【盛者必衰・ビッグテックの落日〜新たなパラダイムシフトを探すためのヒント vol.24


『来たる「ビッグデータの終焉」ジェフ・ベゾスも実行した、次に注目すべき3つのこと』


およそ10年前、世界はビッグデータに沸き、データによってあらゆる産業や生活領域で革命が起きるとされていた。▶︎実際、それは起きており、ビジネスの競争力を飛躍的に高めるなど多くの面で効果を発揮した。▶︎だが昨今、ビッグデータにはプライバシー面や分析の精度面などで問題があると指摘され、データの質が問われるようになってきた。▶︎そこで注目されているのが、少量のデータで高精度の解析を可能にするスモールデータの活用である。▶︎これらは、アマゾンを巨大EC企業に育て上げたジェフ・ベゾス前CEOも実行していたことだ。▶︎本稿では、ビッグデータの先に起きるデータ活用の変化を探る。

メタやグーグルなどで地位を築いた「ビッグデータ」の変遷


ビッグデータは、マッキンゼーが2011年に発表した報告書「次世代イノベーションのフロンティアとしてのビッグデータ」をきっかけにビジネストレンドになったとされている。▶︎20122月には世界経済フォーラム(WEF)のダボス賢人会議が、「ビッグデータの大きなインパクト」と題した報告書を公表。▶︎同年3月には当時のオバマ政権が2億ドル(約259億円)規模のビッグデータ促進政策を打ち出した。▶︎こうしたブームの中、🇺🇸米ニューヨーク・タイムズ紙は20122月に「今や、時代はビッグデータだ」とする記事を掲載した。▶︎そのため、「ビッグデータを持たないなら、あなたは単なる意見を持つ人に過ぎない」との冗談まで生まれたほどだ。▶︎ビッグデータは一般に「巨大で複雑なデータの集合体」と理解され、その傾向をつかむことで、医療やマーケティングに活用できる新発見などにつながると期待された。▶︎特にECにおいてはWeb上の行動解析で、顧客の興味や嗜好のビッグデータを個人情報と突き合わすことで売上を飛躍的に伸ばすことができた。▶︎そしてフェイスブック(現メタ)やグーグルのオンライン広告、自動化された株式売買、ネットフリックスなどの動画ストリーミング、TikTokなど短編動画ソーシャルメディア、アマゾンのECマーケティングなどで「裏方」として確固たる地位を確立していった。▶︎一方、2010年代中盤を過ぎるとビッグデータは普遍化・陳腐化し、ただの「データ」と呼ばれるようになった。▶︎同時に、その核心的な役割のゆえに批判を集めることとなった。

ビッグデータ批判の「2つの例」

これまでにあった批判を2つ紹介する。▶︎まず起こった批判は、ビッグデータの信頼性に関するものだ。▶︎一部の研究者から、過去の経験はどれだけ多く集めても、過去と同じ事象を予想するに過ぎないとの声が上がった。▶︎事実、日常的にビッグデータを活用していたにもかかわらず、経済学者や企業のCEOたちは、2022年のインフレ高進やサプライチェーン問題を効率的に予測できなかった。▶︎さらに、どれだけデータが多くても見落としは発生するし、それでビッグデータの質も落ちる。▶︎ビッグデータは万能ではないのだ。▶︎2つ目に、ビッグデータはマーケティングや道路混雑緩和、疾病早期発見に貢献できると同時に、問題の解決ではなく問題の拡大をもたらす「諸刃の剣」であると認識されたことだ。▶︎好例は、フェイスブックによるプライバシー侵害問題。▶︎個人の嗜好や感情、行動を理解するツールとしてビッグデータが活用される場合、必然的にプライバシー問題を引き起こす可能性が高い。▶︎フェイスブックによる個人情報漏えい事件をきっかけに、広告業界をはじめ、あらゆる業界でサードパーティーからのビッグデータ収集・共有の実態が一般に広く理解されるようになった。▶︎さらに同時期には、ユーザーのネット閲覧履歴を用いた航空会社やEC業者が同じモノやサービスの価格を一部顧客にのみつり上げるなどで、クッキーによる追跡やサードパーティー間の顧客ビッグデータ共有が困難になった。▶︎批判を受けるビッグデータだが、無論消えてなくなってしまうわけではない。▶︎利用のあり方に変化が生じ、より適正な使い方が模索されている。▶︎一言で表すなら、データの量よりも質(精度)が重要になってきたわけだ。

データ活用で注目すべき「スモールデータ」など3


質が重要になってきて注目されるのが、(1)スモールデータ、(2)人力によるデータ解釈、(3AIアルゴリズムによる精度向上の3つである。

スタンフォード大学で教鞭を執りビッグデータの著名な専門家であるカルロス・グエストリン教授は2014年、「ビッグデータは新たな産業革命を巻き起こし、我々の生活を想像していなかったほどに改善する」と述べていた。▶︎ところが、2022年のインタビューでグエストリン教授は、「ビッグデータはもはや優先事項ではない」と立場を変化させている。▶︎同教授は、「少量のデータがあれば、複雑な問題を解くことができる。▶︎このため昨今はAIモデルに多くのデータを与えることよりも、それらモデルの基礎をなす設計図に関心が集まっている」と語った。▶︎つまり、AIの言語モデルや基礎の設計図に対する考え方を根底から見直すことで、ビッグデータにとらわれないアプリケーション開発が進んでいる。▶︎具体的には、ある種の課題に特化された少量のデータを使うことで、分析に調整が加わり、政策決定者や経営者が最も知りたい垂直的なソリューションを得られるという。▶︎さらにデータの解釈においても、単純なスモールデータをスーパーコンピューターではなく人間に分析させることで、より正確な解を得られると主張する研究者もいる。▶︎これも、データが大規模でなくても優れたソリューションを生み出せるとの考えの1つだ。

ジェフ・ベゾスが実行した「データ活用術」

ビッグデータのブームが始まった頃すでに、ハーバードビジネスレビュー誌が20124月号で、「ビッグデータはどんなにわかりやすく解析されたとしても、大きな決断(ビッグディシジョン)によって補完されなければならない」と指摘している。▶︎興味深いことに、ビッグデータからEC分野で最も大きな恩恵を受けたと考えられるアマゾンでは、ジェフ・ベゾス前CEOAIによる売上データの解析結果のみに頼っていなかったという。▶︎経営幹部に顧客からの苦情メールを、ビッグデータの解析結果と人間による分析のバランスを取りながら徹底調査させていた。▶︎ベゾス氏はビッグデータを盲信せず、人力による確認と最終判断を強調したのである。▶︎アレン人工知能研究所(AI2)のテクニカルディレクターを務めるオレン・エトゥジオニ氏も、「AIは信頼性に欠ける部分があり、その解析プロセスの中に人間をかませることで、AIをエンパワーできる」と論じている。▶︎さらに、前述のグエストリン教授が説明するように、ビッグデータを解析するAIの言語モデルや基礎の設計図に対する考え方を見直すことで、AIアルゴリズムの精度が改善されるとの見解が提起されている。

データ分析で必要になるAIともう1

ビッグデータは非常に有用であるが、どれだけ多く集めても過去の経験の集合体であり、近年においてはプライバシー問題などから収集そのものも困難化している。▶︎そうした限界を認識した上でビッグデータ運用は、スモールデータビッグディシジョン、そしてAI解析アルゴリズムの精度向上により進化している。▶︎こうした中、大企業にとどまらず中小企業も、サードパーティーの提供する「サービスとしてのAIAIaaS)」を用いることで、コストを節約しながらビッグデータの解析を利用できるようになってきた。▶︎🇺🇸AIaaS市場は2024年には116億ドル(約15,028億円)規模に達するとの予想もある。▶︎翻って、黎明期にあるメタバースでは、ユーザーが生み出すビッグデータをどのように活用できるかが関心事となっている。▶︎ビッグデータは陳腐化しながらも死なず、最適な応用分野においてさらに発展し、その解析方法もAIと人力のバランスをとったハイブリッド型へと進化していきそうだ[*ビジネス+IT 2023.02.03付記事抜粋/文:岩田太郎氏・在米ジャーナリスト]

Web3を推進すれば「不正なき自由で民主的な社会が実現できる」は本当か?』


今やすっかりおなじみとなった「メタバース」とともに、次世代のウェブサービスを象徴するバズワードとして注目されているのが「Web3Web3.0)」だ。▶︎しかし「GAFAGoogleAppleFacebook/現MetaAmazon)」など、通称「ビッグテック」と呼ばれる巨大IT企業による支配からネット社会を解放したインフラで、自由で公平な未来をもたらすのが「Web3」だといわれても、いまひとつピンとこない人も多いのではないだろうか?▶︎そんな疑問にわかりやすく答えてくれるのが、昨年『メタバースとは何か』がベストセラーとなった岡嶋裕史氏の新刊『Web3とは何か』だ。

――本題のWeb3とは何か、というお話を伺う前に、そもそもWeb2Web2.0)ってなんでしたっけ?

岡嶋:Web2.0とは、それまで固定されていた「情報の送り手」と「情報の受け手」が流動化・双方向化したウェブの利用法を意味する言葉で、🇯🇵日本では梅田望夫(もちお)さんの『ウェブ進化論』が出版された2006年あたりから流行しました。▶︎これ、今ではSNSを思い浮かべる人が多いと思うんですが、当初はブログあたりから始まって、その後、ウィキペディアのような集合知サービス、フェイスブックのようなSNS、ユーチューブのような動画配信サイトなど、誰もが情報の発信者になれるウェブ上のサービスが急速に普及していくことになりました。

――そのWeb2.0Web3とは何が違うのでしょう?

岡嶋:自分で『Web3とは何か』という本を書いておきながら、こんなことを言うのもアレですが、僕はWeb2.0Web3も根っこは同じで「意識が高い人たちのキラキラな空気感」でしかないと思ってるんですね。

――意識が高い人たちのキラキラな空気感......ですか?

岡嶋:もともと、インターネットやウェブって脱権力志向の強いアナーキーな人たちが発達させてきた面があって、WebWeb2.0も「放送局や新聞社、出版社など既存の大きなメディアに依存しなくても、誰もが情報の発信者になれるんだ」「HTML(ウェブページの記述言語)さえわかれば、個人が世界に向けて発信できる時代がやって来たんだ」という、脱権力的でキラキラとした高揚感に支えられていました。▶︎ところが、実際にブログやSNSが広がっても、それを支えるシステムや仕組みはビッグテックが支配している。▶︎例えばユーチューバーはいつも収益のことを気にしていて、そのさじ加減はユーチューブを持っているグーグル次第だし、いつの間にかグーグル先生の手のひらの上で転がされているだけ......みたいな状況になっていることにも気づき始めた。

――イーロン・マスクのご機嫌次第で、ツイッターのルールも二転三転しちゃうとか。

岡嶋:そうです。▶︎そこでもう一度、個人にネットの力を取り戻したい、ウェブの世界をビッグテックのような一部の企業が支配できない仕組みにしようというのが、Web3の背景にあるキラキラとした空気感で、その点で言えばWeb2.0のときと同じなんですね。▶︎では、Web3は何が違うのか?▶︎自由で民主的な仕組みをどうやって実現するのか?▶︎という問いに対して「人間が関わると手間も時間もかかるし必ず不正が起きるから、だったら全部を機械的な仕組みでやればいいんだ」というのが、Web3推進派の考え方です。▶︎そして「不正ができない、自由で民主的なネット社会」を技術的に担保するのがブロックチェーンなのだというのが、イーサリアムの共同創設者でもあるギャビン・ウッドなど、Web3を主張する人たちの論法なのですが、僕はそこに論理の飛躍があると思っていて、実現の手段はブロックチェーンだと言い切ってしまう点に大きなズレを感じるんですよね。


――ブロックチェーンは仮想通貨を支えている技術ですね?

岡嶋:そうです。▶︎今までは、情報をすべてグーグルのような巨大プラットフォーマーが管理していて、管理者が責任を持って扱うという発想だったわけですが、それだと管理者がウラで何かしてもわからない。▶︎だったらすべての情報を参加者全員に配って、全員で相互監視をすればいいよね?という「分散型」の仕組みがブロックチェーンです。▶︎仮想通貨のビットコインはわかりやすい例ですが、お金の取引のデータを銀行が見えないところで集中管理するのではなく、全員が同じ取引データを共有しているから、中央サーバーのようなものはないんです。▶︎どこかがダウンしてもデータが全部失われないので安全だし、それぞれが取引に不正がないかを監視できるので、民主的で透明だよね?というのがブロックチェーンの主張です。

――ただ、つい最近も仮想通貨の大手取引所、FTXが経営破綻して、同社による資金の不正流用が明らかになりました。

岡嶋:全員が同じデータを持ち、主体的な参加者となるブロックチェーンの仕組みは、理論上、民主的で公平な社会を担保できることになっていますが、現実には誰もがブロックチェーンの「主体」として参加しているわけではありません。▶︎自分でサーバーを用意して直接ブロックチェーンに接続するには、相応の知識や資金、設備が必要で、普通の人はまずやりませんから、仮想通貨であれば「取引所」という代行業者を通じて、間接的にビットコインを買ったり売ったりしているわけです。▶︎だから、ブロックチェーンがいくら安全でも取引所がハッキングされたりすれば、取引していた仮想通貨がなくなってしまうかもしれない、という構造は変わらないし、結局は代行業者に依存することになる。▶︎その結果、ひょっとしたらグーグルから権力を引っぺがせるかもしれないけれど、その権力は取引所のような代行業者に移るだけで、今度はそこに権力が集中するので、キラキラした夢の世界なんか来ないよ......というのが僕の意見です。▶︎もちろん僕自身も、テクノロジーによって自由で民主的な社会を実現しようという理想は大事だと思います。▶︎でも、その実現をブロックチェーンという「魔法の杖」だけで実現しようというのは無理がある。▶︎すでに今ある技術を活用しながら、地道な努力を積み重ねていくしかないんだと思います[*週プレNEWS 2023.02.02付記事抜粋/文:岡嶋裕史氏・中央大学国際情報学部教授]

『グーグル親会社Alphabet…広告事業が振るわず34%減益ー第4四半期決算』


Googleの親会社Alphabetは米国時間22日、2022年度第4四半期の利益が前年同期から3分の1以上減少したことを明らかにした。▶︎景気後退に対する懸念が続く中で、より広範な広告市場が縮小していることがその背景にある。▶︎4四半期の売上高は760億ドル、純利益は136億ドル(1株あたり1.05ドル)だった。▶︎Yahoo Financeの集計によると、1株あたり利益に対するアナリストの平均予測は1.19ドルだった。▶︎利益は前年同期比で34%減少した。▶︎Alphabetは、1月に発表した12000人規模の人員削減にともない、再構築費用である1923億ドルの大半を2023年第1四半期に計上する予定だという。▶︎検索結果の横に表示される広告を収入源とするGoogleの巨大な検索事業は、中核であることに変わりはないが、広告事業の一部にすぎない。▶︎広告を含むGoogleのサービス売上高は678億ドルで、2021年同期の694億ドルから2%減少した。▶︎Googleの広告事業はどのカテゴリーも縮小した。▶︎前年同期と比べて、検索広告は433億ドルから426億ドル、YouTube広告は86億ドルから80億ドル、Googleが他のウェブサイトに表示する広告は93億ドルから85億ドルにそれぞれ減少した。▶︎同社は経済情勢への懸念を示した。▶︎「長期的で収益性のある成長に向けて、最も重要な成長優先事項への投資を支えつつ、コスト構造全般を改善するための大規模な取り組みを進めている」と、AlphabetおよびGoogleの最高財務責任者(CFO)であるRuth Porat氏は決算報告の中で述べた。▶︎経費の大きな要素の1つは従業員給付だ。▶︎Alphabetの従業員数は前年同期の156500人から19234人に増加した[*C-NET Japan 2023.02.03付記事抜粋]

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【掲載日】20230203日(金)