります。▶︎そんな場合に、チャットGPT を使えば誰でも一定レベルの英文が書けるというのは便利です。▶︎さらに、そうした利用者からの依頼や問い合わせに応える側では、一々考えて文章を書くのではなく、AIに条件を放り込めば回答を作ってくれるわけです。▶︎この点に関しては、このままAIが進化すると、ある程度の知的労働は機械に取って代わられてしまうのではという議論もあります。▶︎3つ目は、プログラミング(コーディング)の分野です。

▶︎チャットGPT には、当初からプログラムを入力すると、より良いプログラムの書き方を返してくるという機能があります。▶︎もちろん、産業別に込み入った条件があったり、複雑なインターフェースがあったりという条件下では、要件を入れただけでは、使えるプログラムを返してくるわけではありません。▶︎ですが、スキルの低いプログラマーがダラダラ書いたステップ数の多いプログラムを入れると、短くて切れ味の良いプログラムに書き換えてくれるとか、条件の入れ方のコツを習得すると中級者レベルでも生産性支援ツールとして役立つということは確かにあるようです。▶︎デバッグ(プログラムのバグの解決)の機能も結構使えるという声があります。▶︎そうしたツールは既に色々出回っているわけですが、チャットGPT が相当なビッグデータを集めているとしたら、業界のゲームチェンジャーになる可能性はあります。

ポリコレに汚染されている?

例えばですが、チャットGPT が実用化されることで、あるスキル以下のプログラマーは不要になるとか、職種の分担が変わってくるとか、あるいはシリコンバレー名物の「面倒な要件を与えてプログラムを書かせる入社試験」が、今まで以上に、やたらに難しくなるかもしれないなどという議論があります。▶︎4番目は、これは使用法ではなく、チャットGPT が出力してくる英文の「味付け」の問題です。▶︎202212月に使い始めた人の多くは、私も含めて、出てくる英語の文章が「とても丁寧で感じがよく、スッキリしていて、しかも世界中の誰も傷つけないように」書かれていることに驚いたのでした。▶︎これは、そのような「味付け」がアルゴリズムの中で設定されているようですし、またその背景には、そのような「味付け」が21世紀の英語圏では最も広範な実用性を持つという判断があると考えられます。▶︎ですが、これに対しては早速「チャットGPT ポリコレに汚染されている」とか「政治的バイアスが不快」という声が上がっています。

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【用語解説】

◉『ポリコレ』=偏見や差別に起因した表現や認識を改めるための概念のことで、人種や性別・文化・年齢・職業などの多様性を認め、中立的な表現や言葉を用いる方針を意味する。「ポリティカル・コレクトネス(political Correctness)」の略称。

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この問題は、もしかすると2022年のイーロン・マスク氏による「同氏の基準による発言の自由」を掲げての、ツイッター買収のような騒動に発展するかもしれません。▶︎ちなみに、イーロン・マスク氏は Open AI の創業メンバーですが、現在は離れています。▶︎それはともかく、リベラル寄りとされる チャットGPT に「対抗」して、保守的な立場や、統制的な価値観に基づいたAI開発などの動きが出てくるかもしれません。▶︎いずれにしても、20233月初旬の現在、テックの分野では、このチャットGPT が大きな話題になっているのは間違いありません[*Newsweek 2023.03.02付記事抜粋/文:冷泉彰彦氏・在米作家]

『チャットGPT、他アプリと連携オープンAIが機能開放』


🇺🇸米新興企業オープンAIOpenAI)は31日、対話型人工知能(AI)「チャットGPTChatGPT)」の機能を外部企業に有料で開放すると発表した。▶︎対話型AIは、日常的な言葉を入力することで、検索などの利便性が向上すると期待されている。▶︎さまざまなアプリとの連携が可能になり、普及に弾みがつきそうだ。▶︎開放するのは、システム同士を連携できる「API」と呼ばれる仕組み。

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【用語解説】

◉『APIApplication Programming Interface』=接続先のOSを呼び出すことや互いのソフトウェアやアプリケーション機能の一部を共有すること。

アプリケーション(Application=ある特定の機能や目的のために開発・使用されるソフトウェア
インターフェイス(Interface=コンピュータ用語でいうと、「何か」と「何か」をつなぐもの

つまり、「アプリケーション、ソフトウェア」と「プログラム」をつなぐもの。プログラマーが自分たちのアプリケーションを他のアプリケーションやウェブサービスと統合したり、連携するために使用することができる。


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接続した開発事業者が機能を使えるようになる。▶︎オープンAIは、入力された文字数に応じて事業者から利用料を徴収する。▶︎システム全体の最適化を進めたことにより、料金は現在開放している別のモデルに比べ10分の1に抑えた[*時事通信 2023.03.02付記事抜粋]

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『くら寿司が「AIカメラ」を全店舗に導入、相次ぐ迷惑行為対策に不審な動きを検知、責任者へ即時連絡』


くら寿司は32日、店内での迷惑行為を防ぐ仕組みとして「新AIカメラシステム」を同日から全店舗で導入すると発表した。▶︎回転すし店を中心とした飲食店で相次ぐ悪質な迷惑行為への対策の一環。▶︎回転レーンの上に設置したAIカメラがすしを覆うカバーを監視し、不審な開閉を検知すると責任者などへ連絡が届くという。▶︎同社では空気中のホコリやさまざまなウイルスを防ぐため「抗菌寿司カバー」を導入している。


レーン上のAIカメラがこのカバーの不審な開閉を検知すると、同社の本部でアラートが鳴り、直ちに該当店舗の責任者へ電話連絡を行う。▶︎連絡があった店舗では、異常を検知したすし皿を撤去し、客への声がけを行う仕組み。▶︎同社が2003年に導入した「店舗遠隔支援システム」を使うことで、迷惑行為発生時の録画映像や店舗の様子も確認できる。▶︎場合によっては、速やかに警察へ通報することも可能という。▶︎同社は「回転すしなど飲食店で悪質な迷惑行為が相次いでいる。▶︎また、セルフサービス形式の飲食店の利用に対し、不安を感じる客も増えており、外食産業全体の危機にもつながっている」と指摘。▶︎回転レーンによる商品提供への不安を払拭し、回転すしの文化を守るために、AIを活用したカメラシステムを開発したとしている[*ITmedia NEWS  2023.03.02付記事抜粋]

▶️犯罪抑止には一定の効果はあるだろうが、AIカメラ撮影による来店客の肖像権はどのようにクリアしているのだろうか?〆

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【掲載日】2023.03.02(木)